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「我」を通したいなら、覚悟を決めろ

「素直」の定義を持っておくと良い

唐突ですが、あなたにとって「素直」という言葉の定義は何ですか。

新入社員の教育係を担うようになった若手社員を見ていると、この素直という言葉の前提を誤って使用している場面に遭遇します。次のような文脈です。


「今年の新入社員は言っても響かないんですよ。やはり素直って大切ですよね」


この教育係にとって、素直とは「先輩から言われることは疑問を挟まずにとりあえずイエス」と答えることが素直の定義であることがわかります。

これは体育会系の部活出身の社員に多い傾向です。でも何の疑問も挟まずにとりあえず言われたことに取り組んでみることが、果たして素直な態度と言えるのでしょうか。

これは社風によっては「思考停止」、「受け身な社員」と揶揄されてしまいます。

では素直とは何でしょうか。ここでは「先入観を持たずに、自分の感情を飾らない態度」と定義します。わからないときは「わからない」と率直に伝えられる、嬉しいときは「嬉しい」とまっすぐに伝えられる、そんな態度を指します。

これらを踏まえて事業部をマネジメントする上で、あなたの現場の判断を役員に相談したときに、今のあなたはどんな交渉をおこなうか想像してみてください。次の3つのうち、どの態度を選ぶことが多いですか。

1、役員の方が自分より現場のマネジメント経験が豊富であるため、最終的には役員の助言に従う

2、自分の見解と、役員の助言とをすり合わせて、対話を通じて最適解を探る

3、絶対に自分の見解は現場にとって最善であると信じ、あの手この手で役員の説得を図る

新米マネジャーや、役員との心理的距離が遠いマネジャーは、1の態度を選ぶ割合が多いですよね。それこそ「素直じゃない」というレッテルを恐れるがあまりに、「わからない」ことであってもイエスと言ってしまいます。かつての僕がそうでした。

でも、僕が部下から相談をされて決断をするときに、自分が部下と導きだした結論に対して「とりあえずイエス」と言われることは不安なときがあることに気づきました。

今の情報量だとAという結論だけど、実はこの相談の場に部下が出していない懸念や情報があれば結論は変わるため、少ない情報量で出した結論に盲目的に従わないでほしいと考えているためです。

つまり、結論に対してその場では提示し切れていなかった懸念や情報を、素直に述べてくれる部下と導き出した判断の精度は高いという印象を持っていました。

事なかれ主義は「事」を大きくする

前段の結論に気づいてからは、2の態度を取れるようになりました。すなわち、役員から助言された内容について、さらに自己の見解を述べ、最適解を探れるようになりました。しかし、ここで僕の事例を共有します。

僕がマネジャーをしていた事業部で、業務の容量超過と人間関係の摩擦によって、経理事務を担当する女性社員に「心身耗弱」の傾向が見られたときの判断です。

人事権を持つ役員に、僕はその女性社員の異動を提案していました。面談を通じて女性社員はもう一人経理事務を担う人間を雇用するか、部署異動のどちらかの希望を根っこに持っていると感じたからです。このときの背景としては、当時は専門学校現場で、教員は多く所属しているものの、経理事務を担える人間は一人という状況でした。いわゆる業務が属人化してしまっている状況です。

部門の営業利益は前年比を大きく上回っており、今後も安定して向上していく基盤もできていました。そのため、もう一人雇用することは、契約形態を工夫すれば、十分現実的な判断と言えました。しかし、役員から返ってきた答えは今後の地区としての構想を踏まえ、新しい人材を雇用することも、異動もしないという結論でした。

要は、今ある環境下の中で工夫せよ、というメッセージです。そのとき、2の態度を取って対話をしましたが、結論を覆すことができず、1の態度を選択することになります。

しかし、結局翌年度にその女性社員の体調不良が深刻化し、別の役員に相談した上で新たな人材を年度途中であっても雇用する運びになりました。僕は、もっと早くこの動きを取っていれば、その社員の体調を回復に転じられたかもしれないと今でも悔やんでいます。

初めの判断を下した役員には非がありません。現場の情報を一番持っているのは僕であったため、もっと真剣に訴え、結論を覆せるほどの説得や動きを取るべきでした。

そのときの経験から、メンバー時代に叩き込まれた「与えられた環境下で最大限の力を発揮せよ」という教えは、マネジャーという役割を担ってからは時と場合によるというのが持論になりました。

ときには「与えられた環境を変える努力をする」ことも部下を守る上では必要な態度です。そのことに気づいてからは次のような判断をしています。

あなたの直感は正しい

新型コロナウィルスの感染が猛威を振るう中、緊急事態宣言下の専門学校現場では4月は休校に追い込まれ、来たる宣言解除に向けて、オンライン授業体制の構築が急務となりました。

そこで、「記録型映像配信」のオンデマンド授業を選択するか、「同時双方向型」の生配信授業を選択するかという選択肢が生まれます。

全国に姉妹校があったことから、現場の労力の削減や、スケールメリットを生かすならオンデマンドを選択すべきです。実際役員からもオンデマンドを推奨されました。

しかし、僕は収束後の授業の形態、生徒の感情、担任の関わり方を総合的に判断し、全授業「同時双方向型」を選択します。当時、講師の先生の中にはパソコンに触れたこともない方もおり、また、50~60代の年齢で変化を嫌う講師もいました。

でも、僕は自分の信念を曲げて「最適解」を選んだときの後悔の経験があったため、自分の直感を信じました。

結果として、オンデマンド型を選択した姉妹校では、生徒からの不満が続出。同一教科にもかかわらず、オンデマンドで授業を記録していた講師と、収束後の分散型登校において実際に授業を担当する講師が異なることで、生徒は露骨に比較をするようになっていました。

そういった他校の課題を自校に共有することで、ようやく僕が全授業「同時双方向型」の授業を選択した真意が伝わり始めました。生徒から生じたであろう不満を未然に防いだことで、「大変だけど、納得した状態」でオンライン授業期間、分散型登校期間を乗り切ることができました。

まとめとして、もしあなたがかつての僕と同じように、1か2の態度でしか上司と関わっていないのだとしたら、できるだけ早く3の態度も選択肢の一つとして持てるようになることをお勧めします。きっと上司もあなたを頼りにしてくれるようになるでしょう。

最後までお読みくださり感謝。続きはまた違う記事で。

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リーダ―育成・事業再生コンサルタント

本間 正道
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