あの頃の親の気持ちという伏線─パパの宝もの
真夜中のナイショ話子どもは9時に寝なさいと言われて忠実に守っていた頃、布団に入ったけど寝つけないでいる耳に、両親の会話が聞こえてきた。
「サラ金貸して」
当時から妄想力だけは人一倍たくましかった幼いわたしの頭の中で、ニュースで聞きかじった情報がもつれ合い、持てるだけの荷物を持って夜逃げする一家が思い描かれた。
サラ金はサラリーマン金融の略だが、関西では真新しいことを「まっさら」、縮めて「さら」と言う(おをつけて「おさら」とも言う)。「さらの服」は買ったばかりの新しい服。