見出し画像

ただ、なんとなく

どんなに一緒にいても、その人のことを完全に理解できるということはないのだと思う。
おばあちゃんの日記を見ながら、どんな気持ちでいたんだろうと想像してみる。嬉しかったことは感情が伝わってくるし、ただなんとなく書いたんだろうなと思うものもあった。
ただ、なんとなく。
この、ただ、なんとなく、がその人の生き方に一番近い気がするのはどうしてなんだろう。
意味もなく、目的もなく、人は何かを書いたり、したりすることがある。

わたしと妹は、おばあちゃんのお通夜のとき、おばあちゃんの書いた日記を読んで腹を抱えて笑ってしまった。久しぶりに涙が出るほど笑ってしまい、母にたしなめられたくらいだ。
残された側にとって、おばあちゃんの残したものは全部、おばあちゃんの命そのものなんだと思えたし、それは意味があるかないかとか、重要かどうかとか、そんなことではないんだと思う。
ただの人のただの日々が、残された人の活力になることもある。
服についたシミとか、ささくれた指先とか、間違いだらけの文字に、人は人生を見ようとするのかもしれない。
10年日記を始めた。おばあちゃんが3年日記を書いていたから。
途中で終わってしまったけれど、笑ったから。
ただ、なんとなく始めてみようと思った。

#エッセイ #おばあちゃん #日記 #10年 #ただなんとなく

いただいたサポートは創作活動、本を作るのに使わせていただきます。