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ステップ(東1/9795) 株主総会レポート 2021/12/18

 東証1部上場のステップの株主総会に出席しました。毎年のことではありますが、当株主総会の様子についてご紹介いたします。当記事は私の個人的な心証に基づき脚色した内容であり、塾業界にも全く知見はないため内容の正確性は保証出来ない点はご了承頂ければと思います。また、記載内容には様々な配慮をしているつもりではありますが、予告なく内容の修正や削除等の措置をとる可能性があります。従いまして、大変恐縮ですが、記載内容の許可なき転載はご遠慮下さい
 なお、以下画像より私のツイッターアカウントへリンクを張っています。記事の内容についてのご指摘、ご質問、感想などがございましたら、お気軽にダイレクトメッセージやリプライを頂けますと幸いです。他の方の声を伺える事は、その内容のに関わらず私の学びにもなりますのでぜひお願いできればと思います。

1.はじめに

 冒頭では、まず昨年の株主総会レポートの記事と直近の決算精査記事を再掲しておきます。

  また、ステップの事をご存じない方もおられると思いますので、ビジネスモデルと業績推移についてのみ表記しておきます。コロナ禍の影響を受けましたが(信頼獲得のため大幅な値引き対応)、安定的に事業を積み上げてこられています。

ステップ(9795) ビジネスモデル図解
ステップ(9795) PL推移

2.株主総会の流れ

 それでは、まず株主総会の流れについてご紹介します。手元の時計でのざっくりしたものであり、特に総会後の事業説明会はちょっと曖昧で、時間はいい加減ですので、大まかな雰囲気となります(笑)。

10:00 開会 (遠藤社長)
10:02 議決権数確認 (新井取締役)
10:03 監査報告 (上田監査役)
10:04 決算報告 (今野経理部長)
10:15 現状報告<小中学部> (遠藤社長)
10:45 現状報告<高校部> (大黒取締役)
10:59 今後の方向性 (龍井会長)
11:16 質疑応答
11:48 議案上程・議案に係る質疑応答
12:00 閉会
12:01 退任役員の挨拶(梅澤氏、高瀬氏、上田氏)
12:04 新任役員・監査役の挨拶(仲野氏、中村氏、五十里氏、田中氏)
 ~ 休憩 ~
12:20 事業説明会 開始
13:30 事業説明会 終了

 開始の冒頭で、今回の株主総会においても事前登録制となった点について、運営への協力についての御礼がございました。コロナ禍の下での苦渋の選択ということです。ここは、人の価値観も三様で答えがないものなので致し方ないかと思います。特に塾を運営していると保護者への説明会等でも様々な声を受け止めなければならない中で、より安全線へ倒す(少なくても体裁上は)という判断があるのは当然の事とも思います。
 また、議決権数の状況ですが、今年は以下のようになりました(メモミスってたらすみません…(汗))。
※行使/総数(行使率)で表記しています。

◇今年 
 議決権を有する株主数  2,564人  / 6,133人 (41.8%)
 議決権数        139,789個 / 165,008個 (84.7%)

 過去2年とも比べておきます。

◇昨年 
 議決権を有する株主数  2,002人  / 5,547人 (36.1%)
 議決権数        142,790個 / 165,021個(86.5%)
◇一昨年
 議決権を有する株主数  1,816人  / 5,552人(32.7%)
 議決権数        134,213個 / 165,039個(81.3%)

 議決権行使の株主数は増え、その行使率も上がっていますが、個数ベースでは昨年より下がりました。まぁ誤差ともいえますが、昨年はコロナ禍の影響を大きく受けたという中での総会付議でしたので、色々な意見がより積極的に示されたということかもしれません(たぶん違うかな(笑))。
 ちなみにこの議決権個数ベースで8割以上が安定的に行使されているのはいいですね。議決権行使によりクオカードを撒き餌にしているような会社ならともかく、(大株主比率が高いとはいえ)いい傾向だと思っています。
 監査報告は上田さんの簡単な朗読でした。特に変わらないのですが、上田さんは後の退任挨拶で、入社来38年ステップで勤め上げられての卒業ということで感慨深いと仰っていましたが、そういうお気持ちとセットで捉えると、いや、お疲れ様でした、という感じですね。時々議事運営中に目が合うこともあって、こちらに表情を向けて下さる様子などからも穏やかな方なのかなという印象でした。
 以後の内容は章を分けてつらつらと書いていきます。まだ長いですからね(笑)。

3.開会までの過ごし方

 早く、総会の続きを教えてよ、という声が聞こえてくるような気がしますが、今年も開会までの私の過ごし方、というどうでもいい内容に脱線します(笑)。
 例年、私は電車の遅延などがあると困るので、8時には藤沢(ステップの総会会場)入りするようにしています。ただ、流石に早すぎると朝も辛いですし、総会の行われる会場である校舎に高校生の自習室待ちの傍らで並んでいるのもあまりに前のめり過ぎるだろうってことで、今年は反省して、8時30分到着をめがけて自宅を出ました(ちなみに開場時間は9時30分なので、これでも相当早い)。
 いや、実は、前日の夜に冬型の気圧配置が強まり強風になった事で電車が運休となっていたりしたので、急遽車で前泊しようかと前夜に移動をしようかと思ったくらいでした。流石にやめましたけど(笑)。で、翌朝、無事に電車は動いてくれて藤沢に予定通り8時30分前位に到着出来ました。
 これもまた恒例なのですが、エキナカ?のスタバでコーヒーを飲みながら、質問事項を復習します。私は頭が悪いので、質問を推敲した上で一応原稿らしきものを作成しています。
 ちなみに今回の質問原稿は絞りに絞って全部で17問(アホですね(笑))。総会中は2問なので、様々な観点から2問をピックアップ、付議事項に係るものは別時間用意していただけるのでここに3問、残りは事業説明会用に12問ということになります。当然、他の参加者の方もいらっしゃるので最初から全て質問するのはムリゲーなんですね。まぁそれでも興味関心が涌いてきてしまうのは仕方ありません。というわけでこの原稿に目を通して、自分なりに如何に意図を伝えながら良好なコミュニケーションを取れるかを模索するわけです。もちろん、その場になると緊張して頭も真っ白になって、しどろもどろになって、この努力は無駄になるんですけどね(笑)。まぁ結果が分かっていても自分なりに最善を尽くすのは、殊更、興味関心を寄せている相手に対して最低限のマナーだとも思っています。上手くやろうなどというのは思い上がりで、下手なりに伝わればいいなと思いながら、シミュレーションをするわけです。
 そして、そんなことを考えながらコーヒーを飲んでいてもどうにも落ち着かないわけですね。スタバは癒しと寛ぎを与えてくれる空間を売りにしているはずですが、いち早く現場にかけつけておきたい、みたいな焦燥感にかられるわけです(病気ですね(笑))。
 というわけで、開場予定時間の15分くらい前に、今年も前のめりについてしまうわけです。まぁ、例年の9時前の開館の行列の傍らに佇まなかっただけ、まだマシになったのです。そう思うことにします。
 入館すると既に係の方がいらっしゃり、会場の7Fへどうぞ、と案内してくださいます。あれ、例年は開場の時間前までは1Fのロビーで待つことになるはずなのですが、今年はどういうわけが上へどうぞとご案内です。開場時間より前に来ちゃうあわてんぼう対策がなされてしまいましたかね(笑)。いや、私はロビーで待たせてもらうつもりだったので、逆に気を遣わせてしまっていたら申し訳ないな、と思いつつ、係の方のご案内を固辞するのもまたおかしくなりますからね。いや、私はここで、待ちますって。いや、何を待つのさ、ってことになるし(笑)。おとなしくご案内に甘えて7Fへ上がります。当然、受付は準備中で慌ただしいわけですが、そういう様子を垣間見せずに待合スペースで待つようご案内頂きます。いつもご案内して下さるスタッフの方々ですね。また早く着いちゃってすみませんとか言いながら。
 取締役の袴田さんがお迎えしてくださり、その後、梅澤さんがいらっしゃりご挨拶したりとしていたのですが、ここでちょっと恥ずかしいことがありました。
 大黒さんがいらして、ご挨拶した時に私のnoteを見ています!って仰って下さったんですね。いや、まぁ龍井さんやIR部門の方にご覧頂けてることはなんとなく認識していたので(認識しているならもう少し配慮をもって書けばいいんですが…(笑))、まさか他の取締役の方の目にも触れているとはあまり思っていなかったんですね。そういえばいつも、大黒さんに触れていじってしまっていましたからね・・・。すみません、この場を借りて。
 で、恥ずかしい話はこれで終わりではなくて、このnoteを見ていますのあと、あの高校時代の記事よかったですよ~って。え?、あの私の青春シリーズ読んじゃったんですか!?ってなって。しかもあれ、私の高校時代のちょっと淡くうふふな話なので、面と向かって読みましたって言われるとかなり恥ずかしくて。しかも8万字超の長編ですが、全てお読み頂いたそうで、それはとても嬉しいんですが、貴重なお時間を奪ってしまって申し訳なくなってしまいました。全文読みましたの声はまだ1桁で、直接リアルに仰っていただいたのは初でしたので、なんか著書を出した人の嬉しさが1%わかった気がします。その恥ずかしい自伝記事は以下です。

 まぁそんなこんなで、いきなり嬉しくも恥ずかしい思いに駆られて、総会始まる前から既に戦いに負けそうです(何と戦っているのかよくわからないw)。
 管理部門所掌の新井取締役ともお話をさせて頂き、今日の運営について確認事項を済ませて、いよいよ開場です。

4.決算報告

 はい、ようやく総会の話に戻ってきました。決算報告として今野経理部長からご説明があります。毎年安定の説明ですね。基本的に決算説明資料の内容に沿って、説明がなされますが、所々で様々なデータ等も用いられながら丁寧な説明をして頂けます。決算内容などを一通りチェックしている中ではほぼ復習要素も強いですが、そんな中でも色々再認識出来る事等もありますから有益な時間です。

・新規開校スクールの紹介

 元住吉スクール、上永谷スクール、ハイステップ川崎スクールの3校が開校です。いずれも順調な立ち上がりで、特にハイステップ川崎は今後を踏まえた時に重要な位置づけとなる中での好調な立ち上がりかと思いますが、特にそのあたりの定性的なお話はありませんでした。

・生徒数の状況

 こちらは小中学部、高校部で定量的なデータも用いながら、ご説明されていましたが、いずれも好調な推移で前期比の伸長も大きく、ステップの運営がうまくいっている点が伝わる内容でした。

・決算内容について

 増収増益でコロナの影響を受けた前期からの伸長が大きく、過去最高を更新ということですね。その中で強調されていたのは広告宣伝費の低下ですね。この辺りは業界内でも圧倒的に低いようでこの辺りも定量的に評価されていました。利用者からしたら、そういう会社の方が安心できますね。

・今期見込みについて

 開校予定の3校の紹介と、業績予想の数値面の説明をなされていました。特に今期に影響を受ける会計基準の影響については丁寧にお話されていたかと思います。概ね3億程度利益を押し下げられている今期なので、来期はこの分は押し上げることになるため、実態としてはそこまで変わらないのですが、やれEPSとか指標面でみるとより価値が高まるように見えるのも確かですからね。この辺りを今期押し下げられている、と説明するのか、来期の増加分となると説明するかで会社によって様々ですが、ステップは前者です。やはり変に煽るみたいな無意識下での癖はなく堅実で実直な印象を受けますね。会社によっては会計基準の影響なので、実態は変わらないにもかかわらず、来期の増益伸長分を期待してください、みたいなトーンで説明があるケースもあり、そういう会社なのかなと映ってしまう部分もありますからね。

 ちょっと全てをメモしているわけではありませんが、そこまで新たな発見があるというより、復習メインで聴けたかなという感じです。

5.現状報告<小中学部>

 遠藤さんが社長の顔から塾長の顔に代わったようにお話をされます。未だにスクールで現役でクラスを持ち生徒を指導していますからね。

・満足度調査

 まず冒頭では満足度調査の件ですね。今回もオリコンとイードの双方で良い結果を生み出す事が出来たという報告です。実はオリコンの方は結構2位との差が縮まってきているので、ちょっとドキドキしています。ただ、遠藤先生も仰っていましたが、別に満足度調査1位を目指して頑張ろう!みたいな士気を持って取り組んでいるわけではないので、この辺りは先生たちが自らやるべき生徒に向き合ってもらう事が一義的には大切で、その成果の一断面としてこういう評価をしてもらえる事がパワーになればいいのですからね。

・生徒数の推移

 昨年から急増したという説明の中で、その要因分析をした結果を4点挙げられていました。
 ① コロナ禍で様子見していた家庭がしびれを切らして動き出した
 ② 昨年のコロナ対応(動画配信、授業料減額等)で地域の信頼を獲得
 ③ 満席スクールの続出により、早期入会の機運の高まり
 ④ 今春の合格実績の高さ

 この辺りは、私もよく理解をしているつもりです。私はこれに加えて、シェア率の高まりという事も作用しているように思います。つまり、周囲にステップ生が増えると、逆にステップ生でない事が焦りみたいなものに出やすくなる傾向もあるのかなと思います。よく商品開発などでも一定の認知や一定のシェアを超えると、デファクト化の流れが急伸していきそのマーケットを取れるみたいな話がありますが、それと似ているのかなと。特に教育だけでなく情報も大事な受験生活において、周囲が部活と両立しながら学び、ステップ生の中で切磋琢磨し、データに基づく自己認識が出来てという環境を手に入れている友達が一定量増してくると、よりその傾向は強まると。
 もちろん、神奈川にはより地域に根差した個人塾も多くあり、ステップだけが凄いというわけではないですが、どうしてもお友達が通っている、周囲が通っているとなると同調圧力が働きやすい環境下では、こういった側面もあるのかなという気がしています。

・合格実績

 合格実績は華々しいですが、合格率にも拘っており、学力向上重点校だけに絞ってみてみても、ステップ生と非ステップ生との間では大きな合格率の差異があります。生徒の選択意思を尊重するという中で、塾の都合を押し付けるのではない中での運営の成果だと思います。
 それから中高一貫校ではトップを取れていない実情についても言及がありました。ここで不合格になっても高校受験でリベンジするとステップに残り、中学受験の経験によりより力を伸ばせる機会も多いというご説明です。トップでない事と、そこで合格できなかった生徒さんのリベンジの話はやや論点がずれているようにも思えたのですが、ここは単純に中学受験に照準を当てるというより、高校受験をメインに添えているから、そもそも志望者の母数も少ないみたいな所で説明してもよいのかなと思いました。実際、その後の説明では、前述の通りリベンジする中では、はば広教養の素地があるために特色試験を得意する等、照準はやはり高校受験に置かれているように感じますしね。中受のタイミングで成果が出る生徒と高校受験で成果が出る生徒とで違いますからね。

・横浜/川崎戦略

 続いては横浜/川崎戦略についてです。ステップではここ数年、いよいよ神奈川の最も人口が多い地域である横浜/川崎を深耕していくという事で、戦略的な取り組みを進めています。定量的なシェア率としてみると、ステップのお膝元である湘南地域では公立中学生の4人に1人がステップ生というシェア率25%の状況である一方、横浜では一部でシェアが拡がっているもののまだ全市では1ケタ台。川崎に至ってはほぼシェアがないという状況です。ここを開拓していく姿勢を明確にしているわけです。
 説明ではいつもの路線図を使ったドミナント構築の狙いをきちんと説明されていました。神奈川県外の方からすると馴染みがないかもしれませんが、それでもわかりやすい説明だと思います。
 また川崎への進出については、公立中学生の数や学校毎の生徒数の分布なども示されながらの説明ですので、改めて今後の開拓余地がとても大きい事にワクワクします。

・動画

 ステップの総会ではいつもおなじみの日常の風景の動画です。新人さんとのコミュニケーション、室長会議、家庭向けガイダンスの様子等もあれば、生徒さんが授業を受けている様子なども流して頂きました。遠藤先生の登壇の様子も流れていました。本気で社長が今でも授業やっているんですよね。更にyoutubeに遠藤さんが出演された件も紹介されていました。学生の採用シーンでは思った以上に反響があったとも仰っていました。

・ザ・ベストサン

 3つのトピックスが語られていました。ここでは、アクアdeかながわとフューチャードリーム、ルワンダ支援の3つが語られていました。ルワンダ支援だけは、恥ずかしながら私もこれまで認知していませんでした。

 最後にボクシングの井上尚弥選手が紹介されていました。同選手はステップのOB生としてボクシングを本格的に始めるまでの中2生までステップに通われていたようです。ステップへ色紙のメッセージまでもらったようでそれも紹介されていました。
 遠藤社長は最後にこの件を「ステップはこれからも翠嵐など難関校の合格者も沢山輩出していくが、世界チャンピオンだって輩出していくんだ」的なご発言をされていました。最後のこの件で会場でも笑いが起こっていましたが、私は改めてこのご発言に、ステップの塾としての奥深さを改めて感じました。
 学習塾といえば合格実績が何より大切。その中でも難関校の数がとても大事。これは今後の募集や塾としての付加価値という面で絶対に揺るがないものですし、多くの塾がやはりここを気にして運営されているわけです(中にはそれが行き過ぎて営業会社になっている塾もあるようですが)。
 しかしステップでは塾の都合で志望校を進言してチャレンジさせたりという愚行はされませんし、別に難関校を目指す人だけを優遇しているわけではありません(実際に特待制度など一切ありませんからね)。キッズの分野で様々な子供の可能性を引き出すような活動をされていて、当然勉強も頑張ってより難関校に合格できるという王道を堅持しつつも、各自の持つペースだったり才能や志向を尊重して、様々な領域に人を輩出していくという姿が見えるのが素晴らしいなと思うのです。
 この世界チャンピンだって輩出する、って発言はもちろんその場の笑いの要素としてお話された部分もあるかもしれませんが、私は笑いつつも結構まじめにそういう部分も大切にされているという事だと受け止めましたし、単なる難関校合格者輩出サービスではなく、人材輩出サービスであり教育の王道をいくような理念がこの中に見えた事がとても嬉しく感じました。

6.現況報告<高校部>

 ここからは高校部を所掌する大黒さんです。
 冒頭では神奈川県内の大手予備校の動向に関しての説明がありました。大手予備校の駿台が藤沢校とあざみ野校を閉鎖するという件です。駿台はこれで神奈川県内は横浜のみとなったことになります。既に代ゼミも神奈川から撤退し、秀英や早稲田も実質後退しているという中で、神奈川県内の情勢に大きな動きが続いているというご説明です。
 そんな中で、ステップの高校部は絶好調で合格実績も去る事ながら、校舎では生徒さんを思うように引き受け出来ない状態が続いているということです。まぁここで投資家目線では、そんな機会損失になるような状況を放置してけしからんっ!とか説教おじさんが出てきそうなものですが(笑)、そういうおじさんは出てこないんですよね。ステップがその需要をみて、会社の利益になりそうだからという部分で拙速に攻勢を強めるという判断など絶対にしないし、品質を落としてしまうリスクを負ってやる事ではないという事を皆さんよく理解されているのだと思います。とはいえ、やはり人材がもっと得られればそういう部分に対応できるわけですから、人材に対する質問は欠かせないわけですけどね。
 いずれにせよ、大手予備校が相次いで撤退、後退していく中で、ステップは相変わらず増勢が続いており、かつ実績も漸増させているという構図は株主としても大変嬉しく、また誇りに思うわけです。
 そして大黒さんの説明は、では大手予備校とステップでは何が違うのかという説明です。まず、授業形式が双方向か単方向という違い。そして教師も面談等を通してより個に寄り添う形式であるか、あるいは受験テクニックに秀でた人気講師でマスへ向けたものであるかという違い。
 この違いを町医者と高度専門医との比較で例えられていました。 また、高校生の置かれている高校生の属性でも影響があった事を示唆されていました。神奈川県の高校生は公立高校生が多く、その多くが学生生活を楽しむ事にも時間を割いているというわけです。私立で学習カリキュラムが詰まっているというより、部活動などもやりたい、みたいな感じですね。そうなると、浪人生も含めた対応となる予備校形式だと物理的にフィットしない、というような事が、ここ数年の生徒離れに繋がっていた可能性ですね。ステップの高校部は基本的に小中学部の延長で、現役の公立高校生に主軸を置いた運営となっているので、むしろ相性がいいというわけですね。
 そんなわけで、実際文武両道でも、難関校への合格が出来るという実績があるステップで、身近な授業を受けたいというニーズが想定以上に高いということですね。そして実績が生まれれば、チューター等の指導力はより高まり、そして口コミになっていくと。理想的なスパイラルですよね。

 生徒数の伸びについては、昨年のコロナ禍での新一年生の募集が軟調であったものの、そこから急回復している点はきちんとフォローがなされていました。また校舎の開校がなかったものの、各校舎の増床拡張を行ってきたことで、席数面積的には実質1校舎分くらいが増えたということでした。この辺りは、1校舎当たりの生徒数等の推移をみているとわかります。充足率だけでなく、母数である席数が増えているという効果ですね。

 そして大学受験の合格発表の瞬間の動画です。これも毎年恒例ですが、毎年みているだけでこちらまで嬉しくなりますね。しかも今まで多分編集あまりされてなかったはずなんですが、BGMや前段の導入部の演出も編集されていてより感動的になっていました。

 最後に面倒見のいい町医者であるステップが先進医療技術を持つ高度専門医のように振る舞っていきたいという趣旨の事を仰っていたかと思います(ちょっとメモと記憶が曖昧でニュアンス違ったかもしれません…)。最近では有名講師の映像配信等でどこでも気軽に授業が受けられる、的なものにシフトしていっている中、今でも対面ライブで個に寄り添うような教育をされていて、それがこのようにゆっくりではありますが、確実にその地域での存在感と実績をつくり、それがじわり広がっていることに嬉しさを感じます。まして、競合会社が相次いで小さな存在になりつつあり、なんならAIとか映像とかがもてはやされている中でも、自社の強みというかなすべきことをきちんとブレずに運営されている事に凄みを感じるわけです。

7.今後の方向性

 全体の話と今後の展望については、龍井さんがお話されます。
 冒頭では川崎深耕の狙い辺りをよりフォーカスあててお話されていました。区別の学校の状況などより細かく定量化したデータを引用しながらお話されてて、ちょっと細かい事は割愛しますが、要するに龍井さんの頭の中では勢力図がこうなるという未来がある程度みえている、自信みたいなものを感じました。
 更に、よく他都道府県に進出しないんですか?という質問を受けるが、こんなに恵まれたマーケットがあるのに敢えて競争が激しかったり、生徒数が厳しい減少傾向にある地域に敢えて進出する必要がないというご説明です。まぁ私はもうこの理解を十分しているつもりなので、当然と思いますし、ものすごくシンプルな理屈なんですが、時折そういう趣旨の疑問を呈されている方がおられるので、まだまだ理解が浸透していないのかなとも思いますし、そういう理解のギャップが長い月日で時価総額という世界でも是正されていくといいなと思います。
 高校部の話も大手予備校を凌駕してきた件に触れられていました。大手予備校は絶対的な存在だったと思うのですが、それを長い年月をかけて地道に努力されて今の形になった事を感慨深いと仰っていました。シンプルなことをブレずに焦らずに、しかし着実に進めてこられたからこその感慨なのだろうなと龍井さんの柔らかい口調の中に強い誇りを感じます。

 そしてここでいきなりまたボクシングの話になりました(笑)。私は詳しくないのですが、パッキャオ選手が紹介されていました。この選手は6階級を制覇した事で有名なのだそうですが、最初は最も軽い階級で制覇をしてから、徐々にウエイトを上げて制覇したということです。当然、そのためには体重を上げるだけでなく、フットワークも維持しないといけないわけで、この辺りのプロセスがステップの軌跡と重なるというわけですね。いや、よくまぁこういう例え話を色々思いつくものですね(笑)。これは誰のアイデアなんでしょうか。龍井さんの趣向の広さなんでしょうかね。いずれにせよ、中学部の軽い所から力をつけ、高校部という所へ高めていった事で、フットワークを失わず、しかし底力を高めてきたわけで、今後は更に高校部での成功を含め階級を制覇していきたいということでした。ボクシングの話にかなり熱が入っていて、途中で会場でも相当笑いに包まれていました。
 最後は更にカシアスグレイという圧倒的とされたソニーリストンを破ったように、神奈川でフットワークを失わず、難関校により適用できるような底力をつけていきたいと。なんかボクシングがお好きなのか、終始熱が入っていましたね。

 キッズの話ですね。こちらは学童という子供を預けるという機運が在宅勤務の高まりにより抑制された面があったということでしたが、その内容の充実はより進み更に自信をつけたように思いました。これも投資家目線でみると、いやいくらマニアックな部分を深めてもお客さん来なければしょうがないでしょう~みたいな連れない事を仰る方もいるかもしれませんが、恐らく全然違う次元の視座で龍井さんは将来を展望されていると思いますし、私もその部分は十分理解しているつもりです。将棋、百人一首、ダンス、理科実験などなど、とにかくコンテンツ力が高いと。実感を伴う形で語られていました。
 こういったコンテンツを磨き、人材を先に見越して教育し、今後新規拠点の進出もチャレンジしていきたいということですね。
 映像を流しながら、紹介もしてくれますが、各領域のプロや専門家を招聘しているわけですが、それがステップのOB生だったり保護者のツテを使って人を集められているのは、人材の大きな意味での還流が起こっていて凄いなと思います。
 そして、この仕事のやりがいとかを語られ、悩み事として目の前にいる子供達をより高める事への意欲と、拠点も拡げて事業化をしていくという狭間で想いを語られていました。継続性の観点で事業化をしなくてはならない中で、一方で目の前の子供の可能性を大いに引き上げてあげられる仕事の面白さ、みたいな所ですね。いや、こうやって中学部も高校部も創り上げてきたんだろうなと思いました。キッズの可能性を感じられているようで、将来的な姿ももう龍井さんの頭の中には描かれているように感じます。

8.質疑応答

 昨年と同様で1人2問という制約が伝えられ質疑です。オンライン同時配信に配慮して、今年から出席番号のみ申し上げる形式へ変更です(昨年、新井さんと立ち話で他社事例もお話したので、早速対応して頂いたのですね)。

 以下で質疑の主なやり取りを記載します。繰り返しになりますが、私の主観に基づき、多分に脚色していますし、記憶も曖昧な箇所もあり記載内容に誤りがある可能性もあります。また、公開に当たり私なりに様々な配慮に基づき記載をしています。ご了承下さい。
※★印は私からの質問です

★Q 不登校問題への対応について
 コロナ禍を通して多くの子供の心身に大きな影響があり、足元でも不登校生徒が増えている。ステップ生においても一定程度影響がある中で、ホームルーム等限られた手段の中で対応されてきたものと思料している。一方、対処しうる事に限界がある事も事実であり、生徒本位を標榜するステップにとって忸怩たる思いがあった事は想像に難くない。今後の不登校や心身の不調をきたす子供達への教育環境、すなわち社会問題ともいえる現状についてどのような危機感を持たれているか。また、社会問題があるからこそ、そこに付加価値が生まれる機会にもなると考えるが、集団指導をメインにするステップが出来る事は限られるかと思うが、そこに新たな付加価値をつけていかれる余地はないか。例えばKステップをより活かす事だったり、今回社外取締役に招聘される仲野さんの個別指導やフリースクール運営の知見を活かすなど、生徒のために出来うる事があれば教えて頂きたい。
A
 不登校はこのコロナ禍で増えており、ステップの生徒でも休会や退会が一定数出ているのは事実としてある。生徒の状況をみていても、コロナ禍前では当たり前だった、学校→部活→塾というライフワークが、今ではメンタル面を含めた不調なのか疲れを見せる生徒も増えている。そんな中、ステップが不登校問題において出来る事はごく限られたものになるのが実情。
 生徒によっては、学校でのしがらみがない分、塾には来やすいという生徒もいれば、逆に学校に行けてないのに塾に行くのは憚られるというスタンスの方もいる。こういった生徒には学校から敢えて離れた拠点をお勧めするなど個別には対応を行っている。
 なお、フリースクールなどの知見は今後のステップに活かせる要素があるかもしれないので、貴重な意見として今後検討してみたい。(遠藤社長)
■考察
 はい、不登校問題については、家庭の問題が大きいため学習塾のスタンスで関われる事には限度があるという事は認知した上で敢えて質問をしました。元々不登校の問題は社会問題化していて、龍井さんのこのコロナ禍での子供達への影響への懸念は耳にしていましたし、実際ごく軽微とはいえ、退会や休会という残念な状況に陥っている方がおられる事実に目を向けておきたいということでした。
 私はステップはキッズ部門にもみえるように人の可能性を引き出したり、個性を大切にできる事に重きを置いていると考えていますし、もちろんそれが合格実績という結果に結びつくために導く必要はあるのですが、もっと事業ドメインは広く付加価値の高いことをされているものと理解しています。そんな中、今回の社外取締役の仲野さんの経歴をみていても、ナカジュクの人を育てる部分、そしてフリースクールなどの知見もある方を招聘し、広い知見を活かしてもらうという趣旨は、通ずるものがあると感じたのです。
 遠藤社長の答弁にもある通り、現時点でステップが出来る事なんて限られるということだと思うのですが、家庭の問題、学校でのいじめの問題、あるいは発育や多様性社会の下での課題など背景は様々ですが、貴重な子供達の可能性が削がれる事に手を差し伸べられる可能性やポテンシャルがステップにはあるのではないかと思っています。ずっと先かもしれませんし、手を差し伸べてあげられることはごく僅かかもしれませんが、難関校に受験する事は今後も爆進されつつ、様々な才能を発揮される可能性を育む場であって欲しいですし、キッズを手掛けているとよりリアリティも感じられる局面がくるのではないかとも考えています。
 いかんせん、今は川崎深耕など、まだなすべきこともあり、こんな大きな空想なんて二の次かもしれませんが、仲野さんが経営メンバーに加わったこともありますし、今社会問題化する中で、他塾はあくまで合格実績に拘る中で、ステップはここに拘りトップを取り続けつつ、人材の更なる育成機関という側面でも活躍してもらいたい、そういう願いを込めた質問です。

★Q 増床対応の進め方について
 既存校舎の充足率が高まる状況が続いており、既存校舎の増床等で対応していく方針を掲げられている。スクールの運営効率を考えると拠点分散を最低限にしながらの増床対応という事で、従来の新規開校とは違う難しさがあるものと認識している。物件探しでは既存のフロアとの分散を抑制させる事を前提とした交渉が必要だし、室長の所掌範囲が広がる事によるマネジメント力や稼働負担面の調整等の人材リソース面への配慮も求められる。不動産というハード面と人材というソフト面の双方において、今後の増床対応の進め方における課題や取り組み方針を教えて欲しい。
A
 増床の一番の課題は教師の数とのバランスが最も重要である。また、需要の見極めも大事で、待ちが生じているスクールを増床しても、案外需要が止まってしまうというような事もある。教師と需要を適切に見極めながら増床の対応を進めていきたい(遠藤社長)。
■考察
 私の質問の仕方が下手くそ過ぎるのですが、今期見込みの策定の中で、新規出校を抑制させて、充足率の高まっている部分への増床対応などへやや力量を置いていくという事が掲げられていました。実際、出校ペースはまだ緩やかに抑えられています。この背景には人材不足ということもありますし、ガバナンス体制の強化という観点で人的ゆとりを持つという背景もあるわけですが、この増床を進めていくという前提で今期の活動が策定されている中で、課題となる点はどこにあるのかという部分でした。そして教師数がきちんと充足できるかは大前提の上で、不動産(賃貸物件)の取得やマネジメント層の適正化などへの課題がないのかという点が気になっていたのです。
 もちろん不動産についてはご縁もので、だから総会でもいい物件あれば紹介してってなるわけですし、ここで明確に対策など説明のしようがないので答える術がないということかもしれませんが、例えば同じビル内でないと運営効率が下がるとか、そもそもビルではない一棟ものだと増床余地が物理的に限られる(結果、少し離れた建物になる)とか、いう課題がないのかといういうハード面の部分。それから、スクールの増設となると、それだけ室長のマネジメント所掌が拡がったりする中で、労務管理を含めた部分で体制面が大丈夫かという点。これまでも増床は適宜進めてこられた中で、今期はよりこの満室多発状況の是正の観点から注力するという中で、こういった課題感はないかなと思ったのです。生徒数の見込みもこういった増床によるキャパ拡張を一定程度織り込んでいると思いますから、投資家としてはこの部分の実現性には関心があるわけです。

Q (要望事項)受験システム等の情報提供の強化
(高校部の保護者)受験のシステムや手続き、各種情報提供を生徒向けにはガイダンス等やって頂いているが、保護者も初めての経験で色々わからない事もあり悩む事も多いが、保護者向けにはあまり情報提供がない状況である。生徒向けにも勉強が忙しい中で、情報にも接しないといけない事もあり、もう少しスクールの方から様々な情報発信や相談に乗ってもらえるような機会があるといいなと思う。
A
 貴重な意見。中学部と比べて高校部は個々に状況も異なるため、スクール側からも発信を心がけていくようにしたい。その上で、各スクールにいるチューターを頼って欲しい。個々の状況に照らして最適な方法を懇切丁寧に対応したいと思う。(大黒取締役)
■考察
 毎年、保護者株主の方からも質問があり、生の声が聴けるのはいいんですよね。ただ、この要望はやや主体的な気がしました。この季節でお子様が受験を迎えられる心境は想像に難くなく不安なのだと思いますし、何でも情報が欲しいというのは理解できるのです。ですが、情報がないから不安だということではなく、例えば、チューターに相談したのだが、こういう部分がわかりづらいとか、こういう対応がなされるとよりいいと思う的な事であれば建設的なのだと思うのですが、不安だということだけですと、大黒さんの答弁にある通り、まずはチューターに相談してください、ってなってあまり議論が深まりませんね。総会の場はお客様相談室ではないわけですからね。
 一方で、こういうレベルの要望がこういう場で出るという事は、多くのご家庭でこういう潜在的な不安が高まっていて、ここに寄り添えていないという実態があるのも事実です。もちろん答弁にもある通り、チューターにまずは相談してもらうという所が大前提にはなるのですが、チューターなり校舎側からもっと不安に寄り添うような能動的な働きかけを求められているという示唆かもしれません。
 個人的には家庭側から積極的に校舎を頼るという行動自体もこの受験を一つの戦いとみれば求められる要素なのではないかと思うのですが、時代も変わり、一定のお膳立てがないと不安で先に進めないというお困りのご家庭もあるんだという前提で寄り添う努力がスクール側に求められるのかもしれません。限られたチューターさんの稼働の中で、能動的に働きかける事に限度がある気もしますし、そもそも不安に寄り添う事って並大抵の覚悟では成り立たないので、難しい所だなとも思います。不安は全てを解消させてあげるものではなく、不安に共感して示唆を与え自律的に解決していってもらうための手助けをするという側面もありますからね。
 なお、これは以前にも言及したのですが、ステップの株主総会には多くの保護者株主が来場され様々なご意見を仰られる光景も恒例行事です。ですから、そういう声を聴くエリアを作ったらどうかなと思っています。それこそチューター等校舎運営のキャリアで役員になられた森本さんでもいいと思いますし、執行役員でもいいと思うのですが、ステップの運営全般に対するご意見を頂く場所を受付の横にでも設置しておき、開会前や休憩時間、あるいは閉会後等にそういう声を聴く場を設けておくともっといろいろ突っ込んだご意見も出てくるのかもしれません。もちろん、ステップでは日常的に家庭からの声を吸い上げて運営に活かされていると思いますけどね。
 総会の質疑の中で、いわゆるお客様相談室に相談された方が良いような事が混在し、これ自体は今後のステップに建設的なものとなる事も多く否定をするわけではないのですが、総会の中で取り上げられる事にも限りがあるとも思います。保護者と株主という双方の側面を持った方だからこそ指摘できる事も多いと思うので、いっそうのこと、スクールの運営等に係るご意見は専用のコーナーを設けておりますので、そちらにお寄せ下さいとアナウンスするとかですね。

Q 川崎深耕の際に競合他社との差別化について
 川崎地域への本格深耕を企図されている点に期待と喜びを抱いている。川崎でのシェアを高めていく上では、川崎地域で存在感のある競合塾もあるわけだが、合格実績等でステップを意識した広告宣伝を強化しているような会社もある中で、どのように他塾と差別化しながらこの戦略を進めていかれるおつもりか。
A
 差別化という意味では特にこれまでやってきたことと変わりはないが、生徒本位で教務力で勝負をするということ。営業活動にリソースを割く事なく、生徒のために、全力で対応していく事が最も大切な差別化要素であると認識している。その上で、この地域でもっともブランド力のある横浜翠嵐高校への合格実績をより積み上げていく事が肝要であると考えている。来春に向けてもこのような実績を作れるよう頑張っていき、この地域で学習塾といえばステップと認知される存在になれるよう開拓していきたい。(遠藤社長)
■考察
 恐らく質問者さんはベテラン株主の方?だと思うのですが、この辺りは承知の上でのご質問だったものと思います。ものすごくシンプルなお話ですが、生徒本位で質のいい授業をすること一点がなすべきことということです。あまりに王道過ぎるのですが、これを全うできる存在自体が稀有な事ということなのでしょうね。

Q 人口減の影響を踏まえた拠点展開の機動性について
 川崎地域への深耕というご説明の中で、定量的に生徒数と想定シェア率での展望をお聞かせ頂いたが、迫りくる人口減は止められず、川崎地域であっても今がピークかもしれないし、あるいは横浜地区でも地区によっては高齢化が進む地域もある。こういったケースを念頭においた時、現状ステップの校舎展開は自前物件と賃貸物件とでまちまちだが、今後の需要の強弱に応じて機動的に対応できるような契約となっているのか。
A
 川崎地域に限ったことではないが、総じてみれば生徒数の人数は浮き沈みするもの。その中で、今はご指摘の通り、多くの地域で人口減少がみられるが、そんな中でもステップの地道な教務力を上げ生徒本位の姿勢を訴求してカバーしていきたい。また不動産関連では様々な契約をしているものの、機動的に対応できるような考慮を行っている。
■考察
 人口減少は大きな事業リスクではあるんですが、一方で既に少子化がどんどん進む県西地域でも生徒数が着実に伸びている点や、開校10年超の校舎でも伸び率が高く推移している辺りからある程度カバーしているし、マクロな人口減少の一方で教育費の動向などにも目を向けるといいのかなと思いました。昭和の時代では子供数は今より多かったですが、一方で今のように受験戦争も今ほど加熱してなかったですし、通塾率も高くなかったかと思います。ですので、マクロとしての人口減少と教育費等との差異をもって定量的に説明差し上げるとより質問者さんの理解が是正されるのかもしれませんね。
 不動産については、正直機動性はないとはお答えにならないでしょうしし、賃貸については、概ね半月前通告というくらいなのではと思います。逆にいつでも解約できるぜ、みたいな契約であればその分交渉力が弱まるので、家賃負担やそもそも不動産屋からの斡旋が低位となってしまう事もあると思うので、バランスではないかなと思います。ステップが不動産取引において特殊な条件で契約をしている(できる)わけではないと思うので、一体どういう趣旨の質問だったのかなと感じました。自己勘定で取得するものと賃貸とするものでの違いや、あるいは川崎深耕の際の不動産対応(従来と違う家賃水準や立地戦略)などは聞いてみたいんですけどね。最近居抜きも多いですし。実は結構同業の撤退とかで一等地情報が出てきて機会になっているとかあるんではないかなと思っています(笑)。

Q (要望事項)ルワンダ支援の認知向上について
 ルワンダ支援の事については、ステップ生の保護者として長年お世話になっている中でも認知していなかった。せっかくこのような取り組みをされているのであれば、もう少し啓蒙活動等を行うことで、家庭でも協力できる事があるかもしれないので、もう少し認知向上を図ったらどうか。
A
 貴重な意見。(遠藤社長)
■考察
 ルワンダの件は私もステップ愛はそれなりに高いと思っているのですが、実は知りませんでした…。ルワンダの支援については、簡単な経緯のご説明もありましたが、どういう意義をもって続けられているのかとかは発信があってもいいのかもしれませんね。縁あって…ということのようですけどね。

Q 学習指導における暗記の是非
 合格実績のチラシをみていると、ちらほら社会科などで暗記を頑張ったという趣旨の生徒の声が掲載されていた。これは学習指導の在り方としては残念に思った。本来社会科は暗記に頼るのではなく、流れを理解して学ぶ教科だと理解しており、指導方針の在り方に疑問を感じたが、指導の在り方について教えて欲しい。
A
 仰る通り、流れを理解にすることが大切だと思っている。そもそもステップで使う指導要領的なハンドブック等でも暗記や覚えるという言葉を忌避している。好きで知っているという感覚で学べる事が大切。(遠藤社長)
■考察
 よく観察された質問ですね。私も生徒の合格の声の内容やトレンドまでは追い切れていません(笑)。ここは結構難しい部分でもあり、確かに社会科は覚える暗記科目としてしまうのはもったいないというのはとてもよくわかりますし、私も流れで理解をするように心掛けていました。実際面白いですしね。一方で、生徒の個性や特性というものもあって、試験対策として最後は詰め込み覚えるという方が手っ取り早いし成果が出るというケースがあるのも現実解ではないかとも思います。本当の秀才であれば歴史まんがを精読して流れをつぶさに捉えていられればテストでも成果が出るのかもしれませんが、流れは理解していてもテストで点数が取れないという生徒さんもいるのも現実であり、最後は力技で暗記に頼らざるえないという実態があるものと思います。
 ステップが上質な学習指導を行うという観点で、単なる暗記科目として詰め込むのではなく、付加価値の高い、また大学受験や大人になっても活きるような教育をという趣旨で、よき授業をして欲しいという願いを込めた質問だと理解しました。あとは生徒の実態や、そもそも生徒の声を書く時の生徒側の立場に立つと、まぁ暗記を頑張ったって書くのが手頃だったということもあるかもしれません(笑)。まぁこの大変な苦労がある受験でステップでの学びとして真っ先に浮かぶのが暗記というのは、その方の学びの機会としてはもったいないなとは思ってしまいますけどね。
 いずれにせよ、ステップが能動的に生徒に受験テクニックとして詰め込み覚えろというような浅い教育を施そうとしていないということはよくわかったのでよかったと思います。

Q AI学習ツールの存在について
 スタディアプリ等の教材やAI学習ツールが様々存在してきている中で、試験問題の作成などにも活用されるという報道も耳にしている。これがどこまで形になるかわからないし、本質ではないと理解しているが、今後のAIツールやedTechとの関わり方について教えて欲しい。
A
 AIの活用ではアタマプラス等を高校部で活用している事例もある。ただこれは遡る学習(つまり理解が遅れてしまったケースのリカバリ等のシーンでしょうかね)に有効である。またAIとは異なるが、コンテンツを配信する等コロナ禍で動画配信系の取り組みも行い、コロナ禍での不安の中でも学習が出来るツールとして有効活用は出来た。ただ、課題もあって、やはりわかるまではもっていけてもできるにはなかなか及ばない。やはり対面の授業というのは欠かせないという所感である。(遠藤社長)
■考察
 ここは、様々な有効ツールがある中でも対面のライブ感のあるものは何物にも勝るという自信を感じましたね。これが差別化要素でありますし、アイデンティティですからね。AIやリモートで効率的に、というのは確かに効率的なのかもしれませんが、その分温度感が低下して効果がそのまま比例するかというとそういうことではないということですね。一見効率が悪いようなことであっても、敢えてそうすることによって、効果はあがるということは実際あるわけですからね。

Q (要望事項)総会の運営について
 株主総会は年に一度の対面の機会であり重要なものである。コロナ禍である中で難しい判断はあろうかと思うが、人数制限が30人というはあまりに少な過ぎると思う。バランスをみながらとなるが、もう少し広い場所を確保する等して工夫をされてはどうか。
A
 貴重な意見。(遠藤社長)
■考察
 これは私も悩まれての判断だと思っていたので、敢えてこれまで口にはしてきませんでしたが、賛成ですね。株主総会なので、やはり参加したいという方が参加できないというのは、いささか疑問がありますよね。一応ライブ配信という考慮があるだけ、まだまともなのですが、質問等が出来ない視聴型ですからね。参加型であればまだいいのですが、コストがかかりすぎます。
 コロナ禍の下で、保護者会等人が集まる機会を作ることで、様々な意見に晒される中で、株主総会の開催にも賛否があるだろう中で、安全サイドに倒しておきたいという運営上の判断もあったものと思います。
 しかし、株主総会は質問者さんの指摘にもある通り、重要な場ですし開催が求められているものです。株主側が自らの判断で不参加とするのは当然それでいいと思うのですが、参加したい意思がある方を拒絶してしまう形になるのはファン株主、そして保護者株主が多い中でマイナスになる事もある気がします。
 ぜひ来年は場所を移してでも、もう少しゆとりのある運営に期待したいですね。なお、その際に、今実現出来ているライブ配信はそのまま残した方がいいと思います。神奈川県で知名度があるステップがより広い範囲でファンを作ったり知ってもらう機会を逸失しないように、地方からでもせめて様子を窺えて共有できるという機会は大切にしたいと思うからです。神奈川県外の株主も増えていく事への期待もありますからね。

Q (要望事項)優待発送時の情報発信について
 クオカード送付時に、例えば川崎地域への進出を企図している等のトピックスの提供や、ルワンダ支援の啓蒙等を同封してアピールしたらよいのではないか。
A
 貴重な意見。(遠藤社長)
■考察
 あれ、クオカードに何かしら報告書的な冊子が入っていた気がするんですが、どうでしたかね。今のデジタル時代でもありますし、資源問題などの観点もあるので、私はWeb掲載型でいいんじゃないかと思いますけどね。

 以上で質疑は終了です。今年は自分の質問も含めて、そこまで尖った質問がありませんでした。昨年はコロナ禍対応に係ること、その前は社長交代という大きなイベントがありましたし、更にその前は業績予想非開示にしてまでの横浜・川崎戦略の始動というそれぞれに話のネタがありましたからね。
 今回はその意味では目立ったトピックスもなく、そこまで深く質問が作り出せなかったです。

9.議案上程・議案に係る質疑応答

 続いて議案の上程と各議案の質疑です。総会の運営として上程の前に質疑がある順番は結構珍しいですが、とても合理的な気がします。そして、この議案上程時にも各議案に対する質疑の時間がとられます。ここは前述の質疑の1人2問とは別枠となります。といっても、議案に直接関連した質問となるため、ここではあまり質問が出ることはありません。
 といいつつ、当然質問は用意してきました(笑)。以下その内容も含めてメモしていきます。こちらの内容も私の主観で脚色していますし、事実誤認している可能性がありますのでご留意ください。

 1号議案の配当。こちらは特に質問がありませんでした。あとの事業説明会に用の質問の中で配当だけでなく、処遇改善をという質問を用意していてここでしてもよかったのですが、あまり進行を止めるのな、と事業説明会に送りました。
 2号議案の定款一部変更。社長を取締役以外からも選任出来るようにする趣旨ですが、遠藤社長が就任してまだ間もない中、かつ現取締役もおられる中で、敢えて取締役外からも選任できるようにするって趣旨がわからず質問しました。

★Q 取締役外からの選任を可能とする趣旨について
 通常、取締役から選任することが実態として多い中で、遠藤社長の就任からまだ浅い中で、このような議案を付議するのはどういう背景、趣旨によるものか補足の説明を頂きたい。
A
 万が一、社長が病や事故などで社長職を継続できなくなった時に備えて、広く執行役員からも選任出来るように改定するもの。今回3号議案によって取締役を減員する事に伴う対処という側面。(遠藤社長)
■考察
 今回、取締役を退任し執行役員となられる梅澤さんや高瀬さんの立場からみても今後の社長職への登用の道を敢えて閉ざすような事にならぬような対処にもみえますし、より広く適任の方を選任出来るようにするという趣旨なのだと受け止めました。特段何か特定の事象を示唆しての対処ということではないようですので、安心いたしました。

 3号議案は取締役選任の件。今回梅澤さんと高瀬さんが退任され執行役員になられること、そして社外取締役に新任の仲野さんが招聘されることが今回の見所だと思います。全体を減員し社外比率をプライムを意識してあげるためという背景も当然あると思いますが、この仲野さんの件は質問しないとなりません。といいつつ、他の方が同趣旨で質問下さったので、私は遠慮しました。

Q 取締役の構成の考え方について
 今回、社内取締役の構成に見直しをかけ、社外取締役を招聘するということで、社外比率等の規定に沿うような対応がメインであるとすると本末転倒ではないかと考えるが、どういう考え方でこのような構成とされたのか考えを聞かせて欲しい。
A
 取締役会と執行役員会については機能を明確に分けていきたいと考えている。現場をグングン引っ張っていくような推進機能は執行役員会で執り行い、取締役会は管理監督機能にフォーカスを当てていきたいと考えている。(龍井会長)
■考察
 一般的な取締役会と執行委員会の機能分担のお話をベースとした答弁だったと思います。もちろんその背景にはプライムの要請する制度への対応という側面もあろうかと思いますが、これだけ人材も育ち、創業者である龍井さんが会社を永続させていくために機能をあるべき形に整備し監督と事業推進の二輪をきちんと確立していくフェーズにより入ってきたという事なのだろうと思います。まだ龍井会長もご健在ですし、今後もこのカリスマは必要なのは揺るぎない一方、遠藤社長やその他のエネルギッシュな人材が台頭してきている中で、会社が前へ進むための必要な事と捉えているのだと思います。質問者さんが答弁後、述べられていましたが、執行役員のように、より現場に近い方が、事業説明会等では表に立ってコミュニケーションを図る工夫をして頂きたいとコメントされていましたが、とてもいいご指摘だと思います。もちろん、これまでもご自身のスクールのお話等積極的にされていましたが、今後もステップが現場主義のボトムアップでより良い姿になっていくプロセスを執行役員の方も交えてコミュニケーションを取らせて頂き、株主としてもよりエンゲージメントを高めていければいいなと感じました。

Q 新任取締役の仲野さんのお考えについて
 今回新任候補となられている仲野さんは、ご自身で塾も創業されるなど業界にも通ずる方だと思うが、教育界でどのような理念を持たれ、あるいはどのようにステップと関わっていかれるおつもりか、豊富などを閉会後でもよいので想いを聞かせて頂きたい。
A
 仲野さんは私塾ネットの理事長を務められている。自身でも塾を創業されているが、地方も含めて様々な地域での教育、塾の在り方の知見を広く持たれている。このような広い視野をステップでも生かして力を添えて頂きたいという期待を持っている。なお、仲野さんには閉会後、ご挨拶を頂く予定である。(龍井会長)
■考察
 仲野さんの知見の広さを活かして欲しいという期待ですが、地方での塾業界の逆風下での状況、あるいは都市圏での競争激化の状況等、地域による様々な環境理解などに基づく助言という観点をお話されていました。ステップは元々、神奈川県に特化しているわけですが、そんな中でも県外の様々な地域での知見にヒントを得ようというわけですね。ここは仲野さんの後の挨拶でもきちんとお考え、特に豊富の弁が楽しみになりますね。

 続いて4号議案と5号議案は監査役と補欠監査役の選任の件です。こちらは特に質問なく決議されました。

10.退任・新任役員の挨拶

 退任役員の挨拶と新任役員の挨拶です。
 梅澤さんはこの総会終了後、8コマ(だったかな)の授業をこなすようで、生徒本位で頑張ります!の声もより説得力が増しました(笑)。また、高瀬さんはいつもそうですが、とてもシンプルに挨拶されていました。私と違って話が短くてわかりやすいですね。上田さんは38年もの間のステップでのキャリアが感慨深いと仰っていました。お疲れ様でした。
 新任の挨拶では仲野さんがまず挨拶されました。本業は塾をやられてて、外からみていてステップの王道を行く姿にはいつも感心させられていたそうです。そしてそんなステップで自分の経験が活かせればという事を仰っていました。私は勝手にもう少しなんか癖の強い方、例えるならば木島さんのようにマイクを握ったら離さない位語り尽すのかなと想像していたので、シンプルなご挨拶に逆にあっさりだなと感じました。いや、くどくど挨拶する場でもないので、今後、仲野さんの考える教育だったり塾だったり、そこでステップに活かしていきたい豊富だったりの想いを共有していただきながら理解を深めたいなと思いました。
 続いて常任監査役に選任された中村さんです。教師職でステップに入社され、その後、教材部やチューター等校舎運営全般、スクールの室長にも関わる総合的なキャリアを積まれてきたようですね。ステップの先生らしくお話されるのが好きという感じが伝わってきました。
 社外監査役の五十里さんです。経歴が藤沢地域の税務署や国税で学習塾等の企業向け税調をされていたキャリアを持つ方で、その経歴を述べられていた時に、なんともいえない笑いのような声があがっていました(笑)。今後の適正なステップの運営の一助を担って頂きたいと期待したいと思います。
 補欠監査役の田中さんは地元藤沢で出版社を営まれているということで、ステップに貢献できる点を光栄に思うとご挨拶されていました。

 以上で株主総会は閉会となりました。オンライン参加もここまでということになります。会場では、この後行われる事業説明会に参加される方も含めて、一旦全員の退出が促され、机などの消毒作業などが行われます。ここで半分強の方が帰宅されたでしょうか。
 退出といっても7Fのエントランス部分に椅子も置かれていてこちらで待つようご案内があります。私はこの時、仲野さんへお声がけさせて頂き、ほんの僅かな時間ではありますが、会話をさせて頂きました。仲野さんの私塾ネットでの人脈や知見はもちろん、集団指導に強みを持つステップにおいて、ぜひ仲野さんの個別指導や通信制高校等を運営されている個の人に寄り添うエッセンスを加えてぜひお力添え頂きたいと申し上げました。
 今回は初対面で、ちょっといきなり距離感を近くコミュニケーションを取った自覚があり反省もしているのですが、限られた機会でもありちょっと攻めてみました(笑)。快く、お話に付き合って下さった仲野さんに感謝です。

11.事業説明会の様子

 10分余りの休憩時間を挟み、再度入場を促されます。コロナ禍前は軽い軽食のご用意もして頂き、立食形式でのコミュニケーションタイムでしたが、コロナ禍になり、対面に座る形でフリーの質疑応答という形で進みます。事業説明会という呼称ではありますが、別に改めて何かの説明をして頂くものでもなく、株主側からおもむろに質問をさせて頂き、経営陣もフリーで話したい方が話すといった感じで進みます。
 ここでは、そのやり取りの様子をメモとして残します。3度目でしつこいようですが、ここに記載する内容は私の主観に基づき脚色しており、事実誤認が介在している可能性を含みます。また、一定のクローズドな場でのやり取りでもありますから、様々な事に配慮した内容としております。その点ご了承下さい。
※★印は私からの質問です。

★Q 従業員の処遇改善について
 
21/9期は業績が大きく上振れて我々株主にも増配で報いて頂いた大変感謝している。一方でこれだけの繁忙に向き合われた社員の皆さんへの処遇を更に改善するという事があってよいのではとも感じた。今後の士気向上や社外に向けてステップで働ける事へのより高い訴求力になると考えるからである。ざっくり売上比の人件比率を2%程度多く拠出したとして、その額面はざっくり2.6億程度となり、一人平均で20万超の水準となり程度感としてもとても良い水準。この拠出があったとしても増益かつ、期初計画の利益は3割程度上方修正出来たし、我々株主へも配当性向を33%程度に高めたと解釈すれば配当拠出にも影響はない。我々が想像する以上に社員の皆さんの頑張りがあっての成果だと思うため、株主だけが配当を多くもらうのではなく、社員の方にもより恩恵がある形で今後の会社の成長をステークホルダーみんなで創っていくというのがいいなと感じている。このような更なる処遇改善の検討はされなかったのか、今後のお考えと合わせてお聞かせ願いたい。
A
 前期の実績は我々の想定を超える生徒さんの増加、そして業績を作り出す事が出来た。こういった面を踏まえて今後も継続的な観点も含めて検討していきたい。来年には賃上げ税制のような話もあり、こういうものも機会だと捉え、ステップで働ける事の価値をより高める方向で着々と準備を進めていき、よきスパイラルを回せるように取り組んでいきたい。
■考察
 昨年はコロナ禍の痛みを分かち合うためにある株主の方が減配したらよかったと仰ったり、今回の私のように株主向けの配当もいいけど従業員への処遇改善を、なんて指摘をするので、経営陣も困惑しているかもしれませんね(笑)。ステップの株主にも様々な方がおられるので、いやもっと配当出してよという方もおられるでしょうが、やはりステップが大事にしている永続性という観点からも処遇を高め、教師という会社にとって最も大切な財産を大切にしてもらいたいという趣旨の指摘のつもりです。
 今後の川崎戦略然り、キッズ然り、全ては優秀な教師という存在があってこそなのです。そしてそのためにはステップで働けることへのエンゲージメントを高めてもらう施策が必要であって、処遇はその大きな一要素であると思うのです。採用活動においても人材を大切にするというひとつの側面としてみえるわけですので、賃上げ税制などの外部からの要請などもありますが、そういうものがあるからやるというのではなく、教師のプロ集団として高い人材力を確保し、またそれによって満足いく処遇を受け、それが生徒のために還元されていくといいなと思いました。
 内容の明言はされていませんでしたが(仮にされていてもここには書けませんが)、様々な施策を検討されているようにも感じ受けたので、今後の施策やそれによってよりよい方向に組織力が高まる事を期待しています!

 ★Q ライバルたる競合会社の存在について
 
神奈川県下で切磋琢磨してきた競合会社があった中で、横浜翠嵐の実績を作ってきたことで神奈川県でのステップの独断場が益々強まったのかなというここ数年の個人的印象であった。今後ライバルとしての競合会社とどのように切磋琢磨していかれるのか。
A
 ステップは、数年スパンという期間で生徒本位に立って教務力をフルに活かして今後も実直に対応していく姿勢で運営をしていきたい。これは競合他社がどういう戦略であっても揺るがないし、私たちのアイデンティティだと思っている。競合会社も様々なやり方で生き残りをかけて戦っているわけで、実際他県での構図も大きく変わってきている。我々ステップもそういう意味では今も独断場などという意識は全くなく、神奈川で鍛えられているし、危機感を常にもって全力で指導に当たっている。今後も自らのアイデンティティを貫き邁進していくつもりである。
■考察
 回答のトーンですっかり安心しました。私は合格実績等からライバルたるライバルの存在感が薄まってきた時に、現場のモチベーションをどうマネジメントしていくのか、みたいな事を念頭に質問したのですが、むしろ今でも競合会社の様々な側面に鍛えられているという事でしたし、それに対して、これまでも、これからも生徒本位であり続ける事がもっとも大切な事であるというブレのなさに凄みを感じました。学習塾として王道を突き進む中で、基本に忠実に地に足のついた経営は強いなと改めて認識しました。

 ★Q ステップのブランディングについて
 
ステップでは常に生徒本位で全力で教務力で勝負を行い、その実績がブランドを作ってきた。長い年月をかけて作り上げてきた信頼は作ろうと思って容易く作れるものではないものであると考えている。このように生徒や保護者に向けてのステップのブランド力は素晴らしいものがあると理解しているが、一方で採用シーンを想定した学生向けあるいはもう少し広く社会向けという意味でコーポレートブランドのようなものを確立する動きがあっても良いのではと考えている。youtubeでの反響などもあったようだが、一方でステップのチャネルには昔の動画がひとつ上がっているだけでもったいないとも思う。胸のうちを話してみたい(教師の姿を紹介する冊子)でも多くの熱き先生たちが紹介されているが、こういうものもブランドを形成する上で使えるのではないかと思っている。今後、コーポレートブランドを意識した取り組みにより、採用や社会からの認知を高める事も重要ではないかと思うが見解を伺いたい。 
A
 ステップには多くの個性と熱意に溢れる教師がいる。こういった人を知ってもらう事が採用活動にも通じることがあると思うので、今回手応えのあったyoutubeの活用なども念頭におきながら、情報発信も工夫をしながら検討を進めていきたい。特にステップは神奈川県内外で全く認知度も変わってくるため、県外の方にも知って頂く機会をもち、採用やIR等多面的にコーポレート認知を上げていく努力を模索していきたい。
■考察
 この部分でも経営メンバーと認識があっていて嬉しかったです。ブランディングの定義みたいなのは結構奥ゆかしい学問があるらしいのですが、まぁそれはともかく、生徒や保護者向けには徹底した信頼を獲得する取り組みを行ってきた一方で、今後は人材獲得に繋がる発信機会を広げていく事が大切ということです。そしてこれまで県外にはあまりリーチできてなかった部分でも手応えもあるようですので、今後の益々の施策に期待したいと思います。
 なお、途中、木島さんがいよいよ口を開いてくれました。印象的だったのは、ステップは教育のインフラになっているのではないかという指摘です。小中高と人材を作り、そこで育った人材が多方面で活躍し、何なら縁あってキッズで専門家として講師で子供達を教えるみたいなサイクルのことですね。もちろんそれだけではありませんが、そういう視座の高い所で教育を捉えた運営そのものが、ブランドでもあるということなのですね。競合会社もそれぞれの会社の中で正義を貫き、切磋琢磨されてきているわけですが、ステップにも長い年月を築き創り上げてきたサイクルのようなものがあって、これは岩盤で強固なものなのだろうなと思いましたし、それが大きな優位性になっているという事を再認識しました。

 Q 人材獲得の進め方について
 
インターン等でステップが地方の大学も含めて出向いて採用活動を行う事も大切であるが、例えばステップの出身者が、大学の友達で教育関係に興味がある人がいればステップの良さを語ってもらい認知を拡げる等、まだまだ新卒採用にも工夫できる余地があると思うが、どのように新卒採用を行っていくか。
A
 確かにステップOB生がステップを普及するという草の根運動的な活動は面白いかもしれない。今後検討してみたいと思う。
■考察
 前でも言及のあったインフラという言葉がここでも意識されます。ステップのOB生が語り、その良さが学生への採用活動はもちろん、新たなご家庭の選択判断に入ってきたりするわけです。生活の様々なシーンでもステップ関連の繋がりが循環型でつながる事、それを神奈川という比較的都市部で実現されている事は素晴らしいですね。

 Q 地方都市の塾経営について
 
地方での人口減少局面では多くの塾が経営に難しさがあるという実態があると認識している。仲野さんは地方の塾関連にも通じているということだが、この地方での人口減少局面の中での塾経営とはどういうものなのか教えて欲しい。
A
 一言でいえば、まだ関東圏はその影響が小さいものと認識しており、ここで事業の主軸を持たれていることは大変恵まれていると思う。地方は人口減少という側面だけでなく、そもそも経済や教育格差の影響もあるのか通塾率も高くないのが実情である。そのためIT活用などが主軸になってきている。という事を考えるとやはり神奈川という立地でやれていることはやはり恵まれているなという心象である。
■考察
 これはステップへの質問というより、もう少し業界全体の理解のために成された質問かなと思いました。神奈川に特化するステップにとっては、直接的な影響はないかもしれませんが、一方で県西地域や横須賀地域等、目まぐるしい人口減が進む地域も今後より明確になってくるでしょうから、そういう点では無視できない話ではあるんですよね。

 Q プライムを選択した背景
 
プライムを選択したのはどういう経緯なのか。今後神奈川県外にも出ていかないといけないという判断もあってのことなのか。
A
 プライムを選択した背景としては、やはり我々が学習塾としての本質を貫き生徒本位で教育を築いていくというスタンスがきちんと社会から評価をされたいという想いが一番。この他、プライムに残ることで採用活動にも優位になるのではないかという想いもある。
■考察
 途中質問者さんがプライムに無理をしていかなくてもいいのではないか、その道筋はみえているのか、というようなやり取りもありました。当然、現時点で形式要件は自己チェックではその後の期間で達成できそうという勘所は得ています。正式な判定は改めて東証が成す事だと思いますが…。
 プライムを無理に目指さなくてもというのは、確かにコストをかけてまで定義が薄い事へフィットさせていく必要がないのではという指摘が一部の会社へ対してある事は認識していますが、答弁にもある通り、社会から評価されたいという至極真っ当な動機があるわけですから、私は会社の見解を支持したいなと思います。
 元々、この件では私も個人的な思いとして、ステップのような王道を貫き地道に努力している姿が評価されないというのは非常に悲しいという趣旨で、ぜひ費用対効果でGO出来るのであれば残存できる方策を取って頂きたいと申し伝えていた立場でもあるので、こういう判断になったのは嬉しいなと思っています。
 なお、質問にあった、県外に出るからというのは全く関係ないと思いますし、そもそも県外には出ないと明言されていますし、ですから答弁にもこの点は触れられていませんでした。

 Q 勤続年数と再雇用について
 
上場して相当な時間が経っている中での勤続年数10年ちょっとというのは長いのか短いのかわからないが、この程度になるものなのか。またライフステージで様々な事情で退職せざるえない方の再雇用などは進めているのか。
A
 各塾の詳細のデータは詳細みていないのでわからない。また再雇用についても育児休暇明けに戻りやすい制度設計やフレキシブルタイムの対応など柔軟化に取り組んでおり、多くの社員がそれを利用して活躍頂いている。
■考察
 勤続年数10年というのは多分そこそこ長いのではないかと思うんですよね。当然ライフステージの変化で一定数退職せねばならない方はおりますからね。質問者さんがいわんとする社員さんが疲弊している事はないのかという趣旨だと思いますけどね。ちなみにざっと見た感じでは以下です。

 スプリックス(7030) 3.9年
 学究社(9769) 8.4年
 京進(4735) 10.6年
 成学社(2179) 6.1年
 早稲田アカデミー(4718) 8.8年
 ステップ(9795) 10.8年

 女性の再雇用という点では、まだそこまでの機会がないということではないでしょうか。ただ、育児休暇明けに復帰がしやすいように社内体制としてポストを用意したり、勤務制度を整理したりと色々工夫をされているようですね。ここは答えもないし、その時々のタイミングが読み切れないものでもあり難しい経営になりますね。

 ★Q 人材のゆとりについて 
 
休暇取得をより取りやすくする体制強化のために人材にゆとりをもった運営を目指されるということで大変良い取り組みであると認識している。一方で、これを現実的になす上で難しさもあると思っている。生徒の立場に立つと、馴染みの先生との信頼関係があってこそという面が強く、休暇期間となった時に違う先生が対応する事では埋まらない部分もあろうかと思う。また先生側の立場に立ってみても、教えることに意義を見出している熱き先生が多いと、その先生が「自分の生徒」をもてなくなるケースでは主体性認識が薄れてモチベーションの低下になる事も考えられる。体制強化の上で必要な手当てであると思うが、一方で生徒、先生双方にとってこのゆとりを作る活動をどのような方向で取り組まれようとされているのか。 
A
 (詳細な内容は割愛しますが)当然指摘のあるような難しさの中でも完璧とまではいえないまでも大きな穴を作らぬような形で補完し合えるような組織体制を構築していかねばならないと考えている。
■考察
 様々な事象を例に丁寧に解説頂きましたが、教師職の命題でもある属人化という問題は付いて回ります。それでも時代は、教師職という聖域のようなものであっても、そういう体制強化は必至ということなのだから、それを如何に構築して安定的な運営が出来るかという事を考えていかねばならないのは当然のことというフォローを木島さんからも頂き、このゆとりの難しさとそこにある覚悟のようなものを見た気がします。ゆとりを持たせれば余剰化が生まれ、投資家目線でみると人件費率がとか粗利率がーとかなるんですが、そういう数値だけをみた判断ではなく、その裏にどういう狙いがあってやっていることなのか、それが誰のために、あるいはどういう課題に向き合っているのかをよく観察して見守る必要がありますね。我々投資家側にもゆとりが必要ですね。

★Q 生徒の多様性への対応
 
キッズ部門で様々な子供の可能性に触れられている中で、ギフテッドのような才能を秘めた子供や、逆に偏りがあってある点で課題に寄り添ってあげなければならないといった子供にも接する機会があると思う。このような多様性ある中で、その多様性が認められないがばかりにつぶれてしまった子供に対して、英才教育で一気に伸ばす、あるいは療育に近い形で課題対処を促すようなエッセンスを仲野さんの知見も加えながら早期に手当することによって、これまで可能性を十分発揮できなかった子供達がステップで育つことによって多様性の下、成果を得るという機会があればいいなと思うが、それを考えるにはまだ時期尚早か。
A
 キッズ部門を見学させてもらって、本当に感動した。一方でフリースクールに通う子供達はその背景も千差万別であまりに個別事情が多いこともあり、すぐにステップの中に何かを取り入れるという事は難しい面はあると思う。一方で、通信制に通うような学ぶ意欲のある子やある特性による課題で満足に居場所を見出せないといった中での対処としては、現状のキッズの運営でも相当拾えているのではないかと思うし、その要素は今後もありうると思う。通う子供達も、寄り添う先生たちもそれぞれが好きな事に熱中できる環境が提供されているという事がとても価値があることなのだと思う。
■考察
 仲野さんの見解ではキッズを見学され、感動したと仰っていたので、私が指摘したような背景があるような子供もそれぞれに居場所を見出す事に繋がっているようにみえる、相当数救っているのではないかという見解は心強く思いました。もはや子供を放課後に預ける「学童」ではないんですよね。もっと事業ドメインは広いんですね。在宅勤務で子供を預けるニーズが下がったから沈むというような表面的な所に意義はないんですね。今はまだその潜在力が広く認知されていませんが、既に子供を通わせている家庭は既にそのポテンシャルに気付いているのではないかなと思います。
 フリーのやり取りの中で、もう「学童」なんて表記自体が語弊があるんじゃないかという趣旨の事も申し伝えました。もちろん、開設時の自治体の届け出などの兼ね合いもあるとは思うので、単純ではないのかもしれませんが、預ける所(ついでにいいコンテンツも提供してくれるところ)というところから、とても子供の情操教育やある分野の専門に触れる機会を提供してくれるところ(ついでに放課後に子供を預かってくれる機能もある)という訴求に代わるとより人気を博すのではないかなと感じました。
 英才教育では受験組がものすごいお金を落とすといわれますし、療育の分野では公費負担は色々社会問題化している部分もありますが、非公費で可能性を拡げてくれる支援としてのサービスはLITALICOなども積極的に関与していてマーケットは広がっています。キッズという小学生低学年の時期からそういう要素も踏まえて高校受験、大学受験まで一気通貫にサポートできる事が出来れば、教育のインフラがより広がり存在意義はより高まるのかなと思います。ちょっと話が大きくなっていますが、期待は高まります。

 この他、質疑の中で以下のようなトピックスも語られていました。
一部を紹介しておきます。

・教師の個性がより生徒や保護者に伝わる機会を積極的にもってもらいたい。教師の個性が伝わると距離感も近くなり生徒との信頼関係はより強固になるし、保護者も自分の子供がどういう環境で頑張っているかよりイメージが具体化する。スクール通信等で発信されているがより広く、認知が拡がる事を期待したい。

・ステップには「ベテラン教師はいない」という思想。その時々で向き合う生徒は初めてだし、全てが一期一会。永遠の新人だと思って取り組んでいるし、いつでも最新の制度を照らして認定制度を敷いている。教える人が好きな人にはとても居心地がいい環境を構築している。ベテランというのは慢心を招く。そして一期一会という気持ちでやっていると経験年数の差なんて全く意味のないものともいえる。

12.まとめ

 今回の総会はここ数年あった大きなトピックスがありませんでした。昨年でいえばコロナ禍の対応、あるいは競合他社とのいざこざ、一昨年でいえば横浜川崎戦略のチャレンジ、このほか労務問題への対処などなどですね。
 今年は目立ったものはなかったのですが、それでもやはり盛り上がりますね。

 特に印象に残っているのは、まずボクシングの話ですね(笑)。龍井さんの熱の入りようが一段ギアが違いましたからね。上手い例えだなと思いましたし、10年後の姿をある意味わかりやすく解説してくれた気がします。
 それから、ステップの存在意義みたいな所ですね、予備校との比較での町医者だけど高度医療が出来る優位性、あるいは、地域の教育側面からのインフラとなっている事への地域事業の深耕。そして地方や個人塾が個々に形成しているような小さなネットワークを都市圏でこれだけの規模で作り上げた事の意味合いですね。
 最後に一期一会の話ですね。ベテラン教師はいないという所です。教師としての経験年数なんて儚いものだし、その時の自分がその時の生徒と向き合うのは最初で最後。そこにどう向き合うか、ワクワクしながら取り組めることの意義。そういうフレッシュ感でこれまで積み上げてきたということなのですね。

 質問の中で、木島さんのマイクショーが今年はやや控えめだったのですが、質問する側がもう少し木島さんにも話を振ればよかったです。まぁバランス的には現実的に今回位がちょうどよいのかもしれませんけどね(笑)。

 それから、質問の内容で株価の事はもちろん、定量的な質問が皆無なんですね。通常株主からは利益成長のフィージビリティ―を窺うような質問が沢山出るのが恒例ですし、業績予想等からのサプライズ要素に繋がるような材料探しに徹するような質問が出ることもあるわけですが、そういう質問はありません。

 投資家向けには有報が今日開示されましたので、改めて有報を精読したいと思います。株価はマーケットの乱高下に翻弄されていますが、企業の価値は何ら毀損していないですから安心して寄り添い続ける事が出来ます。

 これからまた受験シーズンに入り、先生も生徒さんも最後の追い込みに向かっていきます。結果がどう出るかはわかりませんし、その時々で様々でしょうが、全力で生徒のため、頑張って頂いてよき成果を挙げられることを一株主として祈念しております。

 頑張れ、ステップ!

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