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第9回テーマ「究極の主体性がエンゲージメントを高める」

「究極の主体性」が求められる時代になった。私が通っているストレッチの専門店、CMで話題の某企業は副店長や店長への昇格は手上げ式、投票で決める制度だという。特に副店長は、入社して1日目でも空席があれば、立候補可能とのこと。10分以内の動画を撮り、社内のイントラにアップして、その演説に対して全従業員が投票して決まるという。

グループウエアのサイボウズは入社一年目で取締役を輩出し話題を呼んだ。ABEMATVで有名なサイバーエージェントは内定の時点で早くも子会社の社長にするという抜擢人事でこれまた話題である。ゆとり世代、Z世代と「受け身体質」、「動かない」「何を考えているかわからない」等、旧世代と若手のギャップが取りざたされる中で、これからの会社づくりの一つの解が提示されたように思う。副業が是認され、人材の流動化が進み、SNSでお手軽にお金が稼げる時代。この時代の転換期に、若者にどのように働きかければ、エンゲージメントを高めることができるのか。

上記3社に見る共通のキーワードは「主体性」。これはいつの時代にも言われ続け、慣れ親しんだワードである。しかし、従来の主体性とこの3社が求める主体性とは根本的に異なる背景がある。前者はピラミッド型で年功序列、上位下達の組織の中で求められる狭義の主体性だ。つまり、その範囲を逸脱しないという前提である。一方、後者に見られる主体性は、その範囲を大きく飛び越して、年齢や経験よりも、本人の「やる気」を重視している。その心意気への期待とともに、成長を支援する組織風土がある。

これは様々な働き方、稼ぎ方が広がる中で、自社を選んでもらい、能力を最大限に発揮してもらうことが期待できる制度である。私はこの3社に見る人事制度が人間のやる気を引き出す本来の姿であるように思う。これらの制度の究極は、健康総合企業のタニタが2019年からスタートした個人事業主独立支援制度であろう。これはタニタの社員が個人事業主として独立し、改めてタニタと業務委託契約を結ぶという制度である。仕事には制限がなく、自由と自己責任で働くことができる全く新しい雇用形態だ。まだまだ賛否両論、課題はたくさんあるだろうが、新しい働き方へのチャレンジングな試みとして見守りいたい。

日本は男性や女性、バブル世代、ゆとり世代、z世代と属性で一括りにして属性で決めつけてしまう傾向にある。ひとり一人の個性を見つめると多様な人々の集まりであるのも事実だ。自分の人生を充実して、満足のいく生き方をしたいという思いは人間の根本的な欲求だ。そのために求められるのは、誰かの指示に従い、作業を唯々こなすことではなく、自らの手で人生を果敢に切り拓くという「究極の主体性」であろう。意志ある人のやる気と成長に期待し、遣り甲斐のある働き方を支援する。今後のエンゲージメントを高めるという先駆的事例として時代を先導することを期待したい。
(日本食糧新聞掲載 令和3年12月8日)

 

 

 

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