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覚悟があれば、人の内面は変えられる

“人は変われる?変われない?”

「三つ子の魂百まで」のことわざに代表されるように、人は結局変わらないという結論を持つ社会人は多いです。いちメンバーならまだしも、人をまとめる役割にある人が平気で「人の本質は変わらない」と結論づけています。

なぜでしょうか。

なぜなら同じような気持ちを抱いた経験がある人達は、その言葉に同調し共感を示すからです。つまり、その価値観を否定される場面にあまり遭遇することがないのです。

しかし、その言葉を言うときの本人は苦悩を押し隠そうとする表情、または暗い感情に支配された表情、あるいは諦めた表情を浮かべています。

人が人は変われないと言うときは、その人自身も苦しんでいます。そこで、そのような苦悩に苛まれる方々の一助になればと思い、僕の信念を次に記載します。

「人はいくつになっても変われる」

どうでしょう?綺麗事だと思うでしょうか?理想論であって、現実が見られていないと感じるでしょうか?

しかし、この後お伝えする内容で、きっと「確かに」と思ってくれるはずです。

“人の内面を変えるには、一言目に着目する”

ここでは、一言目に「ですよね」と発するのが口癖であった二人を例に挙げます。

■女性社員Aさん
前職の幼稚園では、厳しい園長、主任が存在し、失敗に対して特に厳しく追及された経歴を持ちます。年齢は30代。

Aさんは転職組。僕が着任した頃は彼女は3年目でしたが、メンバーからの信頼は全く得られていませんでした。すぐに言い訳をする、と陰口を叩かれてしまっていました。向き合う人は誰もいない状態。

僕はAさんを観察してみることにしました。メンバーが他意なく何かAさんに質問すると、Aさんは質問内容を聞き終えることなくさえぎるように何か言葉を挟もうとします。

そこでメンバーが仕方なく再度話すと、途中でAさんは「ですよね」とか「うん」など分かったつもりの生返事をしてしまっていることに気づきました。

結局Aさんが誤解していたことに気がついて、今後は改めるという結論に至るまでかなりの時間を要しています。通常であれば5分程度で難なく終わる会話が、彼女とは15分かかります。避けられるはずです。指導するにも時間を取られるとなると、誰も触れない理由も分かった気がしました。

事務方としてメンバーの役に立ちたいという真摯な姿勢は伝わってくる彼女が、言い訳の癖があることでメンバーの信頼を得られていません。
僕はとても勿体ないと思い、直接何度も面談することにしました。

普段、献身的にメンバーに貢献している姿を承認後、次のように質問しました。

「まずはさ、メンバーの話を聴き終わる前に言葉を挟む癖を直そうか。失敗を恐れているように見えるけど、何か前職であった?」

人が変わるには、今の自分を作り上げている原体験と向き合う必要があるからです。

彼女は、前職では失敗が許されない環境で働いていたことを明かしてくれました。すぐに激昂される現場だったようです。

文面に起こすと簡単に聞こえるかもしれないですが、彼女は前職を思い出すだけでも辛そうでした。当時の状況を涙ながらに語ってくれました。前職の現場を思い出すだけで震えていました。

どれだけの傷を負っているのでしょう。どれだけ失敗が許されなかったのでしょう。

僕のように、注意ではなく彼女のことを想って向き合おうとする上司はどうやら初めてとのことでした。初めての面談ではあったけど、信頼してくれたので課題を出しました。

「すぐに直すことはできないかもしれないけど、人の話を途中でさえぎる言葉を発してしまったら、その場で黙る訓練をしよう。人は無意識だったものを意識したら、少しずつ変えていけるから」

そう約束し、2週間後に再度面談の約束を行いました。

2週間の中で、彼女は何とか課題をこなそうと、途中で言葉を挟みそうな様子を見せるものの、何とかメンバーの話を最後まで聞き入っています。前回の面談での信頼が生きて、何とか素直に守ろうとしてくれていました。

傍目からは、言葉を挟みたくてうずうずしている様子は分かったけど。良い頃合いだから、次の課題を2回目の面談では渡しました。

「人の話を最後まで聞くことはできてきたから今度は聞いた後に、ですよねという口癖をやめよう。自覚あった?」

ですよねという口癖を持つ人は、初めには伝えなかったけど、その事態は想定できていたという心理が働くので、次回以降同じ場面に遭遇しても改善されないことが多いのです。

彼女は想定どおり、その口癖に自覚がありませんでした。

幸い彼女は自分のことを真剣に考えてくれる人の話は聴く耳を持ってくれるので、その点では人材育成のハードルが低い社員でした。そのため、その後も僕が事務所で会話を見守ることで改善を図っていくことができました。

ですよね、という言葉を挟んだらタイムリーに気づかせてあげます。そんなことを愚直に繰り返し、面談では口癖を変えられていることを褒めていきます。

二カ月後、メンバーからはAさん最近変わりましたねって全員から言ってもらうことができました。私の着任前からこのようにAさんと向き合える上司がいれば、もっと早くきっかけを与えられたはずだと思うと、悔しい限りです。

では、今度はAさんとは違った部署での出来事を挙げてみます。

■女性社員Bさん

元ウェディングプランナーで、前職では主任経験者。お客様から失敗と見なされると、高額なクレーム対応につながる可能性のある元ブライダル業界での経験者。年齢は40代後半。

私が着任時は、前任の責任者から締切を守れず、2回遅刻したことがあるという引継ぎを受けただけでした。ただ私も人は自身の目で確かめたいので、特に前任者の評価は気にしません。

義理人情に厚くて良い面もたくさんあるBさんは、一言目に御詫びを言えないタイプでした。

職員会議で時間を守ろうと僕が発信した翌日に、退社時間と決めていた時刻を過ぎる内線、Bさんからでした。

退社時間を過ぎることは、生徒対応等もあるため、比較的僕は寛容でしたが、その内線が退社時間を過ぎての連絡であったことは問題視しました。

生徒には事前の相談を指導する役目を負っている我々ならではの線引きです。

「生徒の行事の準備をしており、〇〇時を過ぎてしまいました。すみませーん」

という発言だったこともあり、良い機会だと思って厳しく指導しました。
生徒が同じことを言ってきたら、何て返しますか、と。

「一言目には理由ではなく、御詫びから入るようにと指導しませんか?」

彼女は基本事項を遵守できなかった時に、後輩から確認されると先程の内線と同じように守れなかった理由から説明する癖を持っていました。

このままだと社歴の長さとメンバーからの信頼度が反比例してしまいます。
彼女とも直接、定期的な面談で変わってもらうことにしました。

前職で主任経験があることから、いきなり核心に触れると聞く耳を持たない結果が目に見えていました。そのため面談の冒頭ではまずは彼女の義理人情に厚いところや、生徒指導において言いづらいことも言える勇気などを称えます。

まずは聴く姿勢ができてから、課題を渡します。

「基本の締切が守れていないけど、後輩には強く言っている場面がある。どうして?」

「自分達もできていないことが多くあるのに、指摘されるとイライラしてしまって」

「なるほど。でも他のことができていないと責めても、後輩から指摘されている、締切を逃した案件が正当化されるわけではないね。その姿勢は、後輩から信頼を得られなくなっちゃうから勿体ないな。普段、場を明るくしてくれる力もあるのに」

「ですよね。おっしゃっていることは分かります。先日の会議で言われていた他責と自責の話も頭では理解できます。ただ、感情のコントロールができなくて」

「分かった。では、この面談では感情のコントロールをテーマに進捗を確認していくことにしよう」

頭では分かっているんですけどという人は、結局分かっていないということがよくあるので、その後は2週間に一度の頻度で面談を行っていきました。

特に注力したのは、一言目に後輩相手でも御詫びを言えるかどうかです。御詫びを言わなくても良くなるための計画力の向上は、手帳の書き方を中心にトレーニングを積んでいきました。

そのペースで面談していって、4カ月後にようやく後輩からは、最近変わってきてくれていますという声が挙がるようになりました。

次に一言目に着目する例を異なる視点で以下に挙げます。

“ふとした言動にその人のスタンスは現れる”

例えば極端な例として、 部長が課長の部下Aの仕事の進捗が分からず、報告を促した時どのように返答するかで、その人が誰を向いているのか分かる。

「Aが戻り次第、すぐにやらせます」
(心が部長に向いている)
「Aが戻ったらすぐにしてもらいます」
(部下を大事にしている)

無意識に使う言葉こそ周りは見ているので、気になる言動があればタイムリーに指導します。
時間が経過してしまうと、本人は無自覚で使用している言葉なので、思い当たらないためです。

部下が変わらないのは、一言目を聞き逃している可能性が高いです。または無頓着。

上司が部下の言葉使いに敏感ではない理由の一つとして、細かいことを挙げ過ぎるとかえって部下の信頼を失うという懸念が残るからですね。でも本当に部下の為を思うなら一つ一つ自覚させられると良いのです。

部下から嫌われることを恐れず部下の為を思って、発する言葉一つ一つを真剣に捉える覚悟を持ったならば、人は変えられます。

“人を変えるには、一言目に着目する”

続きはまた違う記事で。最後までお読みくださり感謝。

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リーダ―育成コンサルタント

本間 正道
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