見出し画像

「自由とは何か」きのことたけのこの世界から考えてみた 2019山口 観光編

突然ですが、自由とは何でしょうか。

僕らぐらいの年齢だと、「自由の語り手」のイメージは尾崎豊でした。彼は当時の管理教育体制に反発し、束縛からの自由をテーマにいくつもの曲を作りました。尾崎は年齢を重ね、「学校的なもの」からの自由は手にしましたが、その後は薬物に溺れ命を落とすことになりました。自由とは何だろうと考えさせられます。

日本語の「自由」という言葉を作ったのは福沢諭吉とされています。江戸時代末期の頃になりますが、それまで日本には「自由」という概念が存在しなかったということになります。

「自由」に相当する英語には「Freedom」と「Liberty」の二つの言葉があります。「Freedom」は北ヨーロッパ、「Liberty」はラテン語圏に語源を持つ言葉だそうです。欧州では昔から「自由」という概念について考えることが一般的だったという証左ですね。

唐突な書き出しで申し訳ありません。僕はサッカーファンで、J2柏レイソルの開幕戦を見るため先日、2泊3日で山口に行ってきました。普段から遠征にはよく行く方なのですが、今回は我ながら久々に完璧なアウェイだったなと思い、いくつかのテーマに渡って書いています。前回は「食事」でしたが、今回は「観光」です。

2月23日土曜日を、一日めいっぱい観光に充てました。9時から18時までレンタカーを借り、上図のようなルートで色々と観光地を巡りました。どの場所も良かったのですが、結局一番心に残ったのは何度も訪れたことのある秋吉台でした。その秋吉台で「自由とは何だろう?」ということに思いを巡らせた話です。

秋芳洞・秋吉台は山口県の代表的な観光名所であり、僕も何度か訪れています。ところで、秋芳洞と秋吉台の立ち位置は、お菓子の「きのこの山」と「たけのこの里」のようだなと思います。当然、秋吉台がたけのこです。世の中には秋芳洞の方が好きだという人もいるそうですが、変わった人もいるものですね。世間では政治や宗教の話はタブーとされていますが、きのこよりたけのこです。これだけは絶対に譲れません。

概ねスムーズに一日がかりの旅程も進行し、14時前に秋芳洞に到着しました。秋芳洞は日本最大の鍾乳洞です。名称は「あきよしどう」と呼ぶのが正しく、「しゅうほうどう」と読むのは誤りだそうです。とはいえ長年の習慣もあり、地元では「しゅうほうどう」の読みも普及しているそうです。

この土地は元々、巨大な石灰岩の塊で出来た地層でした。雨水には空気中の二酸化炭素が微妙に溶けるため、わずかに酸となります。その酸が長年にわたって石灰岩を溶かし、少しずつ水路が侵食していった結果、このような巨大な鍾乳洞になったとされています。これだけの鍾乳洞が出来るには数十万年という気の遠くなるような時間がかかるそうです。

日本最大の鍾乳洞だけあって、壮大なスケールを感じます。洞窟というものは、男子の探検心をくすぐります。洞内ではさまざまな形の石筍や奇岩が見られ、異世界感があります。鍾乳石が1㎝成長するのにはおよそ100年という歳月がかかるそうで、その成長した姿を目の前に出来ることはまさに奇跡の目撃者です。

秋芳洞も良いのですが、僕はたけのこ派なので、足早に秋吉台に向かいます。洞窟探検も冒険心を刺激しますが、地上に出るとそこには、広大なフィールドが出現します。

秋吉台も日本最大規模の「カルスト台地」です。草原に岩がたくさん生えているように見える風景ですが、成り立ちとしては逆だそうです。この土地は元々巨大な石灰岩だったのが、長年にわたって雨水で溶かされ地下に巨大な鍾乳洞ができました。逆に、地上で溶けずに残った部分が秋吉台の岩石群です。

それにしても見渡す限りの大草原です。windowsのデスクトップ画面にありそうですね。阿蘇と秋吉台は僕の大好きな風景です。

僕は何度か訪れたことのある場所ですが、このような非日常的な空間に来ると、普段は考えつかないような思考のスイッチが入ります。

小高い丘を見て思いました。「あの丘に登ったらどんな景色が見えるんだろう」と。

とはいえ、この時すでに時間は15時でした。あまりに壮大な景色のため距離感が麻痺しているのですが、あの丘は徒歩だと片道3時間ぐらいかかる距離があります。レンタカーの返却時間は18時です。いやレンタカーは電話で連絡して追加料金を払えば延長することは出来ますが、それでも日は暮れます。これだけの大自然の中で真っ暗になったら、生きて帰れる保証はありません。

人間、どこへでも行けるけど、どこでも行って良いわけではない。

そして急に、「自由とは何だろう?」と考え出しました。

そういえば忘れがちですが、今回僕はサッカーを見るため、わざわざ山口県に来ていたのでした。そのこともすでに自由を体現している感じはありますが、競技としてのサッカーと自由についても考えが及んでしまいました。

サッカーはルールが少ないスポーツです。競技規則には17条しか項目がないですし、見る側からすると「手を使ってはいけない」「相手を危険な目に遭わせてはいけない」「オフサイドポジションでボールを受けたらダメ」というぐらいしか意識することはありません。ピッチのサイズや用具、人数などの項目もありますが、観戦者としては所与のものとして考える人がほとんどでしょう。

そのようにルールが少なく自由なはずのスポーツなのですが、なぜかみな同じようなプレースタイルに収束していきます。例えば、「ゴール前のクロスボールは頭を使ってシュートしなければならない」などというルールはないのですが、ほとんどの選手がヘディングで競っています。

水泳の「自由形」などは、さらに分かりやすいかもしれません。「自由」という言葉の割に、みんな同じようにクロールで泳いでいます。自由とはいえ、「速く泳ぐ」という目標があると、やることは決まってくるのです。サッカーはもう少し複雑ですが、ゲームに対して「勝利」という大目標があり、「得点したい」あるいは「失点したくない」という中目標があると、やはり自由なはずのプレーが収束してきます。

僕は秋吉台という空間で「自由」について考えました。どこへでも行けるけど、どこでも行って良いわけではない。雄大な空間と限られた時間を前にすると、小さい存在である一人の人間は、自由なようでいて完全な自由ではありません。サッカーという競技もまた壮大な世界観があり、それを前にすると一人の選手というちっぽけな存在は、自由なようでいて完全な自由ではないなという考えに至ります。

思考の末に真実めいた事象に行き当たるのも、時には心地よいものです。ただ目の前にある風景から、ここまでの思索にふけることができる、秋吉台は素晴らしい場所です。まさに山口県のたけのこの里です。秋芳洞も大小さまざまな洞窟が450も発見されており、通常入れない洞窟がたくさんあるそうです。広さではなく深さに思いを馳せることが出来そうですが、僕にとってはそちらはきのこです。食べたらちょっとは美味しいですが、固いのよりサクサクしたクッキーの方が普通の味覚なら美味しく感じるはずです。異論は認めません。たけのこ、秋吉台、素晴らしい。明日は柏の開幕戦です。

-----------------------
本編はここまでになります。
この先はおまけ部分で有料記事となります。本編だけで独立した読み物になっていますが、下記ではその他この日回った観光地の角島大橋、元乃隅神社や、前日に関門海峡を歩いて渡った話について紹介します、興味がある方はぜひお読みください。
『OWL magazine』の購読申込をしていただくと、月額700円(税抜)でこの有料記事を含め、『OWL magazine』に掲載されている記事全文がご覧いただけます。ただし、3月以降の申込の場合、申込月以前の有料記事は対象外になりますのでご注意下さい。

著者 
円子文佳(まるこふみよし)

twitter
https://twitter.com/maruko2344

note
https://note.mu/maruko1192

ここから先は

1,810字 / 10画像

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?