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マーケティング先進企業のマーケティングスタック(Marketing Stack) - 後編

前回の投稿では、マーケティングスタックの一般的な構成とその中にある"広告費用の自動集計ツール"に関する登場背景とメリット、方法論について記載をさせて頂きました。まだご覧になって無い場合には、そちらを先にご覧頂く事をおすすめします。


マーケティング先進企業のマーケティングステック
1. 広告費用の自動集計ツール (Imp, Click, Costなどの上位ファネル)
2. アトリビューションツール (Install, Revenue, Eventなどの下位ファネル)
3. データの単一化(上位ファネルと下位ファネルの結合)
4. データのビジュアリゼーション(インサイト発見)

今回の投稿は、データの単一化、データのビジュアリゼーションに関する内要です。二つ目のアトリビューションについては、アプリビジネスにおいて今は使って無い企業がいないぐらい広まっている事から内容を省略します。一方、別の企画で、"知っておくべきアトリビューション編"から重要な概念やポイントをまとめさせて頂きます。


では、"データの単一化"について。

 - WHAT?
シンプルに言うと、あらゆるデータを一つに纏める事です。広告に関連するデータは大きく二種類があるとこちらでは定義させて頂きます。一つは媒体社が提供する上位ファネル(Upper Funnel)データと、もう一つはアトリビューション社が提供する下位ファネル(Down Funnel)データです。(実際下位ファネルのデータは自社のサーバーに蓄積されているユーザーの行動に関するデータなども含まれます。)

1) 媒体データ(上位ファネルデータ、Upper Funnel Data)
 ・Impression → Click → Install区間までのデータ。
 ・各キャンペーン毎の広告費用とその費用で発生したImpression, Click, Installなどの指標が日付(主にDailyベース)を基準に集計されているデータ。
 ・配信地域、クリエイティブ、キーワードなどのメタデータを含む。
2) アトリビューションデータ(下位ファネルデータ、Down Funnel Data)
 ・Install → 各種アプリ内のEvent(課金を含む)。
 ・広告IDと行動を起こした時間(秒単位)を基準に積み重ねている生(raw)データ。

この二種類のデータから推測出来るように、広告におけるデータの単一化とは個人的に、この全てのファネルのデータを結び付ける事だと思います。ユーザーの全てのジャーニーを考えると様々な場所やツールに多くのデータ種類が存在しますが、広告領域にファーカスしながら概念をシンプルに抑える為に上位と下位ファネルの二つに制限します。

- WHY?
根本的な背景はやはり時代です。スマートフォンが普及し、多くのアプリビジネスが誕生し、自社のアプリを多く広げたいニーズが増え、広告による収益をあげたいメディアも同時に増え、これを束ねる広告プレイヤーも爆発的に増えました。当時にマーケターが理解しないと行けない情報の量も、それを確認しに行く場所も爆発的に増えた為、"一つに纏める"ニーズが出てきました。従来のエクセルも当然ながら同じニーズを解消する為の手段ですね。海外では、Single Source of Truth(単一の真実のソース)と良く表現します。

1) 細かい粒度のデータ集計は人の手でやる仕事では無い。
一つに纏める事自体は必要とする情報の粒度が大きい場合、手間は掛るものの人の手でできない範囲では無いです。ただし、起きている社会現象を理解する、又は問題を特定する際に、国単位で見るか、都道府県単位で見るか、市・区単位で見るかによって出てくるインサイトが変わるように、各媒体社が提供するデータにも複数の階層が存在しますし、上位ファネルのデータも各媒体社単位で見るか、深い階層の中身まで見るかによって得られるインサイトは変わってきます。例えば、A社の広告トラフィックは、媒体単位ではよく無い様に見えるけど、蓋を開けて見るとその中では良いパフォーマンスを出しているキャンペーンが存在する場合、A社の広告全体を止めるより、効果の良いキャンペーンに予算を集中させながら何故効果が良いのかを理解し、類似なキャンペーンを再現してみるなど、データの粒度によって見方は変わってきます。その為、まずは広告の最適化に影響を及ぶデータ単位の基準を社内で決め、その粒度でのデータを確保する必要があります。ただ、これを人が全てやろうとすると、時間も大幅に掛るし、"毎日 x データの階層 x 利用中の媒体社数"のフォーミュラーから見られるように、蓄積される情報量も半端なく、エクセルファイルやGoogle Sheetなどで利用するレベルではなくなります。

2) 自社のマーケティング投資に対する費用対収益を理解。
下位ファネルだけでもサービスの持続率、特定区間での離脱率、インストールや休眠復帰、主要イベントのボリュームなどパフォーマンスに対する理解が可能です。しかし、前編でも話ましたが、"マーケティング = 投資"である為、投資の費用に対する収益(ROAS, Return On Advertising Spend)は当然ながら理解する必要があります。ただ、上位ファネルは広告媒体社が、下位ファネルはアトリビューション社にデータある為、この両データを繋げ無いと真のROASは把握できないです。同じく、自社サービスに最も重要なイベントまで辿り着くまでに掛る費用(CPA, Cost Per Action)を算出する為にも、ROAS基準、CPA基準で意思決定をする為にもデータの単一化は必要となります。

- HOW?
1) データの定義(階層と項目名)
最も重量なのはデータの定義です。厄介な事に、広告トラフィックを提供する各会社は、それぞれ異なる会社である為、標準的な規格がなく、それぞれ異なる名称で自社データの階層を定義しています。例えば、FacebookではAd Set、GoogleではAd Group、TwitterではLine itemのようにそれぞれ異なる名称で呼ばれている為、"A社のX階層と、B社のY階層って同じ?"と言う判断ができない事です。その為、各媒体社からデータを取得したあとは、自社内で定義したデータ階層の基準に基づき、それぞれのデータを転換する作業も必要です。ここでのオススメは、現在利用中のアトリビューション社の規格に合わせる事です。参考として、各アトリビューション社が提供するデータ階層は下記の様です。(ABC順に整理、あくまで例として参照ください)

Adjust
 Network > Campaign > Adgroup > Creative
AppsFlyer
 Media Source > Campaign > Ad set > Ad
Branch
 Ad Partner > Campaign > Ad Set > Ad
Kochava
 Network > Campaign > (中々情報が探せない。。)
Singular
 Source > Campaign > Sub Campaign > Creative
(* Publisher, Keywordなどの更に細かい粒度は省略)

整理すると、
 ① 利用中のアトリビューション社のデータ階層とデータの項目名(フィール名)を理解
 ② 各媒体社からのデータを上記のデータ階層に整理&データ項目名を変換

2) マッピング(上位ファネルと下位ファネルデータの結合)
データ階層とデータの項目が整理できたら、後は実際二つのデータをマッピングします。ただ、このマッピングもそんなに簡単では無く、その多くの理由は異なるデータを結びつく際に必要なKey的値の不在の為です。
多くの現場で、実際媒体側で配信中のキャンペーン名とアトリビューション側でTracking Linkを生成する際に作成するキャンペーン名をバラバラに使うケースが多くあります。一応、アトリビューション世界において、各媒体社とアトリビューション社間には連携(Integration)を通じて互いの通信規格を決めているのですが、その通信規格の中には、媒体社側のキャンペーン、Ad Setなどに対するIDも存在します。その為、そのIDをベースにマッピングを行う事が一番。ただし、媒体とアトリビューション間の通信規格によっては、IDのやり取りが無い場合もあり、その場合にはキャンペーン名、Ad Set名などで上位ファネルと下位ファネルのデータを結び付ける必要があります。これが可能になる為には、普段から、媒体側で生成したキャンペーン名、Ad Set名などをアトリビューション側でも同じく使える様に、社内で命名ルールを持っておく必要があります。データガバナンス(Data Governence)の一つでもありますが、綺麗にデータを整理・結び付けるには必要な作業です。


最後はデータビジュアリゼーション(Data Visualization)の話です。ここは短くまとめます。

- WHAT?
言葉通りに、データをグラフィカルな要素を使って情報を視覚化する事です。広告業界に良く知られているのは、Tableau, Looker, Datorama, Data Studioなどがあります。

- WHY?
(データ)テーブル上に表示される数値だけでもインサイトを得ることは可能ですが、トレンドやデータ間の関係性、比率、分布などのデータは視覚化された情報が理解しやすいです。Installボリュームと売上の両観点から配信中の媒体、キャンペーンがどうパフォーマンスしているかなどは散布図などを利用すると直感的に状況がわかります。
後は、社内での共有などで毎度エクセルなどを加工しなくても、この様に単一化されたデータをビジュアリゼーションツールの上でテンプレート化して共有する事も可能なので、インサイトだけではなく、その他のマーケターの本業以外の作業も大幅に減らす事も可能です。

- HOW?
各ツールによって使用方法は異なりますが、基本的にはビジュアル化するデータをツールと繋げる形になります。例えば、単一化されたデータがBig Queryなどのクラウドデータストレージにある場合、ビジュアリゼーションツール上で元データを繋げる事が基本となります。

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ここまでとなります。
データを活用する事で、マーケティングのパフォーマンスは必ず改善します。無駄な費用を減らすことも、勝ちパタンのクリエイティブを探しボリュームを拡大する事も、良質の広告トラフィックを提供するパートナーを探し検証する事も、全てがデータありきの話で、データは間違いなくマーケターの武器となります。実際に前編・後編で話た内容は4~5年前からマーケティングの先進企業では既に使用されていて、競合他社との差をつけてきました。ただし、最初に話した様に、これは大手企業や広告予算が大きい企業の専有物ではなく、中小企業やスタートアップにも十分適用される概念です。なので、お金の問題よりは、自社のマーケティング力を底上げしたいか、したく無いかの話かと。

かなり長くなりました。最後までご覧頂きありがとうございます。
次回は"知っておくべきアトリビューション"について簡単にまとめる予定です。次回からはもっとコンパクトで有益な情報が共有出来る様に努力します。

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