見出し画像

ソリッド・シェル・ソウル

「何が楽な仕事だ、まったく」

思わずぼやく。
標的は傭兵崩れ。魔術師の類はおらず、数も十人ほど、のはず。

『一杯食わされたか。正直に話すと俺らが断ると思ったんじゃないか』

が、実際の敵は三十人を下らない。さらに男たちが取り囲むのは、小屋のような鉄の箱だ。眼球に投影された解析結果には【軽戦車】とある。

「次から個人の仲介屋は信用するなよ」
『そうする。で、どうする?』
「やめとくと言いたいけど、やる」

敵は戦車を発掘したばかりらしい。今なら十分勝機はある――いや、誰も乗っていない今しかないと言うべきか。なにせ、誰でも容易に動かせてしまうのだ。この古代の遺物というやつは。

『終わったらあの仲介屋を締め上げてやろうぜ』
「お前もだぞ」

通信を切る。戦車を頭一つ見下ろす視界――【装甲殻】あるいは単に【鎧】の視界。乗り込んだ者を巨人へと変える古代の遺物。
仔馬ほどもある鉄槌を肩に構え、【鎧】は力強く跳躍した。

【続く】

#小説 #逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞

1

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?