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つくった人とつながる日本茶

先日にnoteでもご案内した「オンライン日本茶ワークショップ」を6月27日に開催しました。

ぐっちーとのイベント

一つの商品(霧島 めいりょく)を題材に、ファシリテーターの協力のもと、商品作りに携わった生産者・製茶問屋が語り合うイベントでした。

個人的にも大変良い経験をしたワークショップだったので、イベント内容を共有したいと思います。

1. 霧島めいりょくを作った生産者(香輝園)

(1)茶園の紹介

香輝園は鹿児島霧島市にある茶園で、標高が300mの山間地にあります。
一般的に、鹿児島産の日本茶は深蒸し茶のイメージが強いかもしれませんが、霧島茶は細く力強く揉まれた普通蒸し煎茶が作られています。

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香輝園では有機栽培が行われており、使用できる薬(農薬)に限りがあります。そのため除草は人手で行うなど、多くの工数が掛かっています。

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(2)荒茶工場の紹介

香輝園の川口さん(ぐっちー)より、荒茶工場の紹介もありました。
荒茶とは茶畑で摘採した生葉を製造したお茶を意味し、製品になる前の日本茶の原料を意味します。

写真の機械は生葉洗浄機と呼ばれる機械で、鹿児島にしかありません。
鹿児島は火山灰が降り注ぐため、摘採した生葉を製造する前に、大型の洗濯機みたいな機械で生葉を洗浄し脱水します。

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下の写真は揉捻機と呼ばれる機械です。
お茶の固まりを転がすように揉みながら、茶葉や茎の水分を一定にするための役割を担います。ぐっちーは、この機械の動きを「フラダンス」と表現しており、この日一番の笑いを取りました。

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2. 霧島めいりょくを商品にした製茶問屋(多田製茶)

ここからがワタシのパートです。
日本茶を飲むまでのステップを以下のスライドで説明しました。

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荒茶から商品化までの思考プロセスを、簡単にご紹介したいと思います。

(1)製品にするまでのプロセス

生産者が作る荒茶を評価するところから始まります。

荒茶を評価する目的は仕入れ・値付け・製造の検討など、多岐に渡りますが、今回は製造の検討のみ説明しました。

荒茶に熱湯を注ぎ、そのときに感じる香りや味を言語化し、製造後の商品イメージをふくらませます。

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下図を用いて、荒茶評価から商品化までのプロセスをもう少し細かく説明しました。赤色でラインを引いた項目が、香輝園の特徴として荒茶によく出ていました。

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続いて、品種の説明です。
お米や果物のように、日本茶にも品種があります。未登録の品種も含めると約200種類ほどあると言われており、それぞれに特徴があります。
今回のイベントで使用したお茶は「めいりょく」という品種です。イベントでは、めいりょくの特徴等についても簡単にご紹介しました。

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*この品種マップは、友人の小幡一樹君が作成したものをお借りしました。彼のnoteからダウンロードできるので、宜しければ見てください。

香輝園・めいりょくの荒茶を次のように評価しました。
<香り>
鹿児島らしい穀物(豆・芋)の香り ◯
品種(めいりょく)のスパイス(胡椒やクローブ)な香り ◯
<味>
お茶の濃さや、全体のバランス ◯
甘味 △ (悪くはないが、もう少し引き出したい)

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この評価をもとに、次の仕上げ・火入れのパートに移ります。

(2)荒茶評価をもとにした仕上げ・火入れ

先ほどの評価をもとに、どのような思考プロセスで製造を行ったかをご紹介します。

まずは、日本茶の仕上げ・火入れについて、簡単に説明しました。
日本茶に詳しい方には一般的ですが、一般のお客様には新鮮な内容だったようです。

*荒茶には商品に使いたい部位以外のパーツが含まれているため、それを選り分けるために仕上げを行います。(下図の整形・分別が一例です。)その後、それぞれの葉に最適な火入れ(乾燥)を行い、荒茶が持つ嫌な香りを飛ばし、甘い香りを付けていきます。

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*資料は、伊藤園さんのお茶百科から引用させて頂きました。

荒茶評価を踏まえて、仕上げ設計を下図のとおり考えました。

<完成形のイメージ>
特徴である香り(産地・品種)は残しつつ、味の甘味を引き出したい

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一般的に、火入れを強くすると、甘さを引き出せる一方で、香り(品種香)は弱くなります。また、逆に火入れを弱くすると、品種香は引き立つものの、引き出せる甘さは弱くなります。

つまり、相反する火入れを行うことが必要になるわけです。

この矛盾を解決するべく、合組(ブレンド)の技術に着目しました。
一般的に、合組とは複数の異なるお茶をブレンドすることで、香り・味・色・価格のバランスの取れたお茶を製造することを目的とします。

それをシングルオリジン・ティ(単一農園・単一品種・同一ロット)の製造に活かすわけです。チャートに表すと、下図の通りです。

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まず、香輝園・めいりょくの荒茶を仕上げます(製品に必要ないパーツを選り分ける)。そして、仕上げたお茶をA・Bに分け、それぞれの目的に応じた火入れを行います。最後に、A・Bのお茶を合組することで、完成形イメージのお茶を作りました。

3. まとめ

ワタシのパートが終わってからは、ファシリテーターの高津君から「霧島・めいりょく」の淹れ方説明・乾杯、懇親・質問会と流れていきました。

今回のnoteにまとめた内容以上に、グループワークでの質問や補足説明が充実しており、イベントにご参加頂いた皆さまにはご満足頂けたのではないかと思っています。

また、コロナ禍で心理的にも移動が制限される中、茶畑の風景を見ながら楽しむ日本茶は、New Normalな日本茶体験として価値があったと思っています。

今回イベントで紹介したお茶に関しては、後日オンラインで販売したいと思います。Twitterで改めてご案内したいと思いますので、宜しければフォローしてください。

多田製茶 Twitter アカウント: https://twitter.com/home

お付き合い頂き、ありがとうございました!

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