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どこかで誰かと

こんな話しを聞いた。 昔といっても、うちのじいちゃんがまだ子供だったころの話だ。 じいちゃんの家は、浅草で料亭をしていた。 なんでも江戸時代から続く店だったらしい。 それなりに広い座敷があって、裏には家族や料理場で働く人たちの家があったそうだ。 まだ、のどかな時代でじいちゃんは学校から帰ってくると、お寺さんの庭やまだあちこちにあった川とかで遊んでいたんだって言ってた。 ある夏の日、いつものようにみんなと遊んでたじいちゃんは、ちょっとばかり古い花柄の着物を着た小さな女の

    • 誰かとどこかで

      こんな話を聞いた。 きみは登山をするんだってね。 いや、初心者だってなんだって山を好きな人間と話せるのは嬉しいもんだよ。 基本的に山を好きな人間は、そう群れたがらないし。 まあ、団体でウォーキングしてる人たちは別にしてさ。 登山を始めたら、ひとつ覚えておくと良いよ。 それはね、絶対にどんな山でも甘く見ないこと。 天候は急変するし、自然は優しいなんてことはないんだよ。 もちろん、天気の良い日に森の中にいることは心が晴れる。 確かなそうだ、それと遭難をしないということは、

      • 誰かとどこかで

        こんな話しを聞いた。 その老婆は80代半ばを過ぎて、認知書もだいぶ進んでいたという。 入浴も拒否し、誰も触っていないのに大きな声で痛いんだよーと叫んだり、車椅子とベットを行き来するしかない状態だった。 けれど、彼女にはこだわりがひとつだけあった。 ベストを着ること。 老婆は入浴の後、必ずベストを着せてくれというが、職員によっては無視されることも少なくない。 人でも足りないし、虐待だと叫ばれるのは、みんないやだからね、とこの話をしてくれた人は笑った。 でもその人は、必

        • 誰かとどこかで

          こんな話しを聞いた。 ヨーロッパの上空で、スーツケースに仕掛けられた爆弾か爆発して、某国の飛行機が墜落したことがある。 農村地帯の小麦色の畑の中に、飛行機会社のロゴのついた機体の一部がバラバラになっている写真が新聞の一面に掲載されていた。 この話をしてくれたのは、その農村地帯のあった国の人で飛行歴が空軍時代を含めて30年になろうとする、パイロットだ。 テロがあってから次の日くらいのことだったらしい。 ヨーロッパのハブ空港で、夜中見回りの警備員がシェパードを連れて歩いて

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        • 不思議な話
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          どこかで誰かと

          こんな話を聞いた。 昔子供の頃、夏休みは田舎のばあちゃんの家で過ごしていた。 親は共働きだったし、親が働いている同級生は皆んな似たような感じだったから、中学生になって部活が始まるまでそうしていた。 ばあちゃんは、毎年、僕が住んでたヨコハマまで電車で迎えに来て、翌日中華街で月餅と揚げ菓子を買って、僕と電車とバスに乗って、山間の村の家に帰った。 ばあちゃんの家は農家で、じいちゃんが死んだ後は大抵ばあちゃんと2人で過ごしていた。 でも、近所のじいちゃんやばあちゃん達が優しく

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