『LIFE SHIFT』読書感想文

これからの生き方と働き方について、数字ベースで「100年時代の人生戦略」がまとめられており、2016年に出版されて以降、日本社会に大きく影響を与えました。

マクロの視点:社会の変化

2019年に経団連の会長とトヨタの社長が発信して以降、日本でも終身雇用の限界が一般常識になりました。社会の構造上65歳で定年で100歳まで生きるのであれば、老後とされる期間は35年間になります。労働している期間で老後の資金を貯めるという考えはそもそもが破綻していますね。

100年の寿命を持つ世代が持つべき考え方は、従来の「教育→労働→老後」といった3ステージが崩壊した後の新しいものになります。
 ・世界と自分の理解を広げる「エクスプローラー」
 ・自分で職を生み出す「インデペンデントプロデューサー」
 ・異なる種類の活動を同時に行う「ポートフォリオワーカー」
これからは、これらの新しいステージを相互に移行する生き方、働き方になっていくでしょう。そこで必要とされるのは、寿命までのロードマップを一本道で描くのではなく、変化する社会の中で自己内省しながら計画を継続していくことです。

特にコロナの影響で多くの企業で、仕事が意外とできていることに気が付きます。一部の企業から囲い込まれた生産性の高い人の残して企業はスマートになり、長期的に雇用するのではなく、プロジェクトベースでの労働やギグ化が進んでいくでしょう。

その中で今後の教育では、「新しい学習テクノロジーと経験学習を取り入れること」、「年齢の壁を壊すこと」、「創造性、独創性、やさしさ、思いやりを教える方法について深く考えること」、「テクノロジーの進歩に対応するための実践的な専門教育を急速に拡大させること」に焦点を当てることが求められます。

ミクロの視点:個人の変身

自分でステージを動いていく必要がある時代では、自分でルートを決めていく必要があるため自分についての知識を保つ必要があります。自分についての知識は変化を遂げるための道筋を示すことに加え、人が変化を経験しながらもアイデンティティと自分らしさを保てるようにする役割を持ちます。

アイデンティティの理解には、継続性(自分の変わらない要素はなんなのか?)と因果関係(自分に起きたどの出来事が原因で変化が起きたのか?)の両方の要素が欠かせない。

端的に人生が長くなればなるほど、知識と経験への投資の重要性が増していき、無形資産への投資、リスクを覚悟した行動、多くの変化と変身を経験していくことが必要になります。生涯を通して新しいスキルと専門技能を獲得し続けることが一般的になります。そのため最も重要な考え方は、学習をポジティブに捉えていることでしょう。

なお、本書では無形資産を以下の3種類に分類しています。

生産性資産:人が仕事で生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素。スキルと知識が主たる構成要素であり、他にも様々な要素がある。

活力資産:肉体的・精神的な健康と幸福のこと 。健康、友人関係、パートナーやその他の家族との良好な関係などが該当する。活力資産を潤沢に蓄えていることは、よい人生の重要な要素一つになる。

変身資産:自分についてよく知っていること、多様性に飛んだ人的にネットワークをもっていること、新しい経験に対して開かれた姿勢 をもっていることなどが含まれる。 

変化する社会のなかで変身する個人

投資の目的は「能力や経験、人的ネットワークの形成」にあります。この投資の結果が人生の選択肢を拡大させます。これは人生の幸福度に直結するでしょう。

テクノロジーがさらに進歩した時代に、求められる能力は以下の3点があります。
①新しいアイデアと創造性を育むのを助けること
→アイデアとイノベーション、創造性、起業家精神が重視され始めている
②人間ならではのスキルと共感能力を発揮できるようにすること
→高度な直感的判断、対人関係、チームのモチベーションの向上、意思決定、共感、モチベーション、励ましなどの繊細な対人関係のスキル
③思考の柔軟性と俊敏性など、あらゆる分野で通用する重要な汎用スキルを育むこと

ステージの移行に成功する条件は、将来の可能性を含めて自分自身について知ること、多様なロールモデルやイメージやシンボルを得るための人的ネットワークがあること、変身のプロセスが受け身でなく、行動によって変化することです。なお、人的ネットワークを使うにあたって、自分が評価されている必要があります。

アイデンティティを持ちながらステージを移行できる人はギグ・エコノミーを利用します。ギグ・エコノミーの活用のためには、そのためのビジネスのエコシステムが形成されている空間で生活すると良いでしょう。それによりワークアズライフの働き方が可能になります。特に、高度なアイデアやスキルを持つ人が集まるスマートシティの空間は、人的ネットワークの質を高めてくれます。

ちょいとひとこと

言われればそうだと納得できることばかりですが、それでも人は動けないものですよね。人は未来に対して楽観的なので。未来の自分を今の自分に落とし込むため、今の自分のやることに理由を求めるのではなく、ゴールから逆算し、将来の自分が今の自分に何を期待しているかを考えていきたいです。

尊敬している人も最初はどこにでもいる普通の人。
毎日の積み重ねが理想に近づけてくれる。

人は楽観主義に流される。適切な準備、行動をしないのはそれがもたらす結果を恐れるからではなく、未来について愚かなほど楽観的な考えを持っているからなのだ。ーーダニエル・カーネマン

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