五十肩はつらいよ パート2

肩甲骨をはがせ!

筆者が実際に病院で診断を受けるまで五十肩に罹患していると思わなかったのは、肩だけでなく腕全体に拡がる痛みがどこに由来するのか。筋肉の炎症ほかの病気の可能性を否定できなかったからだった。素人判断ですら迷いに迷う、医者も病名以外ははっきりと言えない、原因の特定が難しいが故に根本的な治療法を提示できない。快復にも個人差がでるこの病態が「中年の病気」という括りで語られていいのかという思いは日ごとに増すばかりである。(後述するが中年の病気とはかぎらない可能性もある)

五十肩であることを受け入れた上で問題は、肩というより腕全体が痛む病態の根本的な原因がどこにあるか、ということである。インターネットを駆使して試行錯誤していく中(医者のセカンドオピニオンは敢えて求めなかった)で、「五十肩とは肩のねじれ(肩甲骨の可動域の固定)がダメージとなって表面化したもの。肩のねじれには前腕部の筋肉の働きが強く関係している」という知見を得る。

肩甲骨に前腕部?ちょっとなに言ってるかわからないです

肩甲骨は、肩の可動域に関わるから感覚的には分かるとしても、前腕部の働きとは、と疑問はいくつも浮かぶが、腕全体の痛みに覚えがある筆者には拝聴する価値があるという直観めいたものを感じた。まさに溺れるものは、である。

しかし今はなりふり構っている場合ではない。

その知見によれば、人間は普段意識していないが、背中に手を回すという行動には「腕をひねる(手首の回内や屈曲)」という動作が必要となる。腕をひねるためには前腕部の筋肉や骨の連携が必要であり、ひねる動作に痛みを感じるということは当然前腕部の筋肉や骨の働きに何らかの障害があるとみるのが妥当であるという。実に単純明快な論理である。説得力もある。

アドバイスにしたがって、実際に指定された前腕部の筋肉の凝りをほぐすと、真上に上がらなかった腕が上がるようになっていたり(ウルトラマンの変身ポーズもバッチリ)、シャツをズボンにたくし入れられるようになるなど、いつの間にか出来なくなっていたことが(多少痛みは残るにしても)できるようになっていた。

(現在進行形であるため)痛みは解消されていないが、治るという実感を得られただけでも大きな前進であることには違いはない。実にありがたいことである。

感謝と同時に今回の件の原因というか遠因の一端が見えてきたような気がしてきたので書いてみる。たとえば、なぜ利き腕の側が発症するのか(両肩や利き腕の反対側が罹患した例は少ない)。なぜ今発症するのか。発症する人としない人の差とは。

人間の、とくに現代人の多くが生活の中で掌を下にする(手首をひねる)動作が極端に多い、手首の酷使がすべての元凶であるように思えるのである。パソコンやスマートフォンの操作など、前腕部のストレスの元は枚挙にいとまがない。運動不足は言うに及ばず、筋トレで身体は鍛えることはあってもリラックスさせる術は案外知られていないなど、思い当たる節は次々とでてくる。

気になるのは、現在では「四十肩」も肩関節周囲炎の名称(のひとつ)となっていることだ。

三十肩や、二十肩も、あるいは……

かつて肩関節周囲炎(五十肩)は、運動不足や身体機能の低下(骨、軟骨、靭帯や腱などの老化)が原因の「中年の病気」と言われていた。しかし近い将来、中年「特有」の病気ではなくなるかもしれない。パソコンやスマホなどの操作による、前腕部の酷使によって蓄積された負担は、ある日、突然なんの前触れもなく爆発する。それは年齢も性別も関係ない。「若年でも発症する」という記述が追加されてもおかしくない病態なのだと考えを改めなくてはならないだろう。そんな日が来ても筆者はとくに驚かない。

今更パソコンやスマホを手放すという選択肢は現実的にはあり得ない。ならばどうするべきか。今一度各々が自分自身に問いかけてみる必要があるように思う。

(了)

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