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和太鼓・仁の会のこと

私はいっとき障害者施設で働いていたことがあります。

そこに勤めていたとき、毎朝、通勤時に一緒になる身体障害者の方がいらっしゃいました。
その方は足が不自由でゆっくりとした足取りで歩きます。
バスを降りて、一緒に歩き、いろいろな話をしながら職場へ向かいました。
ある日、私が太鼓を習っているという話をしたとき、ポツリとおっしゃいました。
「ボクにも太鼓、叩けるかな」

これが私が「和太鼓・仁の会」を作ろうと思ったきっかけです。
それまで自分で太鼓を打つことはあっても、教えたことなどない。
太鼓は1台持っているだけ。
車は運転しない。
それなのに、無鉄砲にも障害者が楽しめる和太鼓の会を作ろうと決心したのでした。

先ず、市のボランティアセンターに登録をし、一緒に会を運営してくれる人を募りました。
市報で会員の募集もしました。
そして、一番と言っても良いくらい苦労したのが、練習会場探し。
和太鼓の練習ができる場所は限られています。
同じく大きな音を出すオーケストラは良くても「和太鼓はダメ」というところがなんと多いことか。

そもそも練習場所のメドも立っていないのに和太鼓の会を作るなんて無謀ですよね。

それでも幸いなことに太鼓を貸してくれる人、車で太鼓を運んでくれる人、指導をしてくれる人が少しずつ集まり、また、練習場所も、少数ながら、市内の公民館や小学校の教室でできることが分かってきました。

そして、なんとか初めての練習をしたのが2017年5月のこと。
思い立ってから3ヶ月目のことでした。
小学校の教室に集まったのは私を含めて7名。

その後、会員の出入りがありましたが、口コミや私がボランティアで関わっている福祉施設からの紹介で会員が集まり、今では毎回10人以上が集まる会になりました。
練習場所も確保でき、日曜日に月3回の練習をしています。
会員は障害を持つ方々やその保護者、福祉施設に勤務する職員などさまざま。
障害の種別もそれぞれ。
年齢も小学3年性から大人までバラバラ。

毎回、皆さんが楽しそうに太鼓を打っている姿を見ると、この会を始めて良かった、と思います。
そんな中で、私が特に嬉しく思っているのが保護者の方々の言葉です。
「障害があると、子供の遊び場一つとってみても、奇異な目で見られたり、嫌な顔をされたりで、とかく遠慮がちになってしまう。
仁の会では遠慮することなく、素のままでいられる。」

みんなと同じように打てなくても誰も嫌な顔をせず、むしろ笑顔でその姿を見ています。
自分一人で打ちたいという人がいれば、しばしその人の独演会が始まります。
そんな自由な雰囲気を皆さん喜んでくださっています。

また、この会の趣旨にご賛同いただいている方々がときどき遊びにいらしていただけるのも私たちの楽しみです。

一昨年は市のお祭りに参加したり、近隣の福祉施設からの演奏依頼があったりで大忙しでしたが、去年は残念ながらコロナのせいでその類の催しは一つもありませんでした。
今年は来月、公民館で活動している団体の発表会がおこなわれることになっています。
今はそこへ向けた練習に励んでいます。
無観客の発表会になりますが、動画を撮影し、市のウェブサイトに掲載するとのことですので、ご覧いただけたら幸いです。