丸谷香

メンタルコーチをしています。元大学病院のMSW。就労・児童および産業分野でソーシャルワ…

丸谷香

メンタルコーチをしています。元大学病院のMSW。就労・児童および産業分野でソーシャルワーク、心理カウンセリングをしてきました。現在は、経営者、個人事業主、専門職向けのコーチングのほか、障害福祉事業所の組織開発、対話型発達障害研修などをしています。

記事一覧

Down the stairs

ほの暗い灯り。 急ぐ2人。 電車が着く。 あっち側まで できるだけ早く。 人混みの中、 空いた隙間を 駆け抜ける。 こっち、こっち、 すぐそばから 聞こえる声。 私を導…

丸谷香
3年前
7

神様と約束すること

2021年 迷った末に、帰省して、 いつも通り、 実家で新年を迎えました。 海に近い故郷では、 ごちそうというと 決まって魚で、 家族が少なくなった今でも、 大きな鰤や…

丸谷香
3年前
8

左眼の世界

ヨガの世界では、 右の鼻孔から吸って、 左の鼻孔から吐くという 呼吸法があるらしい。 右側は太陽(陽)。 男性性を表していて、 活発な動きをする。 左側は月(陰)…

丸谷香
3年前
2

僕は仕事が続けられなかった

“僕は、仕事が続けられなかった” とある福祉事業所で、 夏の終わりからはじめた こころのレッスン。 自分を大切にすること をテーマに進めた、 つい先日のこと。 …

丸谷香
3年前
7

きっと本当にイヤなこと

秋。 苦手な季節。 ずっと小さな 子どもだったころから、 この季節の ひやりとする空気や、 樹々の匂い ふわりと香る、 きいろい花が、 落ち着かなさを もたらした。 …

丸谷香
3年前
4

絞められたこころ

その人は隠していた。 なにごともなかったかのように 大好きな人のことを話した。 いつも助けてくれた。 何があっても かばってくれた。 そばにいると安心した。 ヒー…

丸谷香
3年前
7

お花を着るように

悲しく衝撃的なニュース。 何気なく見つめるスマホに、 否応無く映し出される文字の数々が 無意識の不安を煽って、 空気が重くなる。 ここ数ヶ月、 出会うクライアントさ…

丸谷香
4年前
7

次に向けて

春先にばっさりと切った髪が いつの間にか、 肩まで届くようになっていた。 風になびいて サラサラと顔を撫でた 自分の髪に驚いて、 時の経過を知った。 夏が過ぎて、秋…

丸谷香
4年前
5

ありがとう。過去の私。

確定診断と発達分析を求めて、 クライアントさんと一緒に あちこち探しまわって3ヶ月。 狭間の狭間の、そのまた狭間にいる人。 でも、おそらくビジネスシーンでは よく見…

丸谷香
4年前
4

はじめての梅干し

大人になると、できるようになると、 思っていたことがあった。 左手の薬指にリングがあること 庭のある家に住んでいること 小さな子どもの手を引いていること…etc そ…

丸谷香
4年前
2

15年目の約束

「ずっと、この仕事を続けてほしい」 そう言われて、15年が経っていた。 委譲された病院の 医療相談室の立ち上げを任された 2年目のひよこだった私。 右も左もわから…

丸谷香
4年前
10

かき凍る夏

かき氷というものは、 いつからこんな ゴージャスな食べ物になったんだろうか。 という思考が頭に浮かんで、 慌ててかき消した。 あ、おばさんみたい…と、怖くなった…

丸谷香
4年前
8

最近の疲労感の正体。

最近よくみられる相談事 「最近、なんかボ〜ッとしてるんですよね。 集中力がなくて、そわそわしてる。 いつもすぐできることにすごく時間がかる。 僕、うつなのかな?」 …

丸谷香
4年前
7

5年かかってやっとできたこと

2015年に起業して、2020年の今年、5年が経ちました。 意図していませんでしたが、なんだか切りが良い数字ですね。 振り返れば5年間、よくやってきたなと思います。 周り…

丸谷香
4年前
8

喪失感というのは。

気づくと7月になっていた。 あまりの大雨と、初めてのワークショップ開催のせいで 水無月を食べるのを忘れていた。 実はあまり好みではないのだが、 子どものころからの…

丸谷香
4年前
8

近くのええとこ

梅雨の晴れ間のある日、 友人の誘いを受けて、 大阪城に行ってきた。 日本のお城にさしたる興味関心がない私は、 どこか旅行に行った際に、 そこが観光スポットだから、 …

丸谷香
4年前
10
Down the stairs

Down the stairs

ほの暗い灯り。
急ぐ2人。

電車が着く。
あっち側まで
できるだけ早く。

人混みの中、
空いた隙間を
駆け抜ける。

こっち、こっち、
すぐそばから
聞こえる声。

私を導くことば。

視線の先には
よく知る顔。

私を一番安心させる
あの笑顔。

進んだ先には、階段。

行こう、と、
降りていく。

どれくらい降りたか、
ぐるぐると回りながら、
螺旋でもない、
景色がない、

そんな世界を、

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神様と約束すること

神様と約束すること

2021年

迷った末に、帰省して、
いつも通り、
実家で新年を迎えました。

海に近い故郷では、
ごちそうというと
決まって魚で、

家族が少なくなった今でも、
大きな鰤や、新鮮なカニが
台所に並びます。

我が家の定番は、
カニではなく、ぶりしゃぶ。

鰤は、お刺身から、
ぶりしゃぶへ進み、
照り焼きにされて、
あら炊きに行き着きます。

年末から年始にかけて、
文字通りの鰤ざんまいに
興じ

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左眼の世界

ヨガの世界では、
右の鼻孔から吸って、
左の鼻孔から吐くという
呼吸法があるらしい。

右側は太陽(陽)。
男性性を表していて、
活発な動きをする。

左側は月(陰)。
女性性を表して、
静寂と捉えられている。

チベットヒーリングでは
右眼は男性性を、
左眼は女性性を表すらしい。

性別に関わらず、人は誰しも
男性的な部分も、
女性的な部分も
持ち合わせていると思う。

それが左右に現れ

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僕は仕事が続けられなかった

僕は仕事が続けられなかった

“僕は、仕事が続けられなかった”

とある福祉事業所で、
夏の終わりからはじめた
こころのレッスン。

自分を大切にすること

をテーマに進めた、
つい先日のこと。

今月、入ったばかりだという
彼が、
私のもとに来て、呟いた。

”僕は、仕事が続けられなかった”

期待を受けて、
入った会社を、
3ヶ月で辞めた。

毎日、毎日怒られた。
自分の何が悪いのか、
何ができていないのか、

考える

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きっと本当にイヤなこと

きっと本当にイヤなこと

秋。

苦手な季節。

ずっと小さな
子どもだったころから、

この季節の
ひやりとする空気や、
樹々の匂い

ふわりと香る、
きいろい花が、

落ち着かなさを
もたらした。

大人になって、
ずいぶん平気になったけど、
いまだに心許ない自分がいる。

それでも、数年前から、
密かな楽しみができた。

栗の渋皮煮。

地元の名産でもある
大きめの栗を
料理することが、

秋のささやかな楽しみにな

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絞められたこころ

絞められたこころ

その人は隠していた。
なにごともなかったかのように
大好きな人のことを話した。

いつも助けてくれた。
何があっても
かばってくれた。

そばにいると安心した。

ヒーローだと思っていた。
大好きだった。

そう、話す彼女の目は、
ずっと私を窺っていた。

大好きだったから
怖いんだね。

そう伝えると、涙を流した。
俯いて、言葉を吐いた。

大好きなその人に、
絞められた首が、
今でも自分を

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お花を着るように

お花を着るように

悲しく衝撃的なニュース。
何気なく見つめるスマホに、
否応無く映し出される文字の数々が

無意識の不安を煽って、
空気が重くなる。

ここ数ヶ月、
出会うクライアントさんから、
度々、死についての話が出てくるようになった。

突然死、自死、病状の悪化。

何の偶然だろうと思っていた夏の初め。
1日にお会いした3人なり4人
すべての方から、
身近な人が亡くなった、
という言葉が出てきた。

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次に向けて

次に向けて

春先にばっさりと切った髪が
いつの間にか、
肩まで届くようになっていた。

風になびいて
サラサラと顔を撫でた
自分の髪に驚いて、
時の経過を知った。

夏が過ぎて、秋が来た。

あぁ、この半年間、
私は何をしてきたのか、

思い描いていた結果が、
いまだ見えず、

無駄なことをしているような、
意味のないことを
続けているような、

どう動いたらいいのか、
道が見えて来ず、
焦りを感じていた。

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ありがとう。過去の私。

ありがとう。過去の私。

確定診断と発達分析を求めて、
クライアントさんと一緒に
あちこち探しまわって3ヶ月。

狭間の狭間の、そのまた狭間にいる人。
でも、おそらくビジネスシーンでは
よく見かける、おそらくたくさんいる、そんな人。

発達障害の支援にも、
産業精神保健にも、
通じていたつもりだったのに

望んでいたことに手が届くことなく、
誰にも届かない歯がゆい思いと
不本意に伝わる疲労感が、
焦りを生み出していた。

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はじめての梅干し

はじめての梅干し

大人になると、できるようになると、
思っていたことがあった。

左手の薬指にリングがあること
庭のある家に住んでいること
小さな子どもの手を引いていること…etc

そんな、私の勝手な
いくつかの思い込みの中に、
梅干しを漬けること、というものが含まれていた。

無意識でもセットできるご飯のように、
祖母や、母がずっとそうしていたように、
求めなくても、いつか、
できるようになるものだと思って

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15年目の約束

15年目の約束

「ずっと、この仕事を続けてほしい」

そう言われて、15年が経っていた。

委譲された病院の
医療相談室の立ち上げを任された
2年目のひよこだった私。

右も左もわからず、
わからないと誰にも言えず、
泣きそうな日々の中で、

はじめて相談室に来てくれた
柔らかい笑顔の
一人の患者さん。

彼女が亡くなったとき、
ご主人から聞かされたこの言葉。

病院で、あなたに会うのを楽しみにしていた。

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かき凍る夏

かき凍る夏

かき氷というものは、
いつからこんな
ゴージャスな食べ物になったんだろうか。

という思考が頭に浮かんで、
慌ててかき消した。

あ、おばさんみたい…と、怖くなったのだ。

4連休前の平日。
喧騒をさけるべく、一足先に帰省した。

バブル崩壊後、観光客が激減し、
寂れまくっていた駅周りは、
この数年のインバウンドの恩恵を受けて
かなりの盛り上がりを見せていた。

おしゃれで心地よいカフェが

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最近の疲労感の正体。

最近の疲労感の正体。

最近よくみられる相談事 「最近、なんかボ〜ッとしてるんですよね。
集中力がなくて、そわそわしてる。
いつもすぐできることにすごく時間がかる。
僕、うつなのかな?」

ある管理職さんとのコーチングセッション。
コロナ第二波に備えて
やるべきことを整理していました。

ひと段落したところで、
こんなふうに呟かれました。

また別のセッションでは、

「やらないといけない仕事があって、
そろそろ取

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5年かかってやっとできたこと

5年かかってやっとできたこと

2015年に起業して、2020年の今年、5年が経ちました。
意図していませんでしたが、なんだか切りが良い数字ですね。

振り返れば5年間、よくやってきたなと思います。
周りに起業した人もいなくて、
ビジネスのノウハウも知らず、
右も左も、前も後ろもわかりませんでした。

今、あのときに戻れと言われると、足がすくんでしまいます。

ありがたいことに、起業したその年から仕事の依頼をいただけました

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喪失感というのは。

喪失感というのは。

気づくと7月になっていた。

あまりの大雨と、初めてのワークショップ開催のせいで
水無月を食べるのを忘れていた。

実はあまり好みではないのだが、
子どものころからの習慣で
柏餅やおはぎと同じように
その季節には「食べなくてはいけないもの」の部類に入っている。

そういうものを買うために、季節ごとに行っていた
小さな和菓子屋さんがなくなっていた。

靴箱の上から下まで
私の足元を彩るすべてをお

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近くのええとこ

近くのええとこ

梅雨の晴れ間のある日、
友人の誘いを受けて、
大阪城に行ってきた。

日本のお城にさしたる興味関心がない私は、
どこか旅行に行った際に、
そこが観光スポットだから、
という理由で足を運ぶ、
という程度にしか城を訪れない。

というわけで、
私にとって旅行ではない場所にある城、
「大阪城」、を訪れたことが実はない。

理由は他にもある。

人が多すぎるのだ。

お花見やイベントで
大阪城公園と

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