33話-パン王者
冬に入り肌寒くなって来た頃、私は過度な減量はやめて少し体重を戻した。
その頃に当時グラバカの大塚さん(現フィジカルスペース代表)に声をかけていただき、BJJ FIHTERSと言う大会を仙台でやるのでスーパーファイトで松本義彦さんと試合を組んでもらった。
松本さんは僕からしたら伝説の存在。
ライトフェザー級で世界3大大会の一つ、パンアメリカン選手権を優勝していて、あのカイオテハからも一本取って勝っている。
その階級最高峰と言える選手だった。
階級を65kg設定にしてもらい今回は減量なし。
しかし、全てはうまく進まなかった。
試合1週間前、私が草柔会で練習している時レスラーの選手に胴タックルに入られた時、捻ってかわそうとしたらそのままビキっという音がした。
私は少し痛いが大丈夫だろうと思っていたら、次の日痛みで起き上がることができなかった。
ロク軟骨損傷。
柔術をやっていればよくある怪我の一つだと思う。
このタイミングでなるかと思った。
しかし私は何としてでも試合はしようと思っていた。
当日グラバカの松本さんと中村大輔さんと初対面。
どちらも良い人で試合前というのによく話した。
今になって思うと私から話しかけていたので少し鬱陶しかったかもしれない。
しかしどんどん大会は進行し私の試合の番になった。
私は痛み止めを飲みテーピングをガッチリ貼って臨んだ。
もちろん誰にも気づかれないように。
試合は私が最初に引き込んだ。
そしてハーフガード。
すると松本さんも対応して来てリバースハーフになった。
そしてリバースハーフからラペラをつないでスイープ。
松本さんのバランスがよく
粘られてラペラをつないだままがぶりの体勢になった。
私はそこから無理やり倒そうとすると松本さんも粘る。
その時、足腰が異常に強い人だということに気がついた。
なので私はそのまま回り込もうとしたら
松本さんが引き込んで来た。
スイープ、かと思ったが点数は入らず。
しかし私はそのまま攻めた。
時間半分が経過したところで
松本さんが下から50/50の形にして来た。
なので私はバランスを取りつつ
解除をしようとしていると
足関節を何度か狙われた。
しかしこの攻防は時間がかかるので
そのまま膠着し時間が終わってしまった。
ノーポイントで判定になった。
判定は松本さんの勝ち。
残念だったが私は負けを認めた。
そのあとも駅前で牛タン食べに行ったり交流を深めた。
この時、中村大輔さんが日本最強と言われていた時代で、その大輔さんが目の前にいて色々話をしている。
私は良い人だと思ったが、同時にいつか超えたい選手だなとも感じていた。
松本さんに関しては今になっては同じ所属になり、仲間として一緒にQUINTETを闘ったりしたがこの時の試合を私は今も忘れてはいない。
私はそのあとどんどん体重を増やしライト級に戻り、今松本さんと練習することはほとんどないが(私は基本10kg以上の体重差があると練習しない)、今でも尊敬の念を持っている。
これが私の松本さんとの昔話だ。
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