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【読書感想文】腹を割ったら血が出るだけさ

すごく、大きな感情が心の中に渦巻いた。
おもしろかった、とかいい話だった、とかそんな言葉に収められない。

私自身、自分のことを俯瞰的に見てるもう一人の自分がいて、
こうしたら、周りは喜ぶとか、こういった行動をした方がドラマチックとか自分の感情とは別のところで自分が行動している気がすることがあった。
実際、本当に悲しくて泣いたはずなのに、数十分後には涙が引いていて、
他のことに関心が移っていることがあって。
私が流した涙はフィクションだったのか、と自己嫌悪することもよくあった。

大人になるにつれ、その感情と向き合うのはやめていたけど、
今回この作品を読んで、もう一度、もう一人の自分について考えてみた。

「きっと、本心から望んでいることが何かなんて、ずっと分からない気がする。でも、その曖昧の中で生きていこうって、今は思ってる。」

作中で、登場人物の一人が言う言葉だ。

自分が本当に望んでいることかどうかなんて、日常の中で考えることなんてない。
でも、ふと振り返ったときに、あの時の自分の行動は、本当に自分が選択したものなのか、それとも、もう一人の自分が選択したものなのか分からない出来事がいくつもある。

そうした時に、私は自分のことが本当に嫌いになる。

でも、大人になっていくにつれ、いろいろな人と出会い、分かってきたことがある。
結局、本当の自分なんてものは分かるわけがなくて、人に見せている自分もほんの一部分でしかなくて、どれが正しいとか、間違いとかもないんだなぁと。

私がそのときに感じた感情は間違いなく本物で。
例え、打算でした行動であっても、全くの嘘ということではなくて、
自分の中にあったこれまでとは違う一面が顔を出しただけなんだなぁと。

そう考えれるようになって、心が軽くなった。

そして、私と同じように感じている子が小説の中で生きていて、そんな少女を生み出した人が同じ世に生きていることに、救われた気がした。



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