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おひとりさまの快適さと誰かといることの大変さを考える『私をくいとめて』

【基本情報】

製作年:2020年
製作国:日本
 配給:日活

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:139/205
 ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】

おひとりさまライフがすっかり板についた黒田みつ子(のん)、31歳。みつ子がひとりで楽しく生きているのには訳がある。脳内に相談役「A」(中村倫也)がいるのだ。

人間関係や身の振り方に迷ったときは、もう一人の自分「A」がいつも正しいアンサーをくれる。「A」といっしょに平和な日常がずっと続くと思っていた、そんなある日、みつ子は取引先の年下の営業マン・多田くん(林遣都)に恋をしてしまう。

きっと多田くんと自分は両思いだと信じて、みつ子は「A」と共に一歩前へ踏み出すことにするが……。

【感想】

これはなかなか現代人に刺さりやすい内容ではないでしょうか(笑)まさにあらすじの通りの展開ですが、おひとりさまの女性がそれを卒業していく過程を面白おかしく描いた映画です。

ただ生きるだけなら、このままひとりでも何不自由なく暮らせるはずなのに、突如恋に落ちたがために状況が一変してしまうんですよ。久しぶりの恋心にドギマギしつつも、何とか多田くんとの距離を縮めたいみつ子なんだけど、ひとつ問題があります。

おひとりさまなら共感してくれそうですが、「めんどくささ」です(笑)ひとりは楽ですよね。何かするときに誰かとスケジュール調整する必要もないですし、思いがけず他人を傷つけることや自分が傷つくこともないし、変に気を遣うこともないし、すべてが自分のやりたいようにできます。みつ子もそんな生活をずっと送ってきました。

でも、誰かといっしょにいるには「努力が必要」になるんです。みつ子もそれを痛感しており、多田くんを好きな気持ちはあるのに、相手との距離の取り方がわからず、「早くここから逃げ出したい!」と泣きわめく始末。

ここはもうトレードオフですよねー。ひとりには究極の楽さはあるけれど、
やることに限界があります。他人といると自由はある程度なくなるけど、できることも増えるし、得られる喜びや感動は大きくなります。よく言う「早く生きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」みたいなやつでしょうか。

もちろん、どちらがいいというのはないですが、みつ子はその究極の選択を迫られることになるのがこの映画の見どころかと。そんなみつ子に共感できる人は決して少なくないと思っています。特に、今の時代のように嗜好や生き方が多様化しているならなおさら。

また、それ以外でも、彼女が日頃溜めている鬱憤が時として噴出してしまうのも面白いんですよ。仕事での出来事や友達の結婚など、事あるごとに昔を思い出しては、「実はあのときこう思ってたんだよね」というのを、もうひとりの自分「A」と対話していくんですが、ここもやっぱり共感できるところがありました。

これは、まさに現代のおひとりさまの心境をうまく描いた作品と言えるんですが、途中ちょっと中だるみしちゃうところが気になります。「ひとりでいるか、ふたりを取るか」という葛藤がもっとあってもいいと思ったんですど、「おひとりさま」からの脱却を扱っている割にはそういう部分が少ないんですよ。原作は読んでいないので、どう扱われているのかわからないですが。

あと、「A」との対話って、演出上、声は中村倫也が演じているんですけど、結局「A」って自分なので、自問自答になるわけですよね。なのに、実際に声に出して会話しているので、これがまわりにも聞こえる独り言なのか、それとも心の声をあえて口にしているだけで、まわりには聞こえないものなのかがわかりませんでした。

ただ、みつ子が「A」に頼りすぎているのは大丈夫かなとも思いましたが。もう一人の自分に依存するって、ちょっとメンタルおかしいんじゃいかって。

個人的には、超絶ナルシストのカーター(若林拓也)をもっと見たかったですね。ああいう振り切ったキャラ好きなので、彼の恋愛観などを掘り下げてみたかったです(笑)


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