見出し画像

クリスマスと佐世保独楽と。

今年もクリスマスが近づいてきましたね!

マルヒロではクリスマスオリジナルのラッピングペーパーが新しく仲間入りしましたよ!

こちらのラッピングペーパーをデザインしたのがマルヒロ社員の荒木里奈。(「マルヒロに入ってどがんね?~前編後編~」にも登場してるので、ぜひご覧あれ~!)

クリスマスツリーをイメージして、モミの葉に長崎・佐賀の民芸品やサンタとマリアがオーナメントとして飾られている和風な絵柄です。

鍋島焼でよく用いられる「宝尽くし」の伝統文様や佐賀の民芸品「カチカチ車」、波佐見のお隣の佐世保で作られている「佐世保独楽」など、佐賀・長崎の文化がたくさん描かれています。

サンタもよく見てみると、普段見かけるサンタとはなんだか少し違う。

里奈さんに聞いてみると「国芳が描いた神楽の面の浮世絵をもとにデザインしました。この絵には願いをかく(かける)という意味合いもあって、願い事をかけるクリスマスにちょうどいいなと思いました」とのこと

大切なひとへのクリスマスプレゼントとしてのみならず、佐賀・長崎旅行のお土産としても喜ばれそうですね!

長崎の伝統工芸品・ケンカ専門、ラッキョウ型の「佐世保独楽」

今回は、絵柄の中の「佐世保独楽」をご紹介~!

波佐見町から車で走ること約40分、佐世保市にある佐世保独楽本舗で作られています。

波佐見周辺をまだ知り尽くしていない荒木と衞藤で佐世保独楽本舗を訪ねてみました!

ここで、突然なのですが目をつぶって「独楽」を想像してみてください!

頭の中にどんな独楽が浮かび上がりましたか?

円錐のかたちをした独楽?それともまんまるの独楽でしょうか?

地域によってイメージする独楽のカタチはさまざま。

見せていただいた資料には見たこともない独楽がほとんどでした。

実は、独楽は世界共通の遊び道具。

独楽の名前は国ごとに違えど、どの国の人でも独楽を「回して遊ぶもの」だと認識できるのです。

南方から中国を通り渡ってきた佐世保独楽の特徴は、そのフォルムとエキゾチックな色彩にあります。まん丸くて、栄養たっぷりのどんぐりみたいな形。実際に手で持ってみると、かなりずっしりなんです!

そして、中国の「陰陽五行説」に影響されているという赤・青(緑)・黄・白(生地の色)・黒の5つの色。世界や宇宙を意味するといいます。

もともと、独楽は遊び道具としてではなく、大人たちの「賭け事としての道具」でした。

「この独楽の勝負で勝ったほうが、この土地を手に入れることができる」といった風に、土地の権利争いのために独楽が使われていたらしく「喧嘩独楽」とも呼ばれています。(ちなみに長崎の凧もケンカ用。いつかご紹介しますね!)

(☝独楽廻しの勝負のときに、真っ二つに割れてしまった独楽。こんなに頑丈そうな形でも、廻っている独楽の中心部にもうひとつの独楽の鉄芯が命中すると割れるそう。)

遊び道具としての独楽から「伝統工芸品」になる転機が訪れたのは、昭和24年のこと。

昭和天皇が佐世保を訪れた際に献上品として佐世保独楽が贈られ、この出来事がきっかけとなり、玩具から伝統工芸品として人々に親しまれるようになりました。

高架下で生まれる「佐世保独楽」

この佐世保独楽を作り続けているのは、佐世保独楽本舗3代目の山本貞右衛門さん。

驚くことに佐世保独楽を作る場所は、世界中を見渡してもこの佐世保独楽本舗のみなんです!

山本さんの奥さんである由貴子さんと娘さんの優子さんとともに、日本で唯一の佐世保独楽の伝統と技術を日々守り続けています。

松浦鉄道が通る高架下にある山本さんの工房。まるで秘密基地のよう。

独楽を作る山本さんのそばには、独楽を作る道具や絵の具などさまざまなものがあり、実際に独楽を作る現場を見せていただきました!

独楽の上に絵の具がすーっとのっていきます。

お土産にとこんなに小さな独楽も作ってくださいました。ここまでのミクロサイズになってくると、色付けのときに目で見えるものなのかな?と疑問に。

「目ではなく、感覚にたよって作っています」と山本さん。

指の感覚やその日の体調など、山本さん自身によって左右される感覚ももちろんある。

でもそれだけじゃないのではないかなと工房の中にいると思うようになりました。

回転する独楽に鮮やかな絵の具がのせられていく様子、独楽の溝を作るときに出る木を削る低い音、ときどき聞こえる電車が頭上を通過する音。

そのとき工房の中にあったすべてが、山本さんの感覚そのものだったんだなと。

佐世保独楽はこの工房だからこそ生まれるものだと、工房を訪れて初めて気づきました。

佐世保独楽のこれから

米海軍佐世保基地が近くにあるため、基地の方が多くお店を訪れるそうです。

由貴子さんのお話の中で興味深かったのは、「基地で働くアメリカ人の家族がクリスマスツリーの一番上にある星の代わりに独楽を飾る」ということ。

(☝美術系の専門学校を卒業した優子さんが独楽の絵付けをされています。特注の独楽を作ることもあるそうで、お伺いしたときはクリスマスのためのサンタと雪だるまの独楽が置いてありました。)

独楽は英訳すると”TOP"。

独楽をクリスマスツリーのてっぺんに飾ることで、出世できるというゲン担ぎの意味が込められているそうです。(ラッキーチャーム=縁起物ってこうして生まれるんですね~!)

時代やそれが使われる文化によって、そのものが持つ意味が変化していく。

佐世保独楽も伝統を守りつつ変化を続ける工芸で、これからどんな風に変化していくのかとても気になります。

と書いたのですが、山本さんご一家、すでに新しい試みに挑戦されています!

常に新しいことも模索し、パワーに満ち溢れている由貴子さん。(写真左)

数年前に染色を習い始めた由貴子さんは、なんと「佐世保独楽を染色」することを思いついたそうです。

染色した独楽がこちら。一度では色が十分に入らないため何度も染色する必要があり、ひとつが完成するまでに一年以上かかることもあるそう。

深みのある色合いがとても美しく、経年変化するとまた違った味わいがでてきそうな。

(☝こちらの独楽は佐世保独楽本舗にて購入することができます)

日本だけではなく、海外の展示会に独楽を持っていくこともあり、今や世界中で多くの人を惹きつけています。

佐世保独楽のこれからに目が離せませんね!佐世保市を訪れる際はぜひお立ち寄りください!

text by:衞藤

【佐世保独楽本舗】
〒857-0879 長崎県佐世保市島地町9-13
TEL : 0956-22-7934 
HP : 佐世保独楽本舗

【番外編~由貴子さんコレクション~】

本や雑誌、昔の美術の教科書にポスターなど、普段から好きなものをたくさん集めている由貴子さん。

取材中にそのコレクションの一部を見せていただきました!

かなり前のものだと思うのですが、HOPEの限定パッケージに佐世保独楽が使われたそう。その時のポスターがまだ残っていました。

由貴子さんは昔のレトロなパッケージを集めるのがお好きなんです。なんと、昔の虫下し薬の袋まで持っていました!

先代の時代の独楽づくりの新聞の切り抜き。当時は独楽に埋もれながら作らなければならないほど独楽の需要が多く、その分、生産量もかなり多かったそう。

懐かしいですね~テレフォンカード!テレフォンカードの表紙に佐世保独楽が使われたときのものをコレクションしてあります。

由貴子さんのコレクションは物珍しいものばかりで、始終興味津々。

以上、番外編でした!


この記事が参加している募集

400年続く焼き物の町、長崎県波佐見町を拠点に、有限会社マルヒロが運営するカルチャーメディアです。 波佐見町のひと・こと・長崎についてなど、マルヒロから広がるつながりを、ときにまじめに、ときにゆるくお伝えしていきます。私たちを取り巻く日常を一緒に歩いてみませんか?