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地域複業が、豊かなローカルを創る。

長野県佐久地域。新幹線で東京から約70分とアクセスが非常に良い地域です。(移住者には評判が悪いけど)新幹線駅である佐久平駅周辺はよくある地方都市といえばよいでしょうか、イオンがあったりナショナルチェーンが並んでいたりと程よい都市環境もありつつ、駅から車を15分も走らせれば里山に囲まれた自然豊かな環境も整っています。

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また、風越学園(軽井沢町)や大日向小学校(佐久穂町)など、先端的な教育機関ができたことによって教育移住も増えており、特に30代40代の働き盛り世代の移住(または首都圏との2拠点)が増えている地域でもあります。

そんな佐久地域で、僕は佐久市のコワーキングスペース「ワークテラス佐久」を運営しているわけですが、2021年10月現在でメンバーが約60名いて、移住者も多く、そのためか100%東京の仕事をリモートでやっている人が多いです。

運営をしていてふと思ったのが「こういったクリエイティブな技術を持った人がそれぞれの時間の1割でも2割でも佐久地域に関わってくれたら面白いだろうな」ということでした。そして、実は移住してきたメンバーも地域には関わりたいと思っていても、なかなか地域に触れ合う機会がないとのことでした。

そこで、僕らがテーマとして掲げたのが「地域複業」でした。地域の「関りしろ」としての複業を見える化して、積極的にかかわってもらおうと思っています。

今回は、この取り組みを少し紹介してみたいと思います。

◆複業とは

「ふくぎょう」といえば、普通は「副業」をイメージすると思います。でも僕たちはあえて「複業」と書いています。単に副収入を増やす目的で副業するのではなく、自分の自己実現や暮らしを作っていくためにいくつも本業を持つ、つまり「複業」をすることが、これからローカルにおいて、豊かに暮らすことにつながると思っているからです。

なぜ複業をするのか? 自己実現>収入

サイボウズさんが以前から「複業」という言葉を使っていて、僕らも考えが近いのでリンクを貼っておきます。

まったくもって仮説でしかないのですが、とにかくこれからローカルで豊かに暮らすためには「複業」だと思っています。ローカルで複業するので「地域複業」と呼んでいます。

◆「地域複業」を推進する2つの軸

地域複業を推進するために、僕たちは2つの軸を持っています。

①行政や企業と連携して、複業案件を見える化する

②長い目で見た地域課題解決型のプロジェクトを生み出す

です。

・・・①地域複業最前線「YOBOZE!」・・・

①は他の地方自治体でもちらほらやり始めていると思います。要は、複業案件を企業に出してもらって、リモートワーカーをマッチングする、という非常にわかりやすい仕組みです。つい先月「YOBOZE!」という仕組みをリリースして、今年は1社実証実験的にスタートしています。

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この活動は、ワークテラス佐久の運営を一緒にやっている、昨年6月に佐久に移住してきてくれた柳澤拓道さんがメインで運営しています。

「複業とは?」で書いた通り、僕らは単に副収入を増やすだけではなく、複業する人にとっての自己実現といいますか、よりその人が豊かに生きるための暮らしを作ってほしいと思っています。ですので、複業希望者と地域企業をつなげ伴走するコーディネーターを設け、企業の求めるもの、複業者の求めるものなどもしっかり把握したうえでマッチングをしています。ちなみに佐久のことも知ってほしいので、佐久地域を案内したり、時間めちゃめちゃかけてます。これがきっとほかの地域とは違う点だと思います。

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ちなみに、コーディネーター3名とも佐久への移住者で全員「地域複業者」です。地域複業がこれからローカルで豊かに暮らすために大切なことだということを、実証する実験にもなっています。(と僕は思っている)

・・・②ローカル複業化プロジェクト・・・

さて、もう一つの軸が「長い目で見た地域課題解決型のプロジェクトを生み出す」です。こちらの軸は僕が主導して、こちらもまた実証実験的に今年スタートしました。ちなみにこのプロジェクトのことを「ローカル複業化プロジェクト」と名付けました。

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こちらのプロジェクトは

地域課題や、100年先の未来を考えたときに残しておきたいことを、コワーキングのチカラを使ってマイクロビジネス化・メンバーで分かち合い、豊かに暮らすインフラを創ること

を目的にしています。

数年前「地方消滅」が話題になりましたが、これは人口減少が原因で地方行政が維持できないことを指します。

そして、地域課題はその地域によって状況は変わると思いますが、主にこのような課題があげられると思います。

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人口減少が原因で、さまざまな問題が山積み。考えれば考えるほど暗い気持ちになります。やらなきゃならないとはわかっていても、なかなかお金にならない分野でもあります。あと、成長がなかなか難しい現状の日本を考えると、行政に頼りっぱなしという訳にもいかないし、それこそ行政消滅したら終わりなわけです。けど、住み続けるならばインフラとして維持しなきゃならないし、これは僕個人の想いでもあるのですが、里山など素晴らしい環境は100年先にもつないでいきたいわけです。

今でも、ボランティアベースで活動されている人はたくさんいると思います。でも、ボランティアだとどうしても続かない、、、そこで思いついたのが複業&マイクロビジネス化です。

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時間がコントロールできるリモートワーカーならば、収入をある程度確保しながら、例えば、週1日とか月数日程度ならば時間投入ができると思うのです。そして、地域との接点を求めている移住者リモートワーカーにとっては、つながりをつくるという意味でもよいと思うのです。

それに、うまくマイクロビジネス化して地域で循環ができれば、地域にとっても良いし、かかわった人も潤いながら、自分たちでセーフティネットを創ることにつながるので、安心が生み出されます。

あと、地域課題は大変な作業も多いから、苦行とも言えます。これを毎日やっていたら、きついです。だからこそ分散したらよいと思うのです。

それに、これが重要なポイントなのですが、「できるだけ自分の内発的動機から」プロジェクトを立ち上げる、または関わるのが良いと思っています。人から言われてやらされることほど、続きませんし、ろくなものにならないと思うからです。

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様々なプロジェクトが生まれれば、そこにはコミュニティが形成されて、少しずつ重なり、それぞれのコミュニティをつなげる人が出てくると思います。そうなると、相乗効果でより良い活動につながっていくと思うし、地域で豊かに生きるためのインフラを創るための緩やかなネットワークが生まれると思っています。

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では、今年立ち上げた2つにプロジェクトを少し紹介させてください。

◆ローカル複業化プロジェクト「竹林」

今年の2月、たまたまが重なりました。

●近所で竹林が増殖していて困っているプログラマーさん

●竹をたい肥として利用したいと思っていた有機農家さん

●ローカル複業化プロジェクトをたくさん生み出したい僕

「バチっ」とハマり、ワークテラス佐久でミーティング。とんとん拍子で竹林問題を楽しく解決するプロジェクトが立ち上がりました。

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竹害を価値あるものに変える選択肢はたくさんありますが、まずは「竹パウダー」に目を付けました。有機農家さんにとっては、土づくりの素材として非常に重宝されるからです。有機農家さんが多い佐久地域ですので、きっと良い活動になると思っています。

夏に待望の機械が納品され、試作を繰り返しつつ、オペレーションなどの体制が整いました。この秋から製造開始し、来春の土づくりのために利用してもらう予定です。

基本、地域内循環を念頭に置いているので、地域の皆さんにできるだけ手ごろな値段で使ってもらいたいと思っています。それに、竹はほっとけばまた生えてくるので、循環しまくりです。害だったものが価値のあるものになり、地域で循環できることは、とても良いことだと思います。

そして、しっかり利益を出せる体制になったら、さまざまな人が複業として関われる形にし、コミュニティを作っていきたいと思います。

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ちなみに、プロジェクト名は「millplot」。佐久地域で活躍する「換気扇とクローゼット」さんにつくってもらいました。想いをたくさん込めているのでまたどこかで紹介させてください。

基本竹パウダーは地域内循環を基本に考えています。地域外へ進出してしまうと、その地域の機会を奪うことになるからです。でも、そもそもない地域とだったら共創関係ができると思っています。

こちらのロゴは地域外から、(竹パウダーも、竹パウダー以外の商品でも)外貨を稼ぐ段階になったら効いてくると思っています。

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◆ローカル複業化プロジェクト「農業・米編」

こちらも、今年の春からとりあえずスタートしてみたプロジェクトです。農業も複業にできるんじゃないかな?とあまり深く考えずではありますが、まず、ちゃんと農に向き合ってみて、次のことは考えてみようと、スタートさせました。選んだのは「米」。比較的張り付きじゃなくてもできるので、佐久地域以外の方でも参加できるし、保存が効くし、お米が自分で作れるって安心感があるからです。

首都圏からの3名含め10名がプロジェクトに参加してくれました。

場所はうちやまコミュニティ農園のすぐ隣、20年近く使われいなかった休耕地約1.5反を借りてスタートしました。

さすがに20年使っていなかった田んぼだったので、水がたまらない等のトラブルがたくさんありましたが、なんとか収穫までたどり着けました。しっかりと実ってくれてよかったです。取り合えずやってみての感想は、お米は複業というよりは、ローカル複業化プロジェクトの土台的な役割な気がしてきています(お米って日本人の主食なので、自分で作れる安心感がやっぱりでかいです)。あとは、1年終えてみて、本当に素敵な仲間に出会えたなと感じています。それぞれの得意分野を活かし、次年度はさらに進化していくプロジェクトになると思います。先日もnoteに綴りましたが、農園がコワーキング化してきていて、とても良いコミュニティになってきています。

こちらのプロジェクトは写真で記録を残しておきたいと思います。

2021年4月

お米作りの一年の流れ、もみまき、育苗、肥料まき、春耕、畦づくり

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初顔合わせ。お米づくりの1年。
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マルカフェさんのお弁当でランチ交流会
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もみまき
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育苗
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畦づくり
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このメンバーで今年はお送りします。東京、横浜、長野市、軽井沢町、御代田町、佐久市より楽しいメンバーが集まりました。

2021年5月

育苗、代掻き、田植え、水の管理

使い続けていないとインフラが死んでしまうのですね・・・。水が溜まらず土木工事しまくりました。。先人の作ってくれたインフラを消費しているだけじゃダメですね。

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2021年6月

除草、畦の草刈り

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ひたすら除草作業をします。非常に地味です。でもみんな普段はデスクワーカーなので、この時間が内省というかデトックスというか、非常に有益な時間になりました。

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ちなみに、手前にセンサーのようなものが見えると思いますが、アプリを使って水の管理をしてみました。当番制で、東京や横浜など遠隔地からも管理ができたので、田んぼに関わっている感じがとてもよかったです。


2021年7月

水生生物観察、畦の草刈り、穂肥(ほごえ)まき、出穂(しゅっすい)

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無農薬でやっているので、水生生物がたくさんいました。こうやって生き物たちの多様性に支えられています。ただの言葉であった「循環」の意味が、実感としてわかります。

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すぐ横に流れる川で、涼んだりもしました。

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だんだんと穂ができてきていることを、確認します。


2021年8月

畦の草刈り、やる予定の無かった「ひえ」取り

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ひえとお米の生存競争。実は春先、水が溜まらなくて、田んぼの半分は代掻きを2回ちゃんとやれたのですが、もう半分は1回しかやれませんでした。それが見事にひえの成長につながりました。2回やったほうはあまりひえ生えてきませんでしたが、1回だけのほうはたくさん生えてきてしまいました。2回代掻きをやること、これはすごく重要なのだと、体感しました。

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しっかりと実ってきてくれています。


2021年9月

落水、稲の登熟

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しっかり実ってくれました。あと、あまりやることなかったので笑 かかしを作ってみました。大人の工作、なかなか集中できたし、楽しかった。
田んぼの水を抜いて、乾くのを待ちます。


2021年10月

稲刈り、脱穀

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2日かかったけど無事稲刈り終了。あとは太陽の光でおいしくなってくれるのを待つだけ。

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風にやられて、倒れちゃうこともありました・・・。3度手間。なかなかきつい。でも、深夜に保存していないエクセルフリーズを何度も経験している僕には、効きません笑

そして、脱穀。しっかり紅葉してきた山々に囲まれながら、本当に気持ちよくできました。

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2021年11月

脱穀が終わったら、藁が残ります。農家さんの中には燃やしてしまう人も多いかと思いますが、実はこれがもったいない。藁は裁断して土に還して来年の肥やしにします。藁カッターを使って裁断していきます。

そして、ランチの時間は、待ちに待った新米をかまどで炊いていただきます。20年使っていなかった田んぼ、水のトラブルやひえとの戦いなどなど、いろいろ苦労してやっとできたお米。感動しながらみんなでいただきました。メンバーには料理が得意な人もいたので、料理してもらっての収穫祭でした。本当に、お米のありがたを実感する時間でした。


隣には僕の運営するうちやまコミュニティ農園があるので、野菜はそちらからおすそ分けをいただきました。

これで1年間のプログラムが終了です。最後はメンバーで記念撮影。せっかくだから!?こんな写真も撮りました。1年間、こちらの田んぼにお世話になりました。ありがとうございました。

2021年12月

1年の振り返りを、ワークテラス佐久で行いました。お米作りのプロジェクトは1年学ぶ講座ですので、基本1年で終了です。でも、僕自身このメンバーでお米以外にもいろいろと農を切り口にして「複業プロジェクト」を生み出していきたいという気持ちになってきていました。そして、それはメンバーの皆さんも感じてもらっていたようでした。

今年の振り返り、学べたこと・得られたこと、感動したこと、来年これがしたい!を書き出し、メンバーで共有しました。来年の方向性も、農業複業化プロジェクトの方向性もより見えた時間になりました。さて、2022はどのようなプロジェクトになるのか、今から楽しみです。追って2022の募集を告知しますので、ご興味ある方は少々いただければと思います。

◆地域複業が豊かなローカルを創る。

今年活動してきて、思うこと。やっぱり人だということ。いろいろなプロジェクトに、自ら暮らしを作っていきたい人が参加してくれました。やっぱりそういった人は熱量が高いし、アイデアも持ってるし、実行するし、今年1年やってみて、少しずつ芽が出てきていると思います。

そして、実感として、地域複業として様々な特技を持った人が地域に関ることで、豊かなローカルが創られることにつながっていると感じてきています。

まだまだ言語化はできていませんが、僕自身、今年1年やってみて非常に豊かさがUPしたと思っていますし、きっと関わってくれたメンバーも同じく感じてくれていると思います。

より多くの人がこのプロジェクトに関わってくれるのを願っています。そのほうができることも多くなるし、絶対に楽しいので。

豊かに生きるためのインフラをローカルで一緒に創りましょう。





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