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日本管理センター(東1/3276) 株主総会レポート 2020/3/27

 東証1部上場の日本管理センターの株主総会に出席してきました。株主総会の様子について、当記事にてご紹介したいと思います。なお、全文に渡り、私の心証に基づき脚色されており、意図せず誤認している可能性もあり、正確性が担保出来ない点はご容赦頂ければと思います。なお、先日開示された日本管理センターの決算精査は以下の記事にて纏めておりますので、併せてご参照頂ければと思います。

 また、昨年の株主総会のレポートは以下の記事に纏めてあります。

 当記事は同銘柄の売買を推奨するものではありませんが、株主総会の読み物として、また同社の理解に繋がれば幸いです。加えて、お気づきの点などあればぜひツイッターやブログにてコメント頂ければ幸いです。


1.基礎情報

 まずは当日のタイムテーブルです。手元の時計での測定です。
  10:00 開会 (社長 武藤氏)
  10:04 株主数・議決権数の確認(事務局)
      →881人/2,937人(30.0%)
      →142,270個/176,780個(80.5%)
  10:05 監査報告 (監査役 小松氏)
  10:08 事業報告 (PPT+ナレーション)
  10:10 対処すべき課題(社長 武藤氏)
  10:12 議案上程
  10:13 質疑応答
  10:18 議案決議
  10:19 閉会
  ******* 総会終了 *****
  10:22 会社説明会
  10:50 質疑応答
  11:20 終了

 株主総会としては、昨年の31分から大幅に短縮され19分で閉会です。事業報告とか割り切り方が素晴らしく、色々割愛されつつ、必要最低限はきちんと抑えている印象でうまい運営だと思います。あくまで総会はしゃんしゃんで終わらせ、会社説明会で色々コミュニケーション取りましょうという姿勢が今年も鮮明です。残念ながら新型コロナの影響で懇親会が中止となってしまったのは残念です。とはいえ、参加者も20人に満たない小規模となったこともあり、感染症という事情も事情ですから致し方ないかなと思います。
 新型コロナの影響により、受付では非接触の体温測定器で体温測定が行われ、アルコール消毒も全員に実施されていました。また、体調が優れなくなった時のために控室も用意されており、その控室から映像配信で総会の様子を見守れるというような対応をされていました。また、座席も隣の人と近くならぬように係員が案内をされていたりと万全の態勢でした。登壇する役員一同も全員マスクをしたままで運営にあたられていました。

2.質疑応答

※ ★印は私が質問した内容です。

 総会の報告事項や議案上程は超スピードで特に論点はありませんので、この記事では割愛します。また会社説明会におけるプレゼンも、決算説明資料及び動画がUPされており、その内容を更にコンパクトにした印象で、とりわけ新たな観点もありません。時間が限られる中で、いつもの武藤節もやや抑制的で淡々と進んでいく感じでしたかね。なんにしても、オーディエンスも少ないですからね(笑)。というわけ、以下には質疑の内容についてメモを残しておきます。

Q ★
 取締役員数が4人から3人に減員になることになるが、成長基軸を描いていく中で、経営のガバナンス体制や経営判断の多様性の観点を踏まえてどのようのような見解であるか。また退任する武井氏については長年社長の右腕としてご活躍されてきたが、差支えない範囲でその経緯をお話聞かせて欲しい。
A
 取締役は監査等委員会を含めてみると社外取締役が3人となり全6人の半数が社外取締役となること、また業務執行役員としては執行役員を1名増員することで、ガバナンスの強化は十分図れた強固な体制であると認識している。武井氏の件は、個人の一身上の都合によるものであり回答を差し控える。

Q ★
 監査等委員会の3名の選任は心強い体制だと理解しているが、当社はこれからIT活用によるパラダイムシフトを起点とした新たな成長ポテンシャルがあるだろう中で、ITの専門家の見地持った方を選任される事は検討されなかったのか。
A
 IT活用は重要な経営課題であると認識している。取締役には選任していないものの、内部体制としては人材の強化を図っている。具体的な体制や戦略の中身については、この場での回答を差し控えるが、IT活用の必要性を十分認識したうえで体制強化を進めているという事でで理解してもらいたい。

Q
 ふるさぽキットにおいて、トイレ等の部材調達に影響は出ていないのか。現状受注分については資材等の確保は十分なのか。
A
 中国のサプライチェーンに頼っているのはトイレだけでなくエアコンやトイレ等の部材については調達の懸念が今後出てくる可能性があると認識している。このような状況に先んじて別メーカーからの調達ラインを確保するなどして、十分な納入が可能となるよう対策を打っている。エアコンなどは季節性商品であるものの、夏が来る前の現段階から先行して在庫を確保し建築に影響が出ないよう対策をしているところである。なお、現受注分については部材は確保済である。

Q
 月次開示の運用戸数の進捗率が芳しくないようにもみえるが、現状の認識について教えて欲しい。
A
 指摘の件は常にウォッチをしている所であるが、進捗率という見方をした際には、時期的な問題が背景にあると考えている。1-3月時期は入居が進む時期であり、オーナーさんのマインドが強気に出やすい時期であり、例年このような傾向がある。従って、営業トップの立場でみると、現状は当社の計画の通りに進捗しているという感覚である。新型コロナ影響による漠然とした景況感への不安はオーナーサイドに広がっており、日に日に当社への相談引き合いが増えている感覚を持っており、今後も順調に推移していくのではないかと考えている。但し、高齢者のオーナーさんから営業を控えて欲しいという声もごく僅かだが声としてはあり、結果、足元での手元の数値は強弱はニュートラルに推移していると理解して欲しい。
 このような背景から、今後新型コロナ影響が長引く事を鑑みると、上期の間は敢えて休み、下期に一気に攻勢に出るというのが得策ではないかということで、社内の態勢もどうするか検討しているところである。従って下半期偏重になることも想定して今後一番よりカレンダーに基づき対応をしていきたい。

Q ★
 いい生活やセンスオブワンダーなど技術特化した会社さんとの提携を進めているところであるが、あまたあるIT技術を持った会社との提携を進めていく際に、どのような観点で会社を選定しているのか、今後も様々な提携を検討されていくと思うが、その選定のポリシーについて教えて欲しい。
A
 実績のある技術と実績がまだない未知の技術とで扱いが変わる。いい生活のような実績のある基盤を持っている会社については、システム導入実績による効率化余地や使い勝手などを具体的に想定できるため、その想定しうる費用対効果を図った上で、対象会社の財務内容を踏まえて検討を進めていくことになる。一方でセンスオブワンダーのようなまだ未知の技術を持つ会社については、経営陣の姿勢や技術の先進性、またその実現可能性を勘案して決定する。またその勘案する際には外部ブレーンも入れている。

Q ★
 IT活用の成果として説明の中でも音声認識なども含めて効率化余地に成果が出始めているとのことだが、一方でPL上の粗利率などの利益水準には特段の変化がない。今後こういったIT活用の成果が具体的にPLの利益等へ寄与してくると考えればよいのか、あるいはこういった効率化があるから今の水準を維持できていると捉えればよいのかどちらなのか。
A
 PropTechカンパニーとなることを標榜し、今足元でも投資を続けている段階であり、効果はあれどまだ今後PL数値にみえてくるのは時間を要するものである。今後当社の成長のために大変重要な武器になると確信をもって投資をしている。IT投資またそれに纏わる人材の確保、また更に物件ストックを大幅に伸ばせる大きなチャンスが到来している環境下にあると認識しており、そういった投資投下の環境下にあると理解してもらいたい。

Q
 入居率40%程度の物件を借り上げ、この入居率を80%台にまで高めるための方策・秘訣はどういうものなのか。
A
 詳細は企業秘密なのでお話できないが、これまでの実績をみて評価をして頂きたい。現状でも管理戸数を伸ばしていく中でも、期末には91.3%-91.6%程度の入居率を常に確保している。「運用」「値付け」「査定」といったあたりがポイントになってくる。
 仕入れ段階でまずこれまでの実績を踏まえて慎重な値付けを行っているという点が第一にあげられる。また、リーシングについても提携する不動産会社が個々のプランを着実に実行出来ているかのモニタリングを行っている。細かなネット情報の正確性やきめ細かさの対応から、それでも不発の際には更にあらかじめ用意したリーシングプランを売っていき対応している。

Q
 ネット上では入居者からの口コミに悪いものが散見される。入居者からの声に寄り添えていないのではないか。(ネットの口コミを読み上げネチネチと…)
A
 入居者が事実で書かれている部分もあるし、妄想で書かれている部分もあり。もちろん、当社が改めるべきことはあるし、人間がやっていることなので完璧はない。その上で、例えばオーナーさんが対応すべき電球交換などで、オーナーさんが負担されないことで電球が交換できないといった際には、管理会社としての当社だけに責があるとも言い難い面もある。当社が至らない点については十分反省し、満足度を得られるように努めていきたい。
 クレーム対応については、管理は出来て当たり前の世界であるため、不備があったとするとそれだけでクレームの声ばかりが募っていくことになる。そこにフォーカスをしたお声かと思うが、当社がこれまでも高い入居率を維持できている点から、業界の中で、当社の管理が著しく悪いという断片的な情報はあたらないと考える。もちろんクレームがゼロではないため、真摯に受け止めるべきは受け止める。なお、我々はあくまで賃貸オーナーがお客様であると認識している。

Q
 新型コロナ影響が経済に与える影響を鑑みて、不動産業界、当社事業へ与える影響はどういうものがあるか。(質問者の意図がくみ取れず・・・)
A
 新型コロナの影響は未だ収束時期もわからず、専門家もわからないことを我々は知る由もない。足元でみると人の動きが鈍っているので入居も減衰しているが退去も少ないので当社業績という点ではイーブン。また高齢者向け住宅についても、そもそも高齢者の施設運営会社が入居を抑制している関係上、むしろ入居も増えるかもしれない可能性もあるが、現時点では特に影響はニュートラルである。
 今後については、今の状況が1年後も続いているようであれば不動産業界全般は影響は大きくなるものと思うが、ワクチン開発等も進み、1年後にある程度の収束がみえていれば、いずれ引っ越し需要も増えていくだろう点において賃貸業界としては影響はそこまで深刻にはならないと考えている。

Q ★
 滞納保証事業におけるKPI開示を取りやめているかと思うが、現状のビジネス状況は問題ないか。
A
 滞納保証の件数は受託戸数の積み上げに概ね比例する形で積み上がってくるが、既存管理戸数が増えていく中で比例的な増加が抑制的になる点から、この数値を開示する意味合いから判断して開示を取りやめている。基本的に運用戸数が肝になるものであるため、それを推し量る申込戸数を新たに追加してKPI管理することとした。

Q ★
 日銀の追加緩和等で資金供給が進む中で不動産市況への影響、また金利の動向を踏まえたマクロ経済の見立てをどう認識されているか。
A
 新築を手掛ける会社にとっては大きなインパクトがあると思うが、当社にとっては金利上昇の影響はない

3.所感

 新型コロナの厳粛ムードのせいなのかはよくわかりませんが、全般的にお堅い運営でした。当社は元々総会はお堅く、会社説明会ではリラックスでというノリでしたが、会社説明会でもお堅い雰囲気で、説明や答弁も一貫してコンサバだったのが気になりました。とはいえ、事業の状況や一貫した戦略推進など期待感は抱けるものではありました。ただ、武藤社長のプレゼンも確かに普遍的な強さは感じるのですが、熱量というか洗脳力がどこか弱く感じたんですよね。
 新型コロナの影響ははっきりいってよくわからないですし、それはどうでもいいんです。ストック重視へ舵を取り、そこでの収益積み上げのための方策は原点回帰とIT活用という新たな軸をもって臨む点もなんら違和感はありません。従って今後も長期的にみれば堅調な成長が期待できると思います。なのに、よっしゃー株買うぞとはならなかったんですよね。まぁ今の状況ではちょうどよかったのかもしれませんけどね(笑)。
 その一因にちょっとしたギャップがあるように思います。例えば質疑の最後で金利影響について質問したのですが、これまで異例の低金利を示す日銀政策への感謝の弁をプレゼン内で述べられていたことからも一定のフォローだったと思うのですが、金利上昇は影響ないと断言されていたのですが、そんも受け止めが出来ていない自分もいます。あるいは月次KPIの変更についても積み上げが緩慢にみえることから取りやめたとも聞こえると、確かに答弁の通り、申込戸数の開示から積極化しているともいえるのですが、あれどうしたんだろうという答弁だったと思います(こちらは社長の答弁ではなかったのですけどね)。

4.さいごに

 質疑の中でネットのクレームを持ち寄り、マイク係の事務方にその紙を読み上げろといって持論を展開されようとしていた方がおりました。社長から自分で読むようにと制されておりましたが、大変恥ずかしい行為だと感じました。ネットのクレームはその信憑性を双方からみるべきだと思いますし、それをわざわざ会場で読み上げる必要はないわけです。懸念を示すにしても、こういう声があるようですが、という前置きを自らで述べた上で質問をすれば済むわけです。わざわざ紙に印刷して、それを係の方に代読させようという発想に違和感を感じました。もしそのクレームに懸念を抱くのであれば、株を売れば済むことです。相手を批判することは簡単です。そしてそれはそういう筋の方には気持ちのいいものなのかもしれません。ただ、批判や問題提起をするにしても、伝え方や自らの立場をわきまえて謙虚にあるべきだと思います。同じ株主として大変残念に思いました。(もちろん私もそういうネガティブな意見は見聞きしていますが、聞き方、聞く場、伝え方、目的などをきちんとわきまえて今までヒアリングをしてきました)

 一方で嬉しいこともありました。少ない参加者の中に某元取締役の方がおられました。久々の再開に大変嬉しく、お声がけさせて頂きました。開会前と閉会後ほんの少しですがお話をさせて頂いたのですが、相変わらずご活躍されているようで元気そうでした。PLの見立てについても帰り際にアドバイスもいただけました。光栄なことであります。

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