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初めての一人暮らしに向けて

もうすぐ大学院を修了し社会人になる。
東京に生まれ、東京で育ち、東京の大学に入学した。
そして東京勤務が決まった。
仕事はリモートが主体で職場も今の実家から遠くない。
それでも社会人になったら実家を出て一人暮らしをしようと思う。

別に今の暮らしに不満があるわけではない。なんなら実家を離れることは名残惜しい。飼っている犬が起こしにきてくれることも、母親の手料理に文句を言うことも、お気に入りの夕焼けスポットを眺めることも毎日は出来なくなってしまう。

それでも一人暮らしにこだわるのは「#どこでも住めるとしたら」に答えられない私への、せめてもの抵抗である。

そもそも「住む」とはどういうことなのだろう。さっそく広辞苑で「住む」を調べてみた。

す・む【住む・棲む・栖む】
〔自五〕
(「巣」と同源か)生物が巣と定めたところで生活を営む意。
①巣にいる。巣を作って生活する。万葉集11「河千鳥―・む沢の上に立つ霧の」。古今和歌集序「花に鳴く鶯、水に―・むかはづの声を聞けば」
②男が女のもとにかよって夫婦のまじわりをする。伊勢物語「昔陸奥の国にて男、女、―・みけり」。大鏡道隆「故帥中納言惟仲の女に―・み給ひて男一人女一人生ませ給へりし」
③居を定めてそこで生活する。すまう。万葉集15「雨ごもり物もふ時にほととぎすわが―・む里に来鳴きとよもす」。平家物語灌頂「岩に苔むしてさびたる所なりければ、―・ままほしうぞおぼしめす」。「村に―・む」
④そのところに永くとどまる。万葉集15「我妹子は早も来ぬかと待つらむを沖にや―・まむ家づかずして」
◇一般には、「住」を使う。1は、「棲」「栖」を使う。
広辞苑

ふむふむ。「住む」は「巣」と同じ起源をもっているらしい。特定の場所を中心に生活にすればそれは「住む」ということなのだろう。では「心から住みたい場所」とはどのような場所なのか?

鳥や昆虫からしたらエサが豊富で外敵が少ない場所でありそうだが、社会性をもつ人間は少し違っていそうである。「#どこでも住めるとしたら」を考えるときに、そこに住んでいる人がどのような人なのかを気にせずにはいられない。そして巣として生活するだけではなく隣人との社会的交流を通じて関係性を育む過程もまた「住む」という言葉に込められている気がする。

私は「心から住みたい場所」を考えたけれど結局のところ実家と学校で構成された今までの世界で生きていくことしか浮かばなかった。

高速道路から延々と見えた一面の住宅街、飛行機からみえた孤立した一軒家、旅行先の住んでいるか住んでいないか分からないような家々。世界はもっと広いはずなのに、ずっと同じ場所で生まれ育ってきた私には全く想像ができない。そんな自分に辟易する。

「#どこでも住めるとしたら」 私は定住せずに色々な場所を転々としてみようと思う。都心、海沿い、海外、何かを探して色々なところに。気に入ったらもうちょっと居ればいいし、気が向いたら引っ越してみる。

どんなところが「心から住みたい場所」なのだろうか。それが見つかることは幸せなことなのだろうか。もし今住んでいるところが「心から住みたい場所」だと気付いたとき、私はどのように感じるのだろうか。

ただ結局のところ東京に縛られて生活することになりそうである。それ自体が嫌なことではない。私だって目指したいキャリアはあるし目標もある。東京はそれを叶えるにはとっても魅力的なところだ。

しかし経済的な余裕や仕事への忙しさを理由に実家に居座ることは少し違うかなと感じた。「心から住みたい場所」を探してみたい。

私はもうすぐ巣を出て新たな生活を始める。自炊はできるだろうか。近所トラブルになったらどうしよう。寝坊をしても起こしてくれる人はいない。そこは素敵な思い出をつくれるだろうか。初めての「住む」に小学校の入学式前日のような気分を覚える。

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