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*グランドレベル研究所*2016年アクセス数ベスト10発表.第1位は、アクセス数約9万のアノ記事でした!

2016年も残り僅か。この1年このnoteを読んでくださった皆さま、ありがとうございました! 思い返せば、休眠状態だったこのnoteを改めてはじめてみようと思ったのが、2016年1月のこと。デンマーク・コペンハーゲンに1週間滞在し、目にして考えされられたことが、あまりにも膨大で、書かざるをえない頭の状況になってしまったことが、そもそものはじまりでした。

その後も、台湾・台北や日本の各都市でさまざまなものを見てグランドレベルの視点で考え続けることは、いつもエキサイティングで。その面白さを伝えたいとこの1年に書かせていただいた記事は50以上になりました。

というわけで、今回は今年最後の投稿ということで、1年の総括として、年間のアクセス数のランキングを1位から10位まで発表し、各記事を振り返りながら、改めて思ったことをしたためていこうと思います。

それでは、いきなり1位からいきますよー!!

1位:【台北】モノを売る単一施設の時代はもう終わり.たぶんコレが世界最先端の文化&商業施設.あらゆるDIYにチャレンジできる雑貨屋も最高でした!

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アクセス数約9万で堂々の第一位は、台北の「松山文創園区」「誠品生活」エリアの記事。“モノからコトへ”なんて言葉をいつまで使っているんだい!?と、突きつけられた台北での体験。モノとかコトとか、言ってるのはお子ちゃまだぜ! どっちも大切なのは当たり前。それよりも、それらがグランドレベルを含めた日常の空間としてどうつながっているか、一人の人間の体験としてどうシームレスにつながっているか、ということがポイントなんだよ!というわけで、Twitter上でのリツイート数もかなりあったのですが、そういったモノの見方があらゆるクラスタの人たちにフックしていて、そのこともまた発見的でした。

2位:【栃木】何もないまちに建つ団地の1階がカフェになったとき.栃木県さくら市「NO NAME CAFE」が教えてくれる「ない」は「ある」ということ.

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今年のはじめに日光へ一泊したことがきっかけで、数珠つなぎのようにつながって、たどりついたのがココでした。団地の1階をここまでダイナミックにカフェに変えてしまうことに、これもまたクラスタに関わらず、多くの人が共感されている感想をSNS上で数多く拝見しました。きっと、ここで展開されていることが、全国にあるさまざまな物件の可能性のツボを確実に押す事例であることの裏返しだと思いました。栃木の決して人口も多くない、別荘地のエッジで、こんなことをしたらどんな展開になるのか、ぜひ一度訪ねることをオススメします!

3位:【台北・大阪】公園ってエッジデザインひとつで、こんなにも魅力的に!台北「永康公園」と大阪「靭公園」に見た、公園と街をつなげるデザインの可能性.

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台北もの2つ目のランクインは、「永康公園」。この記事を書くちょっと前に訪ねた大阪の「靭公園」と重なる部分があって、一気に書いたことを覚えています。都市公園において、積極的に周辺のまちと関わろうという意思のあるデザインを持つ公園は、日本にはほとんどありません。

例えば、少し前に「南池袋公園」の再生が話題になりました。利用者の多くは基本「楽しいね!」と言っているわけですが、2面を道路に接しておきながら、基本閉じてしまうというのは、一方でかなり大きなものを失っているということを、誰も指摘しないことがとても不思議でした。もっともっと公園のパフォーマンスを上げるデザインがあるはずだと思うのです。管理のデザインではなく、積極的に自由を生み出すデザインへの転換、人間のための公園をつきつめる伸びしろは、日本にはまだまだありそうです。

4位:【東京・神奈川】「ひらく」だけでは意味がない!大切な「いらっしゃい!」デザインの肝を「イリヤプラスカフェ」と地域コミュニティスペース「カサコ」(設計:tomito architecture)から考える.

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これも反応が良かったなぁ〜。話題の若手建築家tomito architectureによる「カサコ」と入谷のカフェの合わせ技レポ。「ひらく」って物理的に「ひらく」んではなく、ひらいている状況をつくるということ。だから、そこで設計デザインされるべきは、ひらいている状況を使用者が能動的につくれるようになっているかってことなんですよね。設計は、もうそのレベルで勝負の時代になっていると思います。だから、数年経って、その建物を見に行けば、どれだけやばいことになっているのかがわかる。当初のイメージ通りに使われていたり、イメージ通りの賑わいになっているものは、普通。個人的には、イメージを通り越して、使用者にとんでもない使われ方をしている建築こそを、これからは名建築と呼びたいと考えているわけです。

5位:【台北】まち全体が図書館に!?台北の地下街にあった無人図書館。図書館を建てず、人件費も増やさず、市民の近くに図書館を増やしていく斬新なアイデアとは?

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今年の記事の中でも何度か言いましたが、とにかく日本はもやは後進国なんだということを、本当に自覚しないとヤバイなぁと思うわけです。もちろん技術的に抜きに出ている部分はあるでしょう。しかし「人間のための○○」がつくれているかというレベルにおいては、圧倒的に後進国。どんなジャンルも学ぶべきことが、世界には無数に溢れているはずです。

料理でも思うことがあります。今でも、日本で食べるものは美味しいとか、日本では世界各国のものが食べられるとか言われているわけですが、この数年、中東、アフリカ、アジア、アメリカといくつかの都市を巡ってみると、どう考えても海外の方が、味わったことのない多様な料理、しかもとても美味しいものが次々と生まれ、現地の市民に愛されているという場面に何度も直面します。しかもそれがずっと新陳代謝を繰り返している。「食」においても、日本が先進国だという時代も、ほぼほぼ終わっているだと思うわけです。

ちょっとこれまで怠けすぎたのかもしれません。あらゆるジャンルにおける日本より美味しいモノについて、意識や情報だけれはなく、自分の実体験を持って世界に出てハンティングしていく行動力が必要があるのではないでしょうか。もちろん、そこで出会ったものをただのコピペすることはできません。そこから学び、どう活かすかを考えることが大切だと思うのです。

6位:【コペンハーゲン】デンマークにある世界一美しいルイジアナ美術館は、一日中過ごしたくなるオトナのディズニーランドでした!

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建築関係の人は誰もが知っている美術館ということもあって、たくさんの反響をいただいた記事でした。けど、建築がどうこうという話よりも、とにかく市民に愛されている感がハンパなかった。そうか。改めて考えると、そもそものアートに触れるという機能に、自由に過ごすことを許すという機能が、五分五分くらいで考えられ施設のプログラムとデザインとして折り込まれてるんだな。ここにずっと居たい、帰りたくないと思わせるデザインって、何に依るものなんでしょう。それを少しずつより具体的に解明していきたい。

7位:【埼玉】今こそ「家」も1階をひらくべき!「グランド派建築家」たちに学ぶ、1階づくりの所作.たとえば、建築家・藤村龍至の場合「白岡ニュータウン リフレの杜 コミュニティガーデン街区」.

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一昔前、陸屋根ばかりが並んでいた建築雑誌も、今では、陸屋根より家型のほうが多いくらい。屋根や軒が見直され、さらに建築家のテキストにコミュニティの文字がないものがないという時流の中、1階はひらくもんだよねという建築家の意識は、ほぼ珍しくないことになってきました。

そんな中で、藤村さんのこの試みは、複数の住戸を持つ新しい街区の提案として、1階をひらきつなげること、しかもそれを住民の能動性に委ねる手前までの絶妙なデザインに落としこんでいることに感動したのでした。

最近、これまで良いなと思っていた建築物を、あらためてグランドレベルの視点だけで見て楽しむことをしています。大きなモダニズムの建築でも、ヒューマンスケールでグランドレベルへ近づくと、想像以上に良くつくられていたり。一方で、名作の現代建築だと思っていたモノが、近づいていくと、コレはダメダメだぁ〜的なものがあったり。

“グランドレベルのパフォーマンス”って言葉をあるとき思いついたのですが、“グランドレベルのパフォーマンス”が下がるようなデザインをしてしまうと、その建築が本来もっている力が100%発揮できないことになるわけです。あっ、これは公園の話と同じことですね。

8位:【東京】ベンチで寝転んじゃ込駄目!?東京駅八重洲口側の理不尽グランドレベルを歩く.そうか!「営み」とは、人々の能動的な行動が折り重なる風景なのだ.

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グランドレベルを観察し続けてきて、今年ショックだったのは、この記事で取り上げたシーンと、もうひとつは座るところがなくて困っている高齢者を何人も見かけたことでした。特に夏はひどかった。信号待ちの長い交差点にベンチもなければ、木陰もない。高齢者たちは、思わず手摺に寄りかかったり。やばい老人は、生け垣にのめり込むように身をゆだねていました。なんかこれって、悪く言うと地獄の都市の風景なんですよね。

こういうことは、行政レベルで一度決着をつけるべきだと思います。浮浪者対策のまちをつくっていくのではなく、市民が能動的にグランドレベルに佇むことができるまちをつくっていくのだと。人の行動がグランドレベルに溢れれば、コミュニティの成熟度も市民の健康度も全てが上がるのですから!

9位:【コペンハーゲン】デンマーク発のランドリーカフェは、多世代の拠りどころ!こんなカフェ、日本にないかも!?

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どの都市へいってもカフェの類は、とにかく行きまくるわけですが、コペンハーゲンのそれは、カフェを構成する無数の物事のチューニングで、ここまで多様なものができるのかと、どこも考えさせられました。特にこのランドリーカフェは、その名前から想像するようなものとはまったく違いました。実は、この体験に触発されて、今ある新しいプロジェクトが動きはじめています。来年の夏ごろに、お披露目することを目標に進めています!

10位:【台北】70大学!42展覧会!台北で見た大大卒業制作展。ナニコレ!?建築ランドスケープ系卒業制作展に見た、台湾の「教育」パワー.

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さて、最後の10位は4つ目の台北ネタでした。これはやはり建築系の人たちにヒットしていましたね。建築を考えて、建築の人たちに評価されたいという思いはわかります。けど、その考えが日本はちょっと強すぎる。これは実はとてもいびつなことだということを、早く気づかなければいけません。だって、建築って社会そのものがクライアントなわけですから。だったら、見せるとき、伝えるとき、いつ何時も、ベクトルは外を向いてなくてはいけない。それが例え卒業制作展であっても!というわけです。

というわけで...

今回のグランドレベル研究所、2016年のラスト記事は、ベスト10の発表でした。それでは皆さん、ステキな年越しを! そして、もしいろんな街を歩くことがあったら、ちょっとグランドレベルの視点で、街を観察してみてください。面白いことがあったら、教えてくださいね。

それでは、次は2017年にお会いしましょう!

大西正紀(おおにしまさき)

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