見出し画像

“巣ごもり”のあと、羽ばたくために③

辛いとき、苦しいときに、歌や音楽に助けられた経験は、多かれ少なかれ誰にもあるのではないだろうか。

みんなの歌声が交わる気持ちよさ、ハモる楽しさを味わいたくて、大人の手習いでゴスペルを始めたのは、もう何年前だったろ? 歌っているときは、どんな悩みも、嫌なことも忘れられるから、私にとっても歌は精神安定剤。いったん足を洗ったものの、慣れない育児でストレスがピークに達したとき、やっぱり歌いたくなった。意外と近くに0歳から親子で通える教室を見つけ、門をたたいたのは娘が生後2か月のときだった。


◆“3密”の習い事

だだっ広いとはいえないスタジオに、何組もの親子が集い、歌うレッスンは、残念ながら3密そのもの。社会情勢が少しずつ元に戻っても、レッスン再開の目途が立つのはいつになることやら…。

私が通うのは「ファミリーゴスペル・ネバーランド」。その母体となる「NGOゴスペル広場(通称・GQファミリー)」では、4月からオンラインでレッスンなどの動画を視聴できるようになり、休講中も家でゴスペルを楽しめるよう、講師陣が知恵を絞ってくれている。

それに先駆け3月から、Instagramのライブ配信でオンラインレッスンに踏み切ったのが、ネバーランド国分寺・さいたまを率いるMIYABI先生。週に2回、1時間ほどのレッスンを無料で配信中だ。

通常は週1回のレッスンだが、私はなんやかんやで幽霊部員化しているので、むしろ休講前よりも参加できてる気がする(コロナの恩恵!?)。


◆若きゴスペル指導者

離れていても、みんなといっしょに歌いたい

その一心でいち早く、オンラインレッスンを検討し始めたMIYABIさんは、ゴスペル映画『天使にラブソングを』が公開された1992年生まれ。まだ20代だが、ゴスペル指導歴は8年以上。女性3人のゴスペルグループ・Eyesでシンガーとしても活動する。

彼女の歌を初めて聞いたとき、その場の空気がすっと変わった気がして驚いた。私は一気に惹き込まれ、「レッスンはいいから、もっとずっとMIYABI先生の歌を聴いていたい!」とまで思った。

その才能を音楽業界が放っておくはずなかった、というのも納得がいく。しかし彼女は「売れる曲を歌うっていうのがピンとこなくて」「歌で人を元気にするより、歌いたい歌を歌いたい」という自分の心に従って道を選んできた。『天使にラブソングを』で知ったゴスペルが忘れられず、18歳で社会人ゴスペルクラブ「サニーサイドゴスペルクラブ埼玉」のメンバーに。その後、19歳にして教える側にも立つことになった。

現在は0歳から小学生までの親子にゴスペルを教えているが、自身に子育ての経験はまだない。それどころか、3年前に「ネバーランド」の講師になる前は、子どもは苦手だったとか! 今やそれが嘘のように、元気いっぱいに子どもたちと同じ目線でふれあい、笑わせ、音楽を楽しませてくれる

レッスン休講中だからね。自粛自粛で心もくらぁ~くなっていたので、レッスンというか、皆とゴスペルでつながりたかった。

そのために、わからないことは“Googleさん”に聞きながら、配信方法を模索した。

画像1


◆離れていても、歌で元気に!

いつしか「お茶の間ネバーランド」と呼ばれるようになったInstagramのライブ配信では、1時間でも歌えるようになる、シンプルなゴスペル曲を中心にレッスン。次々に書き込まれるコメントを紹介しながら、テンポよく進行する。

各地の「GQファミリー」の講師陣とのコラボ配信も企画。普段のレッスンとは違う発声練習や、英語の発音など、ゲストの特技や才能を生かした特別レッスンを展開。ゲストとの掛け合いも楽しませる。

世の中がオンライン疲れしてきてると感じれば、あるときはピアニスト講師とのコラボで「弾いてほしい曲」のリクエストを募集し、ランキング形式で癒しのピアノを楽しませた。あるときは、心理テストを交えながら、ラジオ感覚でゆるーくおしゃべり。またあるときは、自身の「歌いたい!」という気持ちのままに、本気の歌声を聴かせて涙を誘った。

MIYABIさんがこうしたレッスンを無償で配信する背景にあるのは、「こんなときこそ、歌いたい」という気持ちだけではない。学校が休校になり、保育園や幼稚園も自粛で、いつものように遊びに行けない子どもたち、そしてママたちのストレス発散の場がないことを気にかけるやさしさがある。

レッスンを配信するほかにも、休講になってから子どもたちと文通を始めたり、散歩中に四つ葉のクローバーを見つけると突然ライブ中継して見せてくれたり。豪快な笑顔とともに、元気をいっぱい届けてくれる。

「売れる曲を歌って、歌で人を元気にする」道には進まなかった彼女だが、今、歌いたい歌を歌い、教えることで、間違いなく人を元気にしている

画像2

Instagramで配信しているレッスンは、毎週水曜日 10:45-11:45、土曜日 14:00-15:00。MIYABIさんのアカウントをフォローすれば、「ネバーランド」や「GQファミリー」のメンバーに限らず、誰でも視聴可能。


【ゴスペルとは・・・】もともと黒人霊歌という歴史を持つ宗教音楽だが、もやは音楽の一つのジャンルとして定着。とくに日本では、クリスチャンではない人が歌っていることも珍しくない。「神様をたたえる歌詞は、家族や愛する人などほかの誰かに置き換えて、顔を思い浮かべながら歌えばOK!」というMIYABIさんもノンクリスチャン。いかに気持ちを込めて歌うか、押し付けがましくなく指導している。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?