見出し画像

ビジョン/パーパスは自分からはじまる_#3 Xデザイン リフレクション

このnoteは、Xデザイン学校2024年マスターコースのリフレクション(振り返り)投稿です。毎回の授業で得た学びを1回ずつ振り返ります。


今回のテーマは、ビジョンとパーパスのデザインです。

ですが、その前に。
ビジョンやパーパスについて話すには、関わる人たちがクリエイティブである必要があります。

そこで、クリエイティブなチーミングが重要になります。

クリエイティブなチーミング

クリエイティブなチーミングを行うヒントとして以下のようなものがあります。

  • 心理的安全性を保つ

  • ポジティブな対話をする

  • クリエイティブマインドを持つ

  • プレイフルである

心理的安全性は言わずもがなですが、よく言われるようにお互いの理解のために相手の言葉に耳を傾けるなどは大切です。

一方で、あまり言われないのは、自分の主張も大事にするという考えです。相互理解には、お互いの理解が大事なので、もちろん自分の考えもしっかり
相手に伝えてこそ対話が行えるのではないでしょうか?

その意味で自分の考えを遠慮して飲み込んでしまうのでは、心理的安全性を構築するためにはやってはいけないことだと思いました。

主張を通すのと、主張を伝えるのはまったく異なることだと思います。

その上で、自分とは異なる主張であっても、否定することなくポジティブに解釈して対話することで、一気に心理的安全性は築けるのかな、と思います。

僕自身、どのようなタイミングでもポジティブに対話を展開できているのかについては自信がなく、クリエイティブに問題解決していくためにあらためて重要だな、と思いました。

プレイフルという考え方は、同志社女子大学名誉教授の上田信行さんが提唱されている考え方です。

一度、上田先生のワークショップに参加したことがあり、地元・中小企業の経営者の方たちとワークをしました。

体を動かしながら、互いの視点を役割として交互に変更してアイデアを出し合った経験がとても楽しかったです。いま思えば、プレイフルの重要な概念である、「メタ認知」のトレーニングだったことが理解できました。

「自分でできるかな」ではなく、「どうやったら」できるかなを考えて、自分の外に頼る。とにかく良いものができるのが大事、という考えは、なんでも自分でしたくなる僕にとって、反省でもあり希望でもありました。

プレイフルな課題設定は、人から楽しまれた仕事も、背景や課題意識を話し合うことで自分なりの意味づけを行うことができ、頼まれたこと以上の自分らしい提案ができる可能性を教えてくれます。

ビジョンデザイン

冒頭に、「ビジョンは一度作ったらあまり変わらない」時代から「作り変える」時代ですと説明を受け、本当にその通りだと思いました。

それは世の中が劇的に変わっていることもありますし、そもそも事前にそこまで解像度高くビジョンを描くことは難しいと考えているからです。

ビジョンデザインのためのステップとして、以下の4つの要素が挙げられています。

より良い社会をつくるために「未来のありたい姿」を描くビジョンデザインと、その原動力となる「個人の妄想と熱い想い」は、自己と他者との対話によって深められます。

その対話に必要なのが、「体験プロトタイプ」で、ありたい世界を体験できるプロトタイプにより、利用者や社会との対話を可能にするためのツールです。

社会実験のための「プロトタイプ」と社会実装のための「組織デザイン」を行わないと、ビジョンが社会に根付かないので、重要なプロセスになります。

授業では、しきりにアウトプットする、自分の外に出すことの重要性が繰り返されていますが、メタ認知化するためにも、そして他者と対話をするためにもプロトタイプはプロダクトだけでなく、体験をカタチにすることで効果を発揮するものだと理解しました。

授業では妄想を絵にしましたが、妄想を絵にしたことなんてない自分にとっては、なかなか取り組みが難しく、デザインの背景をもつ仲間が羨ましくなりました。

一方で、巧拙の問題ではないとも感じており、習慣化のが大事なんだと思います。

事例としては、日建設計の「PYNT」がご紹介されていました。

PYNTとは、日建設計さんが運営する共創プラットフォームであり、まちの未来に新しい選択肢をつくるために、「さまざまな専門性や課題意識をもつゲスト」や「建築や都市の専門家」の共創を推進するような多様なアイデアが埋め込まれているスペースです。

社会課題を共創で解決していくアプローチをとり、その社会実験の過程も、PYNTで公開することで、より多くの人が自分ごととして取り組みに参加できるような仕組みを作られています。

社会実験のための場所を先に作ってしまい、その過程も公開しながら社会実装を目指す仕組みづくりは、ビジョンを掲げるだけとは異なる覚悟も感じますし、共創を誘発する仕組みにもなっていて、自社でも参考にしたいと思う取り組みです。

もう一つの事例として、「chocoZAP」が紹介されていました。

chocoZAPとビジョンデザイン!?と、直感的に繋がらなかったのですが、創業者の思いと、事業に託したありたい世界としてのビジョン。そして、そのビジョン実現を可能にするための膨大なプロトタイプの実践と、ビジョンデザインとDXを組み合わせながら実践している事例から学ぶことがとても多くありました。

パーパス

パーパスは、自組織のDNAと社会からの期待が重なるところから生まれるものです。
ビジョン / ミッションがその企業しか乗ることのできない「小さな船」であるのに対し、パーパスは提唱者である企業とそれに共感するステークホルダーが共同してつくる「大きな船」です。

パーパスを定義する4つのステップは以下の通り。

  1. 自組織の探索
    自組織のDNA、歴史的資産、強み、価値観

  2. 社会の探索
    地域課題、社会課題、地球課題

  3. 統合と言語化
    自組織と社会を共存させるための新しい概念を探究し、言語化する

  4. 具体化

私が所属する組織では、自組織の探索を深く行っている一方で、社会と共存する接続があまり探索されていないと感じます。
社会課題をビジネスロジックで捉えようとするのではなく、社会課題をそのまま受け止め、自組織の活動との前向きな共存をどのように実現していけるのかを考える機会をたくさん持たねば、と思いました。

ちなみに、企業のパーパスだけでなく、プロジェクトのパーパスを考える際には、組織ではなく、個人に焦点を当て、「個人の探索」(過去の思い出、自分が大切にすることなど)と「社会の探索」(=社会からの期待)が重なるところから考えるのが良いと教わりました。

パーパスの事例

そして、パーパスは普遍ではなく、変化することも重要な視点です。
ペット関連事業を行っている、「Mars Petcare」は、最初は、ペットフードを扱う企業として「ペットフード」のリーダーでしたが、ペットの健康を考える企業として、自身を「ペットヘルス」にリーダーと定義しました。その後、IoTデバイスやデジタルの進展により、さらに自社の定義を拡張し、「ペットケア」のリーダーとして定義することで、モノ売りではなく、デジタルコネクティッドサービスを提供する企業にまでなっています。

https://jpn.mars.com/en/made-by-mars/petcare?language_content_entity=ja

自分ごとからスタートする

授業では、自分と向き合ってビジョンを考えるワークショップをおこないました。

まずは自分を知ることから。

  • もっともうれしかったこと

  • 時間を忘れて没頭すること

  • 人生の意味や意義を感じること

以下の3つの問いかけに、過去(小学生から大学生まで)と現在でそれぞれ考えた上で、自分を一言で表現します。そして、物語の形で自分は何者かを語ります。

以下は、私が自分の過去と現在を振り返ってみて考えたことです。

その後に未来のありたい姿について考えました。

  • 将来、誰の役に立つことをやってみたいか?

  • 将来、どのような分野で活動してみたいか?

  • どのような社会課題に関心があるか?

  • 将来、もしもxxxxだったらどうなるだろうか、妄想してみる

上記の問いに答えながら、将来のありたい世界を妄想します。本当はラクガキで表現することが大事なのですが。私はあまり頭の中を具現化できず言葉で表現することにしました。

かなり平易な言葉ですが、自分の中で実現したい未来がコンパクトに整理できて、しっくりきました。ふだん仕事する中で考えることのない問いですが、今後の仕事の指針にもなりそうで、じっくり考えてみてとてもよかったです。

意味のイノベーション

将来のありたい姿の解像度を高めるために、授業で行ったのはペアでのスパーリング(批判)です。これは、ロベルト・ベルガンディの『意味のイノベーション』で紹介されている手法です。

スパーリングとは、試合ではありません。相手を倒すことが目的ではなく、相手を強くすることが目的です。

体験づくりには二つの視点があり、人間中心設計/デザイン思考に代表される「アウトサイド・イン」の視点と、意味のイノベーションに代表される「インサイド・アウト」の視点です。
どちらの視点持つことが大事で、手法の主義などにこだわってしまうと片手落ちになってしまいます。

意味のイノベーションは、インサイド・アウトの考え方なので、「私」から始まり、徐々に「みんな」につなげていくプロセスだと理解しています。その中で、「私」と「みんな」をいきなり繋げるのではなく、ペアとして、おなじ「私」をもった相手と、批判(スパーリング)し合いながら新しい意味を磨くプロセスがあります。

多くのスタートアップは「2人から生まれる」ことが多く、なにせ授業をうけているXデザインも、山﨑先生と浅野先生といったタイプの異なるお二人が設立された学舎です。

批判と否定はまったく意味が異なり、批判は、自分の視点から抜け出すヒントを与えてくれたり、異なる視点の衝突から新しい意味を見出すことにもつながったりします。

つまり、批判的対話とは「より深くモノゴトを解釈していくための対話」です。自分の軸を持った上で、相手の言葉に真摯に耳を傾け、自分の視点も捉え直す、なんとも難しいアプローチですが、今回に限らず大事な考え方だと思いました。

今回は、ビジョンのところで考えた、未来のありたい姿について、お互いの理想をぶつけて磨いていくプロセスを、ペアで実施しました。

ペアでのセッションの後は、チームでビジョンを考えていきました。個人のビジョンを対話によって深めることで、徐々にチームのビジョンを納得のいくものにしていくことができました。

個人のビジョンを対話による深めることで、共通のビジョンを見つけ出す

今回は、ビジョンとパーパスを学びました。書籍などでは、ビジョンやパーパスの重要性や、それによって成功している企業の事例は紹介されるものの、実際にビジョンやパーパスをつくる方法はそれほど紹介されていません。

それは、フレームワークに情報を入れたら完成するようなものではなく、自分と向き合って、ペアで対話して、チームで話し合って磨き上げていく固有のプロセスだから、ということを今回の授業で深く納得しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?