見出し画像

納得感を生む判断とは

“判断は、どんな過程を経て行われるのか”

プレイヤーからプレイングマネジャーとして役割が変わる時。
プレイングマネジャーからマネジャーへと役割が変わる時。

多くの部下から寄せられる不安の声が、「自分に判断ができるのか」

それまでは会議で意見が分かれた時には、最後はマネジャーが決断してくれました。根拠が揃えられる案件なら良いけど、いずれの意見も正解だと思える時には誰もが判断に迷いますよね。

僕は若手の頃、判断に自信がありませんでした。それまでも専門学校現場で生徒対応、保護者対応、取引先の対応など多くの判断を必要としましたが、その判断のほとんどは上司が考えそうな結論をひねり出すというものでした。いわば、職場での正解を探り出すような判断の仕方です。

転機となったのは6年目。普段所属する事業部が異なる社員同士が集められ、よくあるトラブル処理の仕方についてグループ内でケースに応じてディスカッションをしました。日常にありそうな場面が描かれ、その後にどう対応したら良いか4つの選択肢の中から選ぶという形式。

それぞれ事業部が異なるとはいえ同じ社風に惹かれて入社した社員達ですから、僕は当然、全員が同じ選択肢を選ぶと思っていました。ところが、実際はそれぞれの考えのもと選ぶ回答が違ったのです。

当然ですが、同じ状況が描かれていてもそれぞれの価値観を背景として「正解」が違ったのです。意見交換をしていると、全員がしっかりとその選択肢を選んだ理由を持っています。

その時に、正解は一つではないんだ、正解は自分で決めて良いんだと気づきました。

同時に、ではなぜ自分の部署は多くの人が部署内の正解に染まっているのか疑問を持つようになり、一つの結論に達しました。

“マネジャーの判断に一貫性があると、自分で考える社員が減る”

判断にはルールを尊重する態度と、ハートを尊重する態度の2つの切り口があります。

ルールを尊重する態度とは、文字通り社内で決めた基準や取り組みを優先すること。

ハートを尊重する態度とは、人の心情やモチベーションを重視して、柔軟に対応すること。

これはどちらが良い、悪いはありません。なぜなら、ケースに応じてルールを優先するのか、ハートを優先するのか、時と場合によって判断して良いからです。

しかし、僕が社会人になって初めて所属した事業部ではマネジャーの判断はルールに偏っていました。象徴されるのは、マネジャーに「目標とは何だ」と問われると、異口同音に全員が「絶対に達成するものです」と返答できるほど価値観が統一されていました。

ティール組織とは真逆の組織です。そのため、前述したように僕の判断は事業部内での正解に沿えるように検討することが多かったです。

ルールとハートの例をご理解いただく上で、専門学校現場で実際に判断することになる事例を皆様にご紹介いたします。以下に挙げる例は、きっと今でもマネジャーによって判断が分かれることになると思います。

<事例>

翌年度からカリキュラムが異なるコース選択を行う上で、ベテラン社員Aは自クラスの生徒に、教科書などを発注する時期とも関わるから締切日以降の変更は認められないので、コース選択申込用紙を提出する際にはよくよく検討するようにと発信していた。

一方、新入社員Bさんは、ベテランほどの事前発信ができずに、コース選択申込用紙の提出締切日について触れた程度。後日Bさんのクラスの生徒から締切日以降にやはりコースを変更したいという希望の相談が挙がり、保護者の方からも電話で相談があった。

このようなケースの場合、ルールを尊重する判断とはどのようなものでしょうか。

締切日以降の変更は認められないと全体に発信している以上、変更は認めないとする判断を指します。言ってみれば、ルール10、ハート0の状態。

では、ハートを尊重する判断ではいかがでしょうか。

十分な認識を持たせられなかった学校に比があるとして、Bさんのクラスの生徒の申し出を受諾して生徒の安心を得ようとする判断。
ハート10、ルール0の状態。

ルールに偏れば、コース選択後の生徒のモチベーションが心配です。「本当は変更したかったのに」という不満を持った生徒を抱えることになります。

ハートに偏れば、本当は相談したかったけど我慢した他の生徒に「相談したら変えられたのか」という不満を与えかねません。

皆さんならどう判断しますでしょうか。ぜひ、専門学校のマネジャーになった気持ちでご検討ください。

ここで御詫びがあります。実は判断に必要な情報をお渡ししていません。このケースで言うと、次のような環境因子が必要になります。

・締切日を延長しても、運営上困らない
 範囲なのか

・他の生徒にはどこまで認識を
 持たせられているのか

・保護者の主張はどうなのか。

これらの環境因子を踏まえて、今回のケースの例解としては以下のようになります。

<例解>

生徒の変更希望は受諾する。ただし、他のクラスにも潜在的に同じような不安を抱える生徒がいた場合不平等になるため、再度翌日からの一週間を通じて各クラスにてコース変更の希望がある生徒は申し出るよう周知すること。
今回延長した期日以降の変更はいかなる理由でも認められないことを認識してもらうこと。

この例解はハート7、ルール3ぐらいの割合です。例解としているのは、正解ではないからです。僕はこのように判断するでしょうが、他の事業部であればその時の状況で違った判断をする可能性もあります。

今回お伝えしたかったのは、状況に応じてこのルールとハートのバランスは調整して良いということです。

僕が複数の事業部を引き継いで感じるのは、事業部内で毎回偏った判断がなされて、部下がうちのマネジャーの判断は分かりやすいと嬉々として話す事業部は、部内の正解がはびこり、部下が思考停止している割合が高いです。

自分の頭で生徒にとって何が最善かを考えなくなり、事業部内での正解を探るようになります。かつてメンバーであった僕もそうでした。

今回判断するまでに至ったマネジャーの頭の中をイメージとしてお示しします。

画像1

この図に示した「お客様のために」も、マネジャーが定義を持っていないとその時の気分で判断がなされる危険性があります。

つまり、目の前のお客様のためを優先とする価値観を持っているのか、将来のお客様のためにを優先するのか、目の前以外のお客様との平等性を尊重するのか。

判断一つ取っても、自分の価値観によってどういう解を出す傾向にあるのか整理することで、部下の納得感を得られる説明ができるようになります。

今回はどの観点で判断をしたのか、判断に至った思考の経緯を説明できるようにしましょう。

続きはまた違う記事で。最後までお読みくださり感謝。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

リーダー育成コンサルタント

本間 正道

Email: playbook.consultant@gmail.com

twitterID:@masamichihon

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


よろしければサポートをお願いいたします。御恩は忘れません。頂いたサポートは、多くの人材が再び輝く日本にしていくための活動に充てさせていただきます。