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昔の話だよ……! #匿名短文元神童企画 感想

 こんにちは。幼少期に神童と呼ばれたことはありませんでしたが、童顔のせいでお酒を買う時に免許証の提示を求められたことがあります。まさかミケ猫です。貫禄がほしい。
 さて、今回は #匿名短文元神童企画 というものに参加しまして、かつて神童と呼ばれた者をテーマにして39作品が集まる匿名企画となっています。
 例のごとく、今回も感想をNoteに書き溜めていければと思っています。私ももちろん書き手として参加していますが、匿名企画なのでステルスしながら、しれっと感想を混ぜ込みたいと思ってます。さぁ、どんな作品を読めるか楽しみですね!


企画について

企画概要

1,000〜2,000字で昔神童だった人間の今を描け!
書き手の皆さまそれぞれの『過去に神童と持て囃はやされた人間のその後』を存分に表現していただければと思います。

企画概要より

作品

投票所

感想

01:麻里子を月に連れてって

 トップバッターからめちゃくちゃ良いの来た! 幸せになれよぉぉぉ!
 本作の元神童は、現在では天才になっていて、月に人類が住めるようにしちゃったのか。地球では人間関係に苦しんだみたいですね……しかし、そこに現れるのが麻里子ちゃんなわけですよ。彼女はまっすぐに、天宮くんの側にいるためにずっと努力を重ねてきたんですね。これは泣ける。
 ラストシーン、そして最後の一文が特に良いですよね。彼女の想いの強さが伝わってくるようで、胸にグッと来ました。ぜひ今後は幸せに過ごしてもらいたいものです。めちゃくちゃ良かったです。

02:辺境の爆裂姫は振り返らない

 あまぁぁぁい、これはお幸せに案件!
 本作の神童は、爆裂魔法の使い手の女の子。母を亡くして家を出て、今は冒険者をしている……が、実は現在の相棒こそがということですね。私としては、周囲の人たちが、二人の様子を微笑ましく見守ってるのが良い構図だなと思ったんですよね。楽しそう!
 イリアちゃんの「なんか色々ごめん」で読者的には色々と察しちゃいますよね。やっぱりお前かーいって。とにもかくにも、収まるところに収まって、良かったなと思いました。お幸せに!

03:ママ、だぁいすき!

 わぁ、すごくヤバいの来ましたね!(褒め言葉)
 本作の神童は、幼少期はちやほやされたけれど現在は凡人になり下がった(と本人が思い込んでいる、絶対凡人じゃないだろ)という奴ですが、わりとしっかりめにヤバくて、ヤバい思考を実現するだけの行動力を持っているので、こうなるわけですね。
 ママぁ……大丈夫かなぁ、琴音ママ。なんかこう、琴音ママの家族がどうなってるとか、どうやってママにしたのか、詳細が語られていないのもヤバいですよね。ひゃあ、これは私には思いつかない話だなぁ、面白かったです。

04:かつて神童、今は只人(ただびと)

 ほうほう、そういう神童ですかぁ!
 ガチの神の子というのが斬新でしたね。はじめはてっきり、成長によって凡人になってしまった人間の話かなぁと読んでいたのですが、これは作者様の手のひらの上で転がされてしまいましたね……!
 精々行けるトコまで行ってくれよ、っていう優しさが良かったです。ただの人間に落とされてもなお、応援し続けるという真っ直ぐさ。これは神の子ですね。面白かったです!

05:セーダ・パサール

 こういう神童もめっちゃ良いですねぇ!
 本作の神童は、サッカーの申し子。怪我をして一線を退いても、まだボールを蹴り続けて……そして、第二の成功を手にする。こうして苦悩が報われるのって本当に良いですよね。
 スポーツと怪我は切っても切り離せなくて、なかなか思った通りの活躍をし続けるのって難しいものだと思います。しかし、置かれた状況の中で腐らずに、自分にできる精一杯のことをして認められるというのは、素敵だなと思いました。

06:夜道、照らす光は

 天才の苦悩、理解者がいて良かった……!
 本作の神童は、周囲に持ち上げられすぎて、友人ができずに嫌になってしまったと。忘れたい過去を無遠慮にほじ繰り返されて困っている。そこに、もう一人の元神童が現れて――いやぁ、良かったですね。
 印象的だったのは「しばらく連絡取れませーん」のシーンですね。これまで鬱屈としていた広宣の人生が、まさにここから変わり始めるのかなと。そう思わせてくれるシーンでした。良かったです。

07:元神童はメイドに押しかけられる

 うおおお、幸せになるんだぞ……!
 本作の神童は、元々魔法が得意だったのに病気によってそれを失ってしまった男。そうして孤独に暮らす中で、おしかけメイドがどれだけ彼の救いになっていたか。いやぁ、これは良いものですね。
 なんとなく、本作は私も書きそうな作品だなと勝手に親近感を覚えていました。話の組み立て方だったり、キャラの置き方だったり……私もこれ書きたいなぁって感じで! とても面白かったです。

08:神童はやがて神へ至る

 ホラーだなぁ……不気味で良いですねぇ!
 本作の神童は、予言者……というより、降霊術系統の能力者って感じでしょうか。しかも、自分で降ろすってより勝手に憑依される感じの。で、龍神様に狙われている小春ちゃんと、依り代に使われているハヤト。これは面白い構図だなぁ。
 俺の女に触れるな、は普通の文脈で使われると胸キュンなセリフなんですけど、本作においては不気味さを感じさせる良いエピソードになってるなぁと思っています。また、核心を直接描かないような話運びも素敵でしたね。面白かったです!

09:大好きなおばあちゃん

 素敵なおばあちゃんだったんだろうなぁ。
 本作の元神童は、おばあちゃんになっていたんですね。元聖女としてたくさん苦労をしたんだろうなと思います。が、娘や孫までいて、近所の子が懐いてくれたりして、穏やかな人生を送れたのではないでしょうか。
 大勢の特別な存在にならなくたっていい。たった一人の誰かの小さな小さな道しるべになれたなら――良い言葉だなぁ。私もそうやって、丁寧に物語を作っていければいいなと思っています。とても素敵な作品でした。ありがとうございます。

10:昔 神童、今 譲葉。

 これはカッコいいオッサンでしたね!
 本作の元神童は、譲葉……ゆずりは? ちゃんと意味を把握できていないのですが、若い子を教え導く立場ってことで良いのでしょうか。いやぁ、シビレるカッコよさですね。
 本作は廃都って舞台設定がなかなかキマっていたなと思いまして、主人公のアウトローな感じをいっそう引き立てる要素になっていたなと思います。若者の物語を導く者、という役割も最高でしたね!

11:神でい続けた男

 これは頑張ってほしいなぁと思います。
 本作の元神童はWeb小説家でしたね。一般的に見れば一握りの成功者。なんですが、彼は新しい作品を作れずに悩んでいると。けっこうそういう人も少なくないというか、実例を目にすることもありますし。
 なんというか、色々なタイプの創作者がいますが、売れている人でも悩むものは悩むよなぁって。面白い作品を作り続けようと思えば、慢心なんてしていられないんでしょうね。頑張ってほしいものです。

12:元神童は神ではない

 ほっほーう、これはお幸せに案件ですねぇ!
 本作の元神童は、国を跨ぐ大企業を経営していると。そして、彼には秘密の恋人がいて。いやぁ、ニヤニヤできる構図だったなぁと思います。みんなが噂してるイケメンの真の顔を知っているのは自分だけって状況は、嬉しいですよねぇ。
 ここまで愛してくれてるなら、もうアメリカ行って結婚してやれよーとも思いますが! 表向きは神のように扱われている彼にとって、主人公はホッとできる拠り所なのかもしれませんね。お幸せに!

13:お節介かもしれへんけどな

 なるほどなぁ、面白かったです。
 本作の元神童は、タイムマシンを作れるくらいの大天才。そして、過去の自分が現在の自分に、運命の人との出会いをサポートする。これは面白いコンセプトの作品だったなと思います。
 ここで、登場するのが未来の自分でなく、過去の自分っていうのがポイントですよね。ここが本作ならではの一捻りになっているなと思いまして、独特の面白さがあるなぁと。いやぁ、これは楽しかったです!

14:君よ、驚くこと勿れ

 なるほど、これは驚きましたね。
 本作の元神童は、マジシャン。一世を風靡したあとで姿を消し、久々にテレビに戻ってきた……というところで、本当の望みを果たすわけですね。なるほど。
 てじな~nyゴホンゴホン。はい、マジにゃん! ということで、本作は彼の一世一代の大マジックが光っていたと思います。関係者も視聴者も読者もビックリの、面白い作品でした。

15:「環境」という名の束縛

 これも一つの青春だなぁと思います。
 本作の元神童は父親になっていて、子どもの進路相談を聞くと。なるほど……子どもの進路について考えるのは、けっこう難しいなぁと思うんですよねぇ。
 好きなことをさせてあげたい気持ちと、将来の生活を考えてって気持ちと、どちらも愛だと思うので。こればかりは正解はないというか……環境を整えすぎるのは束縛でもありますが、環境を整えないで放置するのが愛なのかという話もあって。いずれにせよ、こうして冷静に対話できる父子関係は良いなぁと思います。

16:凡人でしか叶わぬ恋

 いやぁ、恨みの強さが光ってましたね。
 本作の元神童は、天才と持て囃された子役。彼らの恋と、それを利用する監督、エンタメ業界の闇などをこの文字数でよく書ききったなぁと思います。
 時代の変化もありますが、昔の映画監督の逸話なんかを聞くと、とんでもないものもありますよね。「本物の感情」を撮るのだというお題目のもと、子役に限らず様々な役者が苦しんできた……というのが、美談として語られることも少なくなかったと思います。
 今の時代はどうなんでしょうね、そういうのが少なくなっているといいなぁ、なんて思ってます。

17:治癒の神童と呼ばれた少女と、その従者の話

 いやぁ、とても素敵なお話でしたね。
 本作の元神童は、かつて治癒魔法で人々を救っていた少女。力を失ってからも、人々を救い続けた。とても胸が温かくなるお話だったなと思います。
 聖女というのが役職につく名前なのだとしたら、残念ながら彼女は聖女ではないのでしょうが、その功績は聖女を超えるものだったと思います。また、従者との関係もとても素敵でしたね。優しい気持ちになる作品だったと思います。

18:住めば都

 艶めかしくも恐ろしい怪異譚でしたねぇ。
 本作の元神童は、謎の多い怪異めいたナニカ。どういう経緯で発生したのか、実際に何が行われているのか……裏話を色々と想像していくと、楽しくなってきますねぇ。そして、その悍ましさを読者の想像に任せるという書きっぷりは、すごいなぁと思ってます。
 ミコの代が終わり、ヒメの治世へ。延々と終わらない恨みの連鎖、みたいなものを感じてゾクゾクしました。これがまた、絶妙に「後世の人が聞いたら、偶然で片付けられるかも」くらいの絶妙な塩梅なのがすごく良かったです。こういうの私も書きたい!

19:僕は今日も『彼女』になる

 これはまた、一捻り加えてきましたね。
 本作の元神童は妹で、切り取られて拡散された動画によって深い傷を負ってしまう。そんな状況の中、兄の行動は……そう来るのかぁ。どうしてそうなったのかあれですが、兄貴はそっちに才能があったんですね。
 二人の空気感というか、信頼し合っている兄妹の閉じた世界という感じがして、尊みを感じましたね。背景にある悲しみは日常の中で言及されなくてもどっかに引っかかっているんだろうなぁ、という絶妙な空気がとても良かったと思います。

20:元神童は人知れず神に至る

 わー、これは面白かったです!
 本作の元神童は、将棋の天才でしたね。どんな話になるのかワクワクしながら読みました。なるほど、そうなってそうなって、そうなるのか!
 やはり天才であっても一人で道を極めることはできず、満足できる敵がいないと燻ってしまうのかもしれませんねぇ。彼からすれば、宇宙人グッジョブでしょう。そしてタイトルに戻ると、彼はラストのあとで神に至ったのかなぁ。良かったですねぇ……!

21:いつか堕ちる日を、心待ちに。

 いやぁ、孤独は辛いですよね……!
 本作の元神童は、邪神と呼ばれて討伐対象になった者。ラストの一文からすると、女の子でしょうかね。優秀すぎて理解されず、恐れられ、孤独に苛まれていた彼女には他に道がなかったのかなぁなんて思います。辛かったんだろうなぁ。
 私としては、従者のクロテの存在が気になりますね。邪神と呼ばれるまでの何かをやらかしても、そばにいてくれる理由があるような気がしますし。それでもなお、孤独が癒されていないのが悲しいです。救いはあるのかなぁ……!

22:カミサマの子供達

 手に汗握る一局でしたねぇ……!
 本作の元神童は、将棋の世界で夢を追い続ける女の子。厳しい世界ですからね、小学校で神童になったからって、さらに上で通用するには分厚い壁がありますし。なかなか大変だと思います。
 研修会の詳しい制度は知らなかったんですが、そんな感じなんですねぇ。年齢制限など、かなり厳しい世界なんだなと思います。報道で目にする方々なんかは本当に雲の上の上の上なんだなぁ。夢であり地獄であり、それが楽しさでもあるストイックな世界でしたね。

23:別解の帝王

 神童も、幻みたいなものなのかもしれませんね。
 本作の元神童は、かつて別解を考えるのが得意だった男。彼のことを、主人公は半ばトラウマ混じりの複雑な気持ちで眺めているが、彼目線では彼女も……と、なんというか不思議な読後感のある作品でした。
 神童っていうのは、子どもの頃のちょっとした能力差により実際以上に相手がすごく見えたりとか、そういった要素もあるのかもなぁと思いました。二十過ぎても人と違うホンモノは、神童の中でも一握りなのかもしれませんね。素敵な作品でしたね。

24:ウィリアム・ジェームズ・サイディス、第二の人生へ

 一風変わった異世界転移モノでしたね。
 本作の元神童は、天才的な頭脳を持ちながら平凡を装って暮らすウィリアム。時代的にも国的にも、なかなか見ない舞台設定からの異世界転移展開でした。
 ウィリアムを呼び出したバタークもまた神童だからこそ分かり合える部分があって、二人の会話の雰囲気には独特な味がありますよね。会話のリズムが、翻訳小説を読んでいるような感じと言いますか。
 面白い空気感の作品だったなぁと思います。こんな感じの会話を私も書いてみたいです。

25:二十過ぎずとも只の人

 これは応援したくなる主人公!
 本作の元神童は、剣において神童と呼ばれた女の子。ただ、成長していくとどうしても性差による体格などの差は出てきてしまいますからね。そのまま活躍し続けるというのは難しいのかもしれません。
 神童という呼称は、一種の呪いのようなものなのかもしれないなぁ、と本作を読んでいて思いました。負けた側が認知的不協和を解消するのに「才能だから」で思考を止めているのかもしれません。レッテルを貼ることで、自分とは違う者だと切り離すことで、心を守っているのかなぁと。だとしたら、結果に陰りが見えて来たときの冷笑もその裏返しなのかもしれませんね。なんとも難しいものです。

26:Blue Moon

 やぁ、すごく良い雰囲気でしたね。
 本作の元神童は、ジャズシンガーだった米兵。時代はベトナム戦争の頃でしょうか。沖縄にて、出撃前夜にサックスを演奏する少年と出会い、自分のこれまでを振り返る、と。
 良いですよねぇ……脳裏でついFly me to the moonが流れてしまいました。ジャズのメロディに故郷を感じて、懐かしむセリフにグッときます。長い人生の中で、生まれも年齢も違う中での、音楽を通じた一時の交流。すごく素敵な雰囲気で、良かったです。

27:弟子入り志願

 ほほう、将棋のオッサンが来ましたね!
 本作の元神童は、かつて将棋がめちゃ強だった男。そこに弟子入り志願の女の子が現れて……オッサンが再起を目指すのかぁ! てっきりこう、女の子側のストーリーになっていくのかなと思ってました。
 やっぱりこう、いくつになっても夢は夢として捨てきれないんでしょうね。燻ってた感情に火がついちゃったんだろうなぁと思います。頑張ってほしいものですね。

28:落ちぶれ神童と大器晩成型魔法使い

 これは良い二人組でしたねぇ!
 本作の元神童は王子。剣と魔法の才能がありますが、まぁ一人の手で守れるものなんて限度がありますからねぇ。守れなかったことを悔いて、隠居してしまっている。
 大器晩成型魔法使いの方は、心が強いなぁと思います。やっぱりこう、才能の塊である元天才の相方は、メンタル面で彼を支える者って構図が映えるのかもしれませんね。二人の関係性が良かった。面白かったです!

29:「元神童はコンビニで働いている」

 なるほど、面白かったです!
 本作の元神童は、未来予知のできる男ですね。今も能力が使えるので、どうやら周囲からチヤホヤされるのに嫌気が差したのかもしれません。もしくは、予知能力を吹聴し続けていると起きる不都合を予知して、それを回避したなんてことも考えられますかね。
 予知能力を使えば、特にコンビニで働かなくても、いかようにでもお金を稼げるかと思いますが(それこそ競馬にでも行けば良いと思うので)、なんか彼にも事情があるのかもしれませんね。面白かったです。

30:それは勘違い

 これは頑張って秀才ルートを歩んてほしい!
 本作の元神童は、地元で神童ともてはやされて、現実を知って打ちのめされていますが。それでもまだ努力を続ける姿勢というのが、すごく良いと思いました。これは応援したくなりますよね。
 狭い世界の中で神童だったとしても、天才に揉まれると現実が露呈したりするものかなと思います。結局どの分野でも、上を見るとキリがないって世界になってきますからね。自己紹介は痛々しかったですが、大事なのはそこ後の行動だと思いますし、そこで頑張り続けるというのが一番の才能だなぁと思ってます。

31:トラワレビト

 予想外のロボットでした! 熱い!
 本作の元神童は、一線を退いたパイロットでしたね。いやぁ、宇宙怪獣が出てくるのは予想外の展開でしたね。そう来るのかぁ……! 洲崎さんが女の子だったのも意外でした。
 激化する戦いの中、元神童が帰ってくる。しかしまだ劣勢、このままだとどうなるのか。というところで、終わっちゃうのかぁ……! もう少し読ませてくれーと思っちゃいました! 面白かったです。

32:神童と呼ばないで

 なるほど、医神ときましたか!
 本作の元神童は、神様でしたねぇ。同じ転生者なのかなと思わせておいてからの、という感じで。神様と知っても、以前と変わらず気安い感じで友情を育むのがとても良いと思います。
 文字数的に厳しかったのは重々承知なので批判的な文脈で捉えてほしくはないのですが、私はこの冒険部分をガッツリ読みたいです。企画後にこの冒険部分を加筆した版を読ませてもらえないかなぁと、希望だけ出しておきます。めっちゃ読みたいです!

33:脱・神童宣言

 うんうん、良かったですねぇ!
 本作の元神童は、神童を拗らせすぎた男。うむ、なんかこう色々と理由つけてますけど、ただただ純情で前に進むのが怖かったんじゃないかなと邪推しちゃいます。ソウタが残念で良いですね。
 いやぁ、ケイコ側が彼をまだどこか神童として見てくれているから成り立つ関係でしたよね。ケイコがフリーのままで良かったです。年齢的にはほんとギリギリだったと思うんですよ……なにはともあれ、無事に結ばれたことですし、幸せになってほしいですね!

34:ピアノ・レッスン

 これはすごく良いですねぇ!
 本作の元神童は、ピアニスト。なのですが、その描き方がすごく繊細で良かったなと思うんですよ。私は本作をすごく真似したい。どうやったらこんな風に書けるんだろう……うますぎるぞ……!
 直接的に神童だったことを記述するのではなくて、彼の奏でる音楽の描写や、それに見合わない彼の仕草や言葉などから、シルエットを描き出すようにして過去を想像させてくるじゃないですか。すごく良いですよね。これはめちゃくちゃ好きだなぁ。

35:転がり落ちる星空

 なるほど、これは愉快ですねぇ、大変だぁ。
 本作の元神童は、倒産しかけの社長。コロナ禍はあちこちで大変ですからねぇ……そんな彼が、憂さ晴らしにマッチングアプリで出会ったのが、まあちゃんだったというわけで。
 いやぁ、まあちゃん、なかなか悪い女ですよね。絶対内心で大爆笑してると思うんですよ。なんというかこう、灘井さんがすっかりピエロになっている様子をめっちゃ楽しんでそう。こういう子、好き。とても面白かったです。

36:エトワール、落ちた

 すごいなぁ、これは素晴らしかったです。
 本作の元神童は、伯爵夫人。なるほど、これは切ないですよね。結末はこうなるしかなかったのかなぁ。どちらの気持ちも分かるだけに、なんとも悩ましいですよね。
 伯爵の視点から、塗り重ねるようにして描かれる彼女の姿は、とても綺麗でしたよね。きっと彼なりの愛を持って、それは執着に近いものもあったり、神聖視する部分もあったりするんでしょうが。人間なりの愛情という枠の中で、彼女を愛そうとしたのだと思います。悲しい結末でしたが、すごく良かったです。

37:憶えていますか

 これは優しくて良い話でしたね。
 本作の元神童は、元同級生。友人の彼女として久々に再会して……という状況で。あえて細部を掘り下げず、ただ穏やかに祝福するという優しさが、胸にジンときました。これは良かったですね。
 性別周りなど、色々と気になる状況ではあると思うんですよ。大きくは、初めから「彼女」だったけど何かの事情でそれを隠していたのか。それとも、当時は「彼」だったけど後から彼女になったのか。いずれにしろ、それを掘り下げる無粋さを見せなかったのがすごく良くて、このような素敵なお話になったのだなと思います。すごく良かったです。

38:元神童だった科学者

 なるほど、これは面白い!
 本作の元神童は、二人の科学者。それで、KはSの研究室に忍び込み、研究成果を盗もうとするのだが……いやぁ、これはいいですね。元神童だった、という二重表現を逆手に取って、この流れに持ってくのは楽しいなぁと思います。良かった良かった。
 科学者が矜持と承認欲求の間で揺れ動く、というのがまた良かったです。それで、KにとってSは小憎らしいライバルだったのかもしれませんが、SにとってKは数少ない理解者だったのかなと。この関係性がすごくいいなぁと読んでました。面白かったです!

39:腹の虫。

 これはなかなかしんどいですねぇ。
 本作の元神童は、幼少期に少々過度な自尊心を抱いてしまった男。その上、窓口で昔を知る人と再会してしまったのが辛いところですよね。これはもう、タイミングが悪かったなぁとしか。
 過集中なんかも、付き合い方ですよね。彼の場合は周囲が持ち上げすぎてしまったのが災いしたのもあると思っていまして。自尊心そのものが悪いわけでもないですし、成長の過程でいい塩梅の着地点を見つけられたら良かったのになぁと思ってしまいます。彼が今後、穏やかな人生を手に入れられればと願ってます。

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