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棋士から学ぶプロ意識

棋士は対局内容を最初から最後まで記憶しています。
通常は100手前後で勝負が決しますが、それをすべて覚えているということは、とんでもない記憶力だと思います。

また、対局終了後に感想戦をやるのですが、そこでは、実際に指した手だけでなく、その時に考えた変化も、駒を動かしながら検討しあいます。
自分はこう考えたが、あたなはどう考えたのですか?みたいなことを、お互いに語り合うのです。
変化の検討が終わったら、変化前の形に即座に、難なく戻していきます。

すごいですよね。どんだけ頭いいんだと!

これに加え、トーク力も優れている方が多いです。
もちろん対局中の棋士はしゃべりません。
ですから私たち素人は解説を通して状況を知るしかありません。
幸いなことに、最近はインターネットが普及しており、様々な形で対局の様子を見たり、現役プロの解説を聞いたりすることができます。

私もたびたび、プロ棋士の方が解説をされている様子をネットで視聴します。
トークの切れやユーモアのセンスなどは、長年講師業をしている私も見習うことがたくさんあり、毎回楽しく拝見します。そして改めて感じるのです。
「頭いいなあ」と。

刻々と変化する局面に応じて、先を読み、駒を動かしながら視聴者にもわかりやすいように解説し、優劣にまで言及する姿には感服するよりほかありません。

これだけでも、トークをかなり研究し、対策を打たれていると感じます。
さらに、間の埋め方が絶妙です。

タイトル戦などは持ち時間が長いため、たびたび数十分にわたる長考の場面が訪れます。局面が進まないから、どうしても間が空いてしまうのですが、その際も、場をつなぐ話題をきちんと用意していらっしゃいます。ここにも解説者として配信に臨まれている真摯な姿勢が垣間見え、尊敬に値するのです。

将棋の普及や棋界全体を盛り上げる役割の一端を、自分が担っているという意識が高いことの表れですよね。
この点にも単に将棋を指すだけでない、プロとしての矜持を見るのです。

なんと言えばいいのかわかりませんが、私の語彙から探すと「大局観」といえばいいのでしょうか。
自分の対局のことだけではなく、将棋界全体を見渡して自分のとるべき行動を考えてらっしゃるのだと感じるのです。

その意識があるからこそ、トーク力を磨く訓練も当然されているのだと思います。

もし、うまく話せないとか、わかりやすく話せるようになりたいという方は、是非将棋中継や配信をご覧いただきたいです。
勉強になることがたくさんあります。

私が特にオススメするのは現役棋士の方々が配信されているYoutubeです。

その中でも下記3本の渡辺名人の動画は必見です。
(女流棋士の香川愛生さんのチャンネルです)

チャンネルを運営している香川さんは、将棋の普及を念頭にYoutubeでの活動を長く継続していらっしゃいます。

そこにゲストとして、時の名人である渡辺名人が登場するのです!
ここにも、将棋の普及に力を入れていらっしゃる様子が見て取れます。
プロ野球で言えば、日本シリーズ後に、監督自らが戦略や心境を語るようなものですからね。

1本目は、名人戦、棋王戦、王将戦と3つのタイトルの防衛戦を振り返って、どのような心構えで臨まれたのか、対戦相手をどのように分析し、対策を組んでいたのか、タイトル毎に異なる時期、持ち時間などをどのように捉えていたのかをお話しされています。

【将棋】渡辺明三冠にタイトル戦の貴重すぎるお話を伺いました…【名人・棋王・王将】

2本目は、2021年に3連敗で敗退した棋聖戦の1局目、2局目を振り返ってのお話です。第2局の「永遠の3分」の言及場面は、実際に盤を挟んで対局されているご本人にしかわからない心理描写です。

【将棋】渡辺明名人vs藤井聡太棋聖 第92期棋聖戦五番勝負をご本人に振り返っていただきました

3本目は、敗退が決まった第3局について詳細に解説されています。
この動画を見ると、棋士の研究がいかに深いものかを思い知らされます。
負けた対局を、ここまで掘り下げているのかと驚嘆しますよ。

【渡辺明名人】第92期棋聖戦第3局をご本人に解説していただきました【vs藤井聡太棋聖】

3本の動画全体を通して、対局前に考えていた戦略、対局中の思考、変化の可能性、勝つためにはどうすればよかったか、次はどうすれば勝てる可能性を高められるのかを、詳細かつ、誰にでもわかるように解説されています。

全体の戦略、戦術、対局しながらPDCAを回す様子、対局後の研究と、次への対策。ビジネスに取り入れられる要素も満載です。

今回は渡辺名人の話を中心に書きました。
その他の方々の動画や解説もご覧いただくことで、棋士がいかに頭が良いかを実感することができます。また、その頭の良さを活かして、プロとしてどう振舞うことが全体の利益につながるのかを考えて、行動していらっしゃることがわかると思います。

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