人気YouTuberへと駆け上がる若者たちの野心が生んだ狂気と悲劇『メインストリーム』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:176/209
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★☆☆☆
【以下の要素が気になれば観てもいいかも】
ヒューマンドラマ
SNS
YouTuber
インフルエンサー
【あらすじ】
夢と野心が交錯する街LA。20代のフランキー(マヤ・ホーク)は映像作品をYouTubeにアップしながら、さびれたコメディバーで生計を立てる日々に嫌気がさしていた。
ある日、天才的な話術の持ち主・リンク(アンドリュー・ガーフィールド)と出会い、そのカリスマ性に魅了されたフランキーは、男友達で作家志望のジェイク(ナット・ウルフ)を巻き込んで、本格的に動画制作をスタートする。
自らを「ノーワン・スペシャル(ただの一般人)」と名乗り、破天荒でシニカルなリンクの言動を追った動画は、かつてない再生数と「いいね」を記録。リンクは瞬く間に人気YouTuberとなり、3人はSNS界のスターダムを駆け上がってゆく。
刺激的な日々と、誰もが羨む名声を得た喜びも束の間、いつしか「いいね!」の媚薬は、リンクの人格を蝕んでいた。ノーワン・スペシャル自身が猛毒と化し、やがて世界中のネットユーザーからの強烈な批判を浴びるとき、野心は狂気となって暴走し、決して起きてはならない衝撃の展開を迎える―。
【感想】
邦画ではそんなに観ませんが、ハリウッド映画ではSNS社会の闇を描いた作品がちょいちょいあります。『NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム』(2016)や『ザ・サークル』(2017)、『スプリー』(2020)など。この映画もそれらと同様ではあるんですが、SNSそのものよりは、人気YouTuberとなった主人公に焦点を当てていました。今回の感想はネタバレを含みますので、知りたくない方はここでページをそっ閉じしてください。。。
<とても現代的な内容なので受け入れやすい>
この映画は、何者でもなかったリンク(ややこしいけど人名です)たちがアップした動画がバズり、一気に影響力を増してしまったがゆえの狂気と悲劇がポイント。SNS全盛期の今をよく映した内容なので、共感できるというか「ありそうだなー」っていう身近な印象があります。ただ、「まあそうなるよね」っていう展開なので、目新しさというか、意外性っていうのはあんまりないかもしれません。
<有名になったとき、人はどうなるのか>
アメリカは視聴者の母数が日本とは違うので、バズッたときの影響力も桁違いです。リンクたちは勢いに乗って、有名なインフルエンサーとのコラボや、ゲーム番組(テレビゲームじゃなくてバラエティ的なゲーム)の制作などもこなしていきます。
ただ、そこが悲劇の始まりでもあるんですね。圧倒的な有名人になってしまったがゆえに、世間との感覚もズレていったんだと思います。自分のやることはすべて正しい。自分のやることはすべて面白い。そういう思考になってしまったんじゃないでしょうか。そこで一人の女性イザベラ(アレクサ・デミー)を巻き込んだ、とある事件が起きてしまうんですよ。簡単に言ってしまうと、彼女のインスタのプロフィール写真において、加工前の写真を番組で公開してしまったんですよね。顔にアザがあって。それを「このボタンを押して、あなたのフォロワーに伝えよう!本当のあなたを見せよう!」とリンクが詰め寄ります。彼女は拒否しようとするんですが、リンクも引き下がらない。明らかに様子がおかしいので、スタッフも異変に感づいてはいるものの、すぐに止めることができません。バズることを優先して、人としての正しい行いができなくなっているんですよ。これはもう超絶有名になった人にしかわからないと思いますが、、、実際そういうもんなんでしょうか。結局、半ば強制的にボタンは押されますが、これがその後に大きな悲劇につながるとは、誰も予想していなかったんですよね。
<是非の判断はあなた次第>※ネタバレあり
リンクたちは、その行いの是非を問うテレビ番組なんかにも呼ばれたりするんですよ。そこには現実世界のインフルエンサーたちも出演しているんですが、なんとローラもいるっていう。セリフはなかったですけど、まさかこんなところで目にするとは思いませんでした(笑)結局、リンクはその番組もメチャクチャにしてとんずらしちゃいます。
そして悲しいことに、先の出来事を苦にイザベラは自ら命を絶ってしまうんです。そのことでリンクは視聴者から激しいバッシングを受けることに。そこで彼はスペシャルライブを開いて、「おまえらも共犯じゃないのか」と主張した後で視聴者に問いかけます。「俺に賛成か反対か」と。でも、映画では結論を見せません。何が正しくて何が悪いのか、その判断は誰かに与えられるものではない、そんなメッセージを感じました。
確かに、悲劇のきっかけはリンクかもしれません。でも、そこに至る経緯については、他の人の影響や関与もないとも言えませんからね。イザベラのアザについて悪く言う人がいたとしたら、その人にも責任はありそうです。そこがSNS社会の怖いところですけど。だからこそ、あえて映画の中で「リンクが悪い、悪くない」の二択だけで終わらせるようなことにはしなかったんだと思います。
<題材はいいのだけど、イマイチハマれなかった理由>
先ほども書きましたが、全体的にSNSあるあるだなーという映画なので、今の時代にマッチした内容だとは思います。とはいえ、個人的な感覚からすると、リンクの動画の何がバズる要因だったのかはちょっとわかりませんでした。だからですかね、あんまり彼が有名になってるっていう実感がわかず、作品に入り込めなかった可能性はあります。リンクの動画、、、うーん、、、バカっぽいことをしていると言えばしていますが、、、まあこれは日本のYouTutberを観ても面白さがわからないことがあるので、国は関係ないかもしれません。ただ、強いて言えば、リンクは話術に長けているというか、「それっぽい」ことを堂々と言っているので、そこが人々に洗脳じゃないですけど、受け入れられたのかなって思います。そして、あのやかましいぐらいのエフェクトの数々。日本とはテイストが違いますが、アメリカではああいうのがウケるんですかね。
あと、リンクには裏設定があるんですよ。「実は彼は、、、」っていう。それがあまり作品に活かされていなかったんですよね。ただのやべぇやつだったってのはわかったんですが。ここがもう少し作品に組み込まれていれば、もっと楽しめたかもしれません。
<その他>
ちなみに、この映画の監督は、あのフランシス・フォード・コッポラの孫、ジア・コッポラ。で、リンクの代理人であるマークを演じたジェイソン・シュワルツマンは、コッポラの甥。そして、フランキーを演じたマヤ・ホークは、イーサン・ホークとユマ・サーマンの娘。なかなかのサラブレッドの集まりです(笑)
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