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心根を変えるには、心を動かせ

‟筆取る道と碁(ご)打つこととぞ、あやしう『魂』のほど見ゆるを、深き労なく見ゆるおれ者も、さるべきにて、書き打つたぐひも出来れど”

(『源氏物語 』第四章 光る源氏の物語 光る源氏世界の黎明)

「書を書くこと、碁を打つことは、一見練習を重ねた人ではなくても、持って生まれた才能でしっかりと行うことができる」

これは、三つ子の魂百までという格言の語源になったと言われる文章です。この言葉通り、人の気質、性質は幼い頃から成長しないのでしょうか。

結論に至る前に、専門学校に入学する生徒で考察していきます。専門学校に入学する生徒の中には、以下に挙げるような気質を持つ人がいます。

・大人を信用していない

・そもそも自分を信用していないので、他者を信用できない

・自分は変われないと思い込んでいる

もし最終学歴である僕達専門学校の教職員が、「人の気質は変わらない」という姿勢を持っていたら、これらの生徒はどうなるでしょうか。

きっと社会人になっても大人を信用できず、他人に信頼を寄せられず、何より本人が一番苦しい思いをすることになります。

でもインストラクターやトレーナーを輩出するスポーツの専門学校、美容師やヘアメイクアーティストを輩出する美容系専門学校、ウェディングプランナーやフローリストを輩出するブライダル系専門学校、シェフやパティシエを輩出する調理系専門学校、保育士や幼稚園教諭を輩出する専門学校の全ての現場において、入学時の気質や性質を著しく変化させて、立派な社会人に成長した卒業生を数多く見てきました。

気質=心だとすると、どのような時に人は成長するのでしょうか。技能に比べて内面が成長する契機は定義しづらいのが実情だと思います。

3,000人以上の生徒を見てきて感じることがあります。

‟人って良いなって心が動いた時、人は成長する”

「心が動いた振り幅に応じて、人の心根は変えられる」それが私の結論です。

どういうことでしょうか。生徒の例を挙げてみます。

日々の清掃や、周りの人の為になる行動を心掛けていけば、心のトレーニングは積んでいけます。ただし、そのように日々のトレーニングに精を出せない生徒も多くいます。

そんな生徒が変わるキッカケ。

それは学校行事です。

クラスで、あるいはチームで一つのものを作り上げていく。しかも行事の目的は、自分達の成長の為ではなく、その行事を見に来てくれるお客様の為。

この目的が大事です。お客様の為という大義があるからこそ、話し合いも充実していきます。

行事では必ず周囲の人との価値観の違い、意見の衝突によって、苦悩が生まれます。また、見に来てくれるお客様の為という目的は、中途半端なクオリティでは達成できません。

相当練習する必要があり、技術がバラバラだったチームが一つになるには、大いに自己努力が必要な生徒が生まれてきます。

諦めずにチーム全員で達成しようとする人。意欲が中途半端な人を見捨てようとする人。自らの技術の向上を諦めて投げやりになる人。

それらの生徒達と向き合いながら、教員は介入しすぎず、放置しすぎず、間合いを保ちながら何とかチームとしてまとめていきます。

余りにも投げやりになる生徒には教員も本気で向き合います。悔しいと本気で思える体験があると、心の振れ幅がより大きくなるからです。

「あなたならできると思ったんだ!」

「すみませんで切り抜けるな!ごまかすな!自分が招いた現状を見つめて乗り越えろ!」

これらの強い言葉も、諭すことも、褒めることも、全員を巻き込むためにあらゆる手立てを講じます。

そして迎えた本番当日。チームとして最高のパフォーマンスを終えて、生徒達が達成感を抱いているタイミングを逃しません。

本番までに取り組んでいく中で、これまでどんな壁を全員が乗り越えてきたのか思い出せる動画を流します。

一人ひとりが壁にぶつかっても投げ出さずに、諦めずに取り組んだ軌跡。誰もが感動して涙を流してくれます。

中でも一番感動を呼ぶのは、それらの軌跡の後に保護者の方からのメッセージを流すこと。

二十歳前後の人間であっても、当日まで苦悩を抱えていた生徒に対する、保護者の方からの言葉は胸を打ってくれます。

実家暮らしの生徒は、弱った姿を家族には見せている。一人暮らしの生徒は、電話で悩みを共有したりなど、生徒それぞれが当日に至るまでドラマを抱えています。

大事なのは一人残らず、それぞれが抱える壁と向き合わせること。壁の大小は人それぞれ。でもチームで臨むからには、全員に必ず試練はあります。

チームで一つの成果を上げること。過程での苦悩があったからこそ、達成感を感じられること。

分かり合えないと思っていた人間と、意見の衝突があったからこそ良い物が作れたこと。

それぞれ気づくフィールドは違っても、誰もが抱く感情は

「人間って良いな」

この感情を行事当日に抱く。すると、翌日以降の教室の雰囲気は大きく異なります。人との違いを認められ、意見を述べることも恐れなくなります。

‟心を動かすタイミングを逃さない”

二十歳前後の生徒でも、感動する体験を持つことで、内面の成長が図れます

では僕達社会人はどうでしょうか。

マネジャーとして、部下の誕生日にメッセージを贈る人がいます。

日頃の感謝や、期待していることをカードに込める取り組みです。

その行為を否定しませんが、誕生日は努力しなくても誰もが等しく迎えられます。

それよりも苦悩を乗り越えたことや、新たな技術を逃げずにやり遂げたときにこそ、上司は言葉を掛けた方が良いのです。もしくは大げさに労う仕掛けを行います。

もし自分ができなくても、部下同士で感動させられるような仕掛けで皆を巻き込みます。

エンゲージを高めるなどの作為的な意図ではなく、大人であっても心が動く経験を得ることは、内面の成長に繋がります

"心ということになると、「すぐに生まれつき」という言葉で片付けてしまう。意志の強い人を見ては、「私もあの人みたいに、生まれつき意志が強ければ・・・」ポジティブな人がいれば、「私もあの人みたいに、くよくよしない性格を持って生まれていれば」「筋トレ」を毎日続ければ成果が得られるように、「心トレ」も心を強く、明るく、美しくすることはすべての人ができること″

(『上京物語』著者:喜多川 泰氏)

三つ子の魂は変えられます。

人はいくつになっても変われる。

続きはまた違う記事で。最後までお読みくださり感謝。

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リーダ―育成・事業再生コンサルタント

本間 正道
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