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#4 自己開示の必要性 − ベンチャー起業家の経営学の活かし方 −

仕事は人と人が行うもの

私のNoteでは、歯科医療に専門特化したヘルスケアベンチャーのWHITE CROSS株式会社の経営を中心に、ベンチャー企業での日々を記しています。

私は、東北大学歯学部の学生時代に中小企業診断士を取得し、歯科医師として臨床を経験した後に、UCLAのビジネススクールに留学をしました。経営学については人生の基軸となるように真剣に勉強をしてきましたが、起業して最初の数年は理論どころではない「生き残れるか、倒産か」という時間を歩んできました。ところが今になって経営学を学んできたことの価値を体感しています。そのあたりは、こちらで記載しています。

とは言え、単純な知識では太刀打ちできないのが人の問題です。そこにおいて、私が大切にしているのが「経営は人間学」という考え方です。私一人が、社員の一人ひとりと良い人間関係を築けたとしても、社員同士の人間関係が悪いと、組織としてコントロールが効かなくなってきます。

ベンチャー企業が成長するためには、優秀な人材を集め、ビジョンに対して使命感を重ねてもらい、熱量を高め、寄せ集め、活かす以外に成長への道がありません。”自分以外”の社員同士の問題が極力発生しないように、仕組みを持って取り組むことが大切です。そこにおいては、社員同士が相互的に自己開示できる仕組みが大切になってきます。

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人は、知らない人の自分の価値観とは異なる行動に対しては、違和感や敵意を感じます。例えば、道で人と肩がぶつかった時、それが知り合いだったら微笑みかえしますが、見知らぬ他人だった時には少しムッとしてしまうこともあるかもしれません。

職業人に求められるのは「成果をあげること」に尽きます。営利企業においては、成果に繋がらない全ての行為が無意味です。文章にしてしまうと、ギスギスした職場環境をイメージされてしまい、暖かみが無いように感じられます。しかしながら、そういう意味合いではありません。どこまで行っても仕事は人と人が行うものです。WHITE CROSSにおいては、人としての暖かみや良い人間関係が成果をあげるための源泉の一つになるような仕組みづくりを行っています。

大前提として、WHITE CROSSの行動規範の前文には、

営利企業である以上、儲けることができなければ誰も幸せにすることはできません。売上の最大化、経費の最小化による利益の追求は絶対です。その一方で、利益の追求のみを成果とし、不機嫌で息苦しい職場にはいたしません。多様な社員一人ひとりの心理的安全が確保され、活躍できる環境もまた私たちが追求する成果です。

と記載されています。

家族・恋人・友人・同僚などとの素晴らしい人間関係は、人の幸福感の源泉であり、仕事を通じた「成果」の源泉でもあります。

その一方で、営利企業は「勝てば官軍、負ければ倒産」です。私は、資本調達を重ねながら大きくなっていく道を選択した起業家として生きています。この僅か7年の間でも、周囲のベンチャー起業家がどんどんいなくなって行きます。バイアウトして戦いの螺旋から降りる人。キャッシュアウトして倒産する人・・・「営業利益をあげられない営利企業には社会的存在価値がない」ことを痛感してきました。

WHITE CROSSを必ず大樹に育てる。

そこに至る厳しい道を歩んでいくために必要な仕事上の良い人間関係とは、馴れ合いや甘ったるいものではありません。それは会社を倒産させます。

仕事上の良い人間関係とは、「成果を上げる」という共通のゴールに向かって、必要に応じて侃侃諤諤の協議ができる信頼関係をさすものです。使命感を帯びた人間同士だからこそ、時として激しくぶつかり合います。WHITE CROSSの行動規範に従い「誰がではなく何が正しいかを見る」ことを前提にぶつかり合うのですが、人は感情を持った生き物ですのでどうしたところで大なり小なり波紋が起こります。それらが本格的な人の問題へと発展しないように、WHITE CROSSではお互いの価値観・仕事のスタイル・性格について理解を促すための相互的な自己開示を仕組み化しています。

自己開示の仕組み

私自身、どういう人かが分からない相手と信頼関係を構築できるかというと難しいです。その意味合いにおいて、社内で私は「分かりやすいリーダー」であることを心掛けており、また社内において社員同士がお互いを知り、信頼関係を構築しやすい仕組みづくりに注力してきました。

様々に試してきましたが、特に有用だと感じているのが、
① 社内研修
② Notion上の「私のトリセツ」
③ 自由闊達な社外活動
です。

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① 社内研修

具体的には社員全員が受ける研修を通じて、
・ メタ認知
・ ジョハリの窓
・ 自己開示の必要性
をセットで教え、実践を促しています。その目的は、社員一人ひとりが、

客観的に自己を認識し、「他人は知っているが、自分では気づいていない自己」の悪影響を抑え、「自分だけが知っていて、他人にはまだ知られていない自己」を適切に周囲に開示していくことで、成果につなげやすい良い人間関係を構築すること

です。ベンチャー企業は必然的に年齢層が若くなり、未熟さ故に衝突が生じやすくなります。しかしながら、「若い人は、分別がつかない」などというのは少しだけ長く生きた人間の勘違いです。誰もが当たり前だと思える正しさを言語化し、諭し、認識してもらい続けることで、優れた才能を持つ若く吸収力のある人材に正しく活きいきと活躍してもらうことができます。彼らの若い感性と向き合い、活かそうとしない限り、ベンチャー企業として成長の階段を上ることは難しいのではないでしょうか。

また、異なる部門のメンバー同士が、共通の価値観を学びながら半ワーク型の研修を毎週行うことで顔見知りになります。それにより社内の随所で、インオフィシャルなコミュニケーションが生まれやすくなり、チームとして「成果を上げる」ことに寄与していきます。

② Notion上の「私のトリセツ」

私の経営に影響を与えているイラッド・ギル著「爆速成長マネジメント」において、「創業者が自身の取扱説明書を用意することを推奨します。」と記載されています。この本を勧めてきたのは、CTOの後藤だったか、管理部 部長の永畑だったか・・・いずれにせよ私の経営スタイルに深く影響を与えている一冊です。


ストライプ社の事例を用いて「トリセツ」の必要性が語られており、一緒に働く人たちが仕事をしやすくなるため効果的であることが示されています。

創業者が何に興味があるのか、何を求めているのか、好ましいコミュニケーション手段は何か、いら立たせるものは何か、常に情報を得ておきたい業務領域は何か。これらが事前にわかると、非常に仕事がしやすくなります。知らなかったことで問題が起き、その時には手遅れだった、というミスを防げるようになります。

WHITE CROSSでは全社的にNotionを導入しています。そこにおいて、「活躍」のフォルダに、「私のトリセツ」というページがあります。ここには、全社員の「私のトリセツ」が記載されて、社員は誰もがお互いの「私のトリセツ」を閲覧できるようになっています。

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例えば、私自身のトリセツは以下の通りで、可能な限りの自己開示をしています。一部割愛しており、後半はタイトルだけ載せています。それでも長いのですが、「爆速成長マネジメント」で参考例として掲載されているストライプ社COOのクレア・ヒューズ・ジョンソンのトリセツと同等の長さです。

私は不完全な人間ですが、自分の心地よさのための意思決定/行動/保身をしないことを約束します。柔らかくしてもトリセツにならないので、本音で記載します。

基本的なトリセツ
・ WHITE CROSSを「大樹に育て、社員とその家族を支える」企業にすることが私の人生です。
・ 社内では、明るいです。社外では、節度をわきまえた常識人であることを心かげています。ギャップがありますが、気にしないでください。
・ 結婚式などのライフイベントに私を呼ばなくても、気分を害さないので安心してください。呼ばれたら、喜んで行き、心から祝福します。スピーチなどについても、私に頼まなくても気分を害さないので安心してください。もちろん頼まれたら、あなたのためにベストを尽くします。
・ 私の誕生日などのライフイベントについては、祝わなくてOKです。口頭で「おめでとう」と言ってもらえると、それは嬉しいです。
・ あまり飲みニケーションはしないタイプですが、誘われれば喜んで対応します。また、オフの時間を社員と過ごすことは基本的にありませんが、あなたが私と一緒にいると楽しいと思ってくれるなら、喜んで企画しますしご一緒させていただきます。
・ お互いにniceでいることを前提に、 私への忖度は不要です。ただし、親しさと無礼を履き違えないように注意をしてください。
・ 私から仕事を奪うことはウェルカムです。できる人には、どんどん権限移譲します。
・ ゴールと企業文化に即しているのであれば、自主的にどんどん動いてください。放置はせず、背中に手を当て続けます。指示待ちくんに対しては、優先順位を下げて、放置します。
・ 任せた結果、成果が出ていない時、ズレが生じていると感じた時、強烈に介入することがあります。
・ いずれにせよ最終責任者として社員の背中に手を当て、何かあったら最後は私が動きますのでご安心を。
・ 必要と判断した際にははっきりと物を言いますし、怒りますし、叱ります。負の感情を持たせることになるため、その点については直後に謝ります。後には引きずりません。
・ 社内外からの理にならぬ理や理不尽に対しては、論理的整理をした上で必要に応じて徹底的に戦います。
・ 負の感情を伴う社内対立の温床となる派閥を作ろうとする人/社内政治をしたがる人/誰かを貶めようとする人は、その地位/勤務歴/能力/私との親しさによらず、WHITE CROSSにとって有害な人と判断します。真正面から向き合って、修正を求めます。
・ 私と個々の社員との距離感が、その待遇に影響を与えることはないです。
・ 社員が挨拶を怠った時は、ストレートに怒ります。
・ 諫言はウェルカムです。

提案/相談におけるトリセツ
・ 提案はウェルカムです。ただし、建設的な姿勢と具体性を求めます。良い提案であれば、受け入れます。
・ 相談もウェルカムです。ただし、建設的かつ具体的な解決策を考えた上で、判断を仰ぎにきてください。
・ 単なる否定や個人レベルの不満/愚痴で終わる話は、時間の無駄ですので控えてください。上記の提案/相談に高めた上で、持ってきてもらえれば向き合います。
・ 人に教えることは好きです。役職問わず、私から何か学びたいことがあれば、ウェルカムです。可能な限り、時間を割きます。

業務上のトリセツ
・ いつでも話しかけてもらってOKです。急ぎの事案がない限り、喜んで向き合います。
・ 現実的なポジティブ思考と、適切な危機感に基づいた建設的な姿勢を心かげてください。お互いにその姿勢を持った上での侃侃諤諤の協議はウェルカムです。あなたがプロである限り、ミーティング中、私たちは対等です。
・ ミーティング中の私は早口で、矢継ぎ早に意見を述べるタイプです。燃え上がるように熱がこもるため、一見意見しずらいタイプに見えますが、実はウェルカムです。怖がらないでください。オープンマインドで受け止め、必要と判断すれば反映させます。
・ TPOに合わせて使い分けていますが、特に社内のミーティングにおいては、多くの場合に置いて人の発言の先読みをしています。それゆえに、発言の途中でその先読みに合わせ重ねた発言をすることがあります。悪意はありません。もし私の読みが違うと判断した場合は、遠慮なく教えてください。
・ 私の方針/作成資料などへの意見/提案/修正はウェルカムです。必要と判断すれば反映させます。
・ チャットで私にメンションして、24時間以内に返信/反応がない場合は、再メンションしてもらってOKです。失念していることが多いです。口頭で伝えてもらっても良いです。
・ メールやチャットで、私をccに入れてもらうことはウェルカムですが、読んでいないものもあります。その場合は、トラブルが起きた時に、情報収集する為のアーカイブとして使用しています。
・ メールや書類で、私が目を通すべきものは、その緊急度とセットで「目を通してください」と明確に意思表示をしてください。その日のうちに無理なものは、週末にまとめて目を通します。
・ よく社員に話しかけていますが、忙しい時は忖度なく「忙しいです」と言ってもらえると良いです。気分を害すことはないので、私より仕事を優先してください。
・ たまにイラついていますが、放置しておいて大丈夫です。皆さんに害を与えないように短時間で、自助的に治します。

価値観
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今までの簡単な履歴
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好きな物
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好きな本
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かなり自己開示をしていますが、これを公開して以降、社内において私自身について説明する頻度が減り、信頼関係を形成しやすくなりました。私は文章を中心に記載するタイプですが、社員の中には好きな漫画や写真などを活かして、その人となりが伝わる「私のトリセツ」を記載している人もいます。読んでいるだけで楽しくなりますし、会話のきっかけになります。

新入社員は、まず最初に仕事上の関わりの深い人の「私のトリセツ」を読んでもらうことになります。その上で、最初の仕事としてご自身の「私のトリセツ」を書いてもらいます。そして同僚の皆さんは、それを楽しみに待っています。たったこれだけのことですが、オンボーディングにおいても有用な役割を果たします。

③ 自由闊達な社外活動

WHITE CROSSのオフィシャルな飲み会は、年末の忘年会だけです。「私のトリセツ」の通り、私はあまり飲みニケーションをしないタイプです。とは言え、これは私個人のスタイルであり、社員同士は事業部で、あるいは気が合う者同士で自由に飲みに行っているようです。

また、それ以外にも各々、釣りが好きなメンバー同士で釣りに行ったり、キャンプに行ったりしているようです。副社長の田代はお子さんを連れて、女性メンバーが企画した釣り大会に参加させてもらっていました。

全て社員による自発的な活動であり、私が会社の仕組みとして語るのはおこがましいのですが、大切なのは経営者としてそれらを喜び、応援し、見守るという意識を本心から持つことです。

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こちらは昨年12月に、開発部のメンバーと私で那須塩原のロッジに一泊二日で行った時の写真です。初めてのマグネシウムのファイアースターターに戸惑いながらも、チームワークで焚き火に火をつけていました。どうすれば火がつくかを仮説・検証し、偶然に種火ができたパニック状態の中から、なんとか焚き火を育て上げていくチームワークには、組織で行う仕事の面白さに通じるものがありました。本来的には気を遣う相手である私を、一緒に行かせてくれて本当にありがとう。良い思い出になりました。

そしてこちらは、最近発足された開発部・営業部・HR事業部・メディア部・全社情報戦略室・マーケティングの混成メンバーからなるフットサル部。チーム名は「WHITE BLAZE」です。

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この記事を書いている今日も、代々木公園のフットサル場で試合に出るとのことで、この後、私も応援に行きます。こういう活動は、部門を跨いだ良い相互理解・信頼関係を自然に醸成してくれますし、直接関係ないように見えますが「成果を上げる」土壌を作り上げてくれています。実際に、そういう声も聞こえてきます。会社がもう少し成長したら、公式の部活動にして、部費としてお茶代を出してあげたい・・・と考えています。


素晴らしい人間関係は、人の幸福感の源泉の一つです。

何をしているかも大切ですが、誰と働いているかもとても大切です。

WHITE CROSSでは、そのための仕組み作りを、延々と続けていきます。


WHITE CROSSにご興味をお持ちの方へ

WHITE CROSSは、京セラ、トヨタ、リクルート、ファーストリテイリングのような永続性のある偉大な企業を目指しています。そして現在、ベンチャーステージの真っ只中にある小さな苗木です。

今回のNoteで記載した素晴らしい人間関係の土壌作りについても、日々、改善が重ねられていきます。未来視点に立って大樹を育てていこうとするWHITE CROSSのあり方に共感してくださる方からのご応募を、心よりお待ちしております。カジュアル面談も大歓迎です。気になられた方は、ぜひ採用ページを覗いてみてください。

WHITE CROSS 執行役員・管理部 部長 永畑のnoteはこちら



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