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命の色

久しぶりの外出。友人に誘われて〈志村ふくみ展〉へ足を運んだ。
お誘いがなければ、おそらく知ることもなかっただろう織物、染色の世界。
染めた糸で織られた着物が並ぶ。
〈初雪〉とタイトルのつけられた着物の前で立ちすくむ。
雪は白いけれど、ただ白いわけではない。初めて地上にやってきた雪は恥じらうように遠慮がちに頬を染め、消えていく。

植物で染めた色は、私たちが見ている花や木の葉の色とは程遠い。
くっきりはっきりとした鮮やかな見た目とは裏腹に、内部からにじみ出る色は繊細でそれでいて凛としている。
糸は液に浸しているとき、引き上げたとき、織り上がったとき、それぞれ見せる表情が違うのだと書かれていた。
作り手と自然との間に交わされた密やかな会話が織り込まれているような気がして、私はそれに耳を傾ける。

帰り際、雲を眺めながら目に焼き付けてきた色を思い浮かべた。
言葉にできない狭間の色ばかり集めて、引き出しにそっとしまっておこう。
そして、いつの日かまた出してきて、物語を作ろう。

#志村ふくみ #染色 #織物 #エッセイ #色 #命

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