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極限状態における人質と犯人の交流を描いた『ストックホルム・ケース』

【基本情報】

 原題:Stockholm
製作年:2018年
製作国:カナダ、スウェーデン合作
 配給:トランスフォーマー

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:141/182
 ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】

何をやっても上手くいかない悪党のラース(イーサン・ホーク)は、自由の国アメリカに逃れるために、アメリカ人風を装いストックホルムの銀行強盗を実行する。

彼は幼い娘を持つビアンカ(ノオミ・ラパス)を含む3人を人質に取った上に、犯罪仲間であるグンナー(マーク・ストロング)を刑務所から釈放させることを求め、警察もそれを許可する。

続いてラースは人質と交換に金と逃走車を要求し、グンナーと共に逃走する計画だったが、警察は彼らを銀行の中に封じ込める作戦に打って出る。現場には報道陣が押し寄せ、事件は長期戦となっていく。

すると、犯人と人質の関係だったラースとビアンカたちの間に、不思議な共感が芽生え始める。

【感想】

「ストックホルム症候群」という言葉をご存知でしょうか。手っ取り早くウィキディアで調べてしまいましたが、「誘拐事件や監禁事件などの犯罪被害者についての臨床において、被害者が生存戦略として犯人との間に心理的なつながりを築くこと」をいうそうです。まあ、簡単に言ってしまえば、極限状態において被害者と犯人が仲良くなってしまうことを指すのですが、この言葉が生まれた「ノルマルム広場強盗事件」をベースに作られたのが本作です。

強盗事件なので、シリアスな話かなと思ったんですが、実際はちょっとコメディチックなところもある映画でした。人質と犯人に妙な連帯感が生まれるという心理変化を描いているので内容としても非常に興味深いのですが、とにかく主人公が優しいのが面白いポイントです。

発砲はするものの、ケガ人はなく、人質はほとんど解放し、残された人に対しても気遣いができる、いいおじさんとして描かれているんですよ。そんな彼だからこそ、残された人質たちもだんだん彼を恐れることも憎むこともしなくなり、どちらかと言えば対応の遅い政府や警察に不満を募らせているのが滑稽でした。

さらに、ビアンカに関して言えば、夫と子供がいる身でありながらも、ラースと深い仲になってしまうことに驚きます。そうなってしまう理由は、正直わかりません。心理学を学んだわけでもないですし。ただ、好きになる要素がわからないんですよね。ラースが特別カッコいいわけでもなければ、優しいと言っても彼女自身が何かに困っていてそれを助けたわけでもないんですから。むしろ、この緊迫状況を作り出したのはラース本人ですよ?もしかしたら、気が張っている中で、実は彼は悪い人ではないっていうのがわかってきて、何か心に隙が生まれたのではないのかなーって考えますけど。

普段の生活でも、怖いと思っていた人がちょっと優しかったりすると、メチャクチャいい人に見えることがありますが、それに似たような感覚ですかね?

もちろん、生存戦略の一環で犯人に迎合することで生存確率を上げるという心理状態も当初はあったとは思いますが、そういった事情もありつつ、上記のようなことがあると、通常時では想像もつかない心理変化があるのかもしれないですね。

吊り橋効果じゃないですけど、犯罪に巻き込まれているドキドキ感を恋愛感情のドキドキと勘違いしてしまうっていうのもあるのかなって僕は思ったりもしましたが(笑)

ただ、「結局、ラースは何のためにここまでやるんだっけ?」っていう疑問が出てきてしまうのがちょっと気になるところでした。友人であるグンナーを解放する目的もあったのかもしれませんが、途中からそんな感じも薄れて来るし、動機の部分がわかりづらかったなー。

ちなみに、ストックホルム症候群に似たものでリマ症候群というものもあるんですが、前者は被害者が犯人に好意を抱くのに対し、後者は犯人が被害者に行為を抱くことを言うようです。


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