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「100分de名著」で学ぶ福沢諭吉「学問のすゝめ 」3回目その1

出演者:
司会 --- 堀尾正明さん
アシスタント --- 瀧口友理奈さん
講師 --- 齋藤孝さん

1.前回のおさらい

明治維新後、自由平等の社会が唱われましたが、実質的には、幕府の二大藩が政府の実権を引き継ぐことになり、近代化が進む中、国民はますますお上頼みの精神を強くするようになりました。

福沢は、政府と国民は上下関係にあるのではなく、契約関係にあるもので対等な関係であると主張しました。
国民の意識を変えるためには、自分の考えを人に伝える技術を養うことが必要だと考え、演説することを世に広めていきました。

2.今回の概要

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」

幕末から明治へ日本が大きく変わろうとした時代。
福沢は戸惑う国民に新しい生き方を説く一冊の本を書きました。

「学問のすゝめ」

個人が独立してこそ、国も独立できる。
そう考えた福沢は国民一人ひとりに独立自尊の精神を持つよう求めました。

個人と社会が繋がるためには人間同士の活発な交流が必要。
福沢はその秘訣を説いています。

今回は国や社会を支える礎として、福沢が最も重視した独立の精神について考えます。

3.独立自尊の精神

講師:
前回のテーマは、「国と渡り合える人物たれ。」と、学問によって自分で考える力を着けた国民がどう行動すべきかということを学びました。

アシスタント:
それは、お上頼みにならず、自分の頭で考えて、行動して、最終的には自分の考えを演説によって人に伝えることであるということでした。

講師:
今回は、学問で人生を切り開いたり、国と渡り合える人物になる。
その根底となるものは独立心であるというのがテーマです。

福沢は独立という言葉がとりわけ好きでした。
福沢の法名を見ると、その志が読み取れます。

「大観音院独立自尊居士」

これは福沢の弟子が福沢に相応しいと思って名付けたものだろうと思われます。

独立自尊というのは、福沢自身のメインテーマでもありますし、思想の核でもあります。

アシスタント:
なぜ、それほど、独立ということを重んじたんですか?

講師:
時代の背景もありますし、当時の日本というのは、明治が始まる頃は、半独立国だったんです。
独立を重んじた理由として2つあるのですが、独立が国全体の悲願であったことと、もう一つは「一身独立して、一国独立する」という言葉にもあるように、自分一人の独立は国の独立にもつながっているのだという意味で独立という言葉を使っていました。

司会者:
福沢が考えた個人の独立、自律とは具体的にはどのようなことだったんでしょうか。

講師:
人に頼らないという精神的な独立です。

「自分にて自分の身を支配し、他に依りすがる心なきをいふ」

これは、人にすがって人任せにしないで、自分で考えて、自分の身を判断して動かせ、というメッセージです。

司会者:
自分の身を自分できちんと支配するといのは言うは易く行うは難しというところがあります。
「学問のすゝめ」が、当時の国民にとってもかなり大変なことだったようです。

4.独立の精神がない人達

ナレーション:
今世の人々を見ていると、自分を自分以外のものに支配させている者が、あまりにも多い。

例えば、この羽織にこの着物は似合わない、といって新しい羽織を作ったかと思えば、この羽織では古いタバコ入れが似合わなくなった、と、次々に新しいものが欲しくなる。
これは物に支配されてその奴隷になっている人だ。

また他人の目ばかり気にする人もいる。
暑い夏の夕方、風呂上がりには、浴衣にうちわが一番、と思っていても、我慢してスーツを着て、汗を流す人だ。

愚かの極みは、他人の持ち物に振り回される人。
隣の奥さんが上等なちりめんの着物と純金のかんざしを持っていると聞いて、「自分も欲しい」と思って注文したところ、実は隣の家のものは安物だったと後で分かった人だ。

こうした人々は体の中に精神がないようなものだ。
夢や妄想に心が奪われ、精神の独立を損なっているのだ。

司会者:
例えば評価ばかり気にするサラリーマンとかよその子と比較している教育ママとか、自分の価値基準も持てずに他人に支配されているというのは不幸だと言っているのですね。

講師:
一身独立というのは物質以前に何よりも精神の独立であるということですね。

自分は自分であるというしっかりした独立したアイデンティティを持てという福沢のメッセージなんです。

晩年のときの福沢が散歩をしている写真を見てみると、大人物だったんですけど、着流しを端折ったような結構気楽な恰好をしています。

これも、自分はしっかり学問してきて自分の考えに自信があるから、服装に一切頓着しないという独立した考え方によるものです。

司会者:
「学問のすゝめ」の中では、当時どんなひどい状況になっているかということが書かれています。

次回、どんなことが書かれているか、見ていきます。

5.ここまでの感想

福沢は自ら独立自尊を思想の核とし、日本が半独立状態から脱出することを悲願し、国民ひとりの独立が国の独立にも繋がると考えました。

「学問のすゝめ」を紐解くと、西洋文化という新しい習慣に人々が翻弄されている姿が描かれ、福沢がその様子を冷静に見ていたことが分かります。

他人と比較して、他人を羨ましがり、他人と似たような行動をする人は、自分という体に精神がないようなものだと厳しく批判しています。
その態度には、自分の頭で考えて、判断し、行動してきた福沢の自信が垣間見られますし、表面的な改革だけでは、日本の国の本当の独立は実現できないということも十分分かっていたことが伺われます。

他人と比較したり、他人のように振る舞ってしまうという人の弱さは、今に限らず昔もあったことで、自分らしく考え、行動することは、意外と難しいことだと知ることができましたし、自ら進んで学んでいくことが自分という個人を形作っていく上で必要なことだと考えさせられました。

※NHKオンデマンド、U-NEXTなどの動画サイトで、ご覧いただけるNHK番組「100分de名著」を元に、学んだり、感じたりしたポイントをお伝えしています。

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