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SNS社会を舞台にした、優しい嘘から始まるミュージカル『ディア・エヴァン・ハンセン』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:95/253
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★★☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【要素】

ミュージカル
ヒューマンドラマ
社交不安障害
嘘から始まる物語

【元になった出来事や原作・過去作など】

・舞台
 『ディア・エヴァン・ハンセン』(2015)

【あらすじ】

エヴァン・ハンセン(ベン・プラット)は社交不安障害があり、学校に友達もなく、家族にも心を開けずにいた。

ある日彼は、その障害のセラピーの一環で、自分宛てに書いた“Dear Evan Hansen(親愛なるエヴァン・ハンセンへ)”から始まる手紙を、同級生のコナー(コルトン・ライアン)に持ち去られてしまう。それは、誰にも見られたくないエヴァンの「心の声」が書かれた手紙。

後日、校長から呼び出されたエヴァンは、コナーが自ら命を絶った事を知らされる。悲しみに暮れるコナーの両親は、彼が持っていた〈手紙〉を見つけ、息子とエヴァンが親友だったと思い込む。彼らをこれ以上苦しめたくないエヴァンは、思わず話を合わせてしまう。そして、促されるままに語った“ありもしないコナーとの思い出”は、両親に留まらず周囲の心を打ち勇気を与え、SNSを通じて世界中に広がっていく。

思いがけず人気者になったエヴァンは戸惑いながらも充実した学校生活を送るが、〈思いやりでついた嘘〉は彼の人生を大きく動かし、やがて事態は思いもよらぬ方向に進む—。

【感想】

ミュージカル映画は好きなので、そのジャンルってだけで期待しちゃうんですが、これはちょっと期待値を上げすぎたかなという印象でした(笑)楽曲を『ラ・ラ・ランド』や『グレイテスト・ショーマン』を手がけた人がやるってんで。

<"静"的なミュージカルという印象>

素晴らしい歌の数々が登場する本作。確かにミュージカル映画ではあるんですが、一般的に想像されるような、例えばそこらへんの通行人を巻き込んでの群舞ってのはありません。基本はソロ、たまにデュエットで、セリフにリズムを乗せたものが多かったですね。いわゆる、「ザ・歌」みたいなのとか大合唱的なものは、メインテーマの“You Will Be Found”ぐらいです。なので、派手に踊り狂うのを期待していくと、ちょっと物足りなさを感じてしまうかもしれません。そういうのを"動"的なミュージカルとするならば、こちらは"静"的とでも言いましょうか。

<"嘘"ベースの展開をどう見るか>

ストーリー自体はよかったです。SNS社会を舞台に、エヴァンが自殺した同級生の両親のために、「彼とは親友でした!」と嘘をつき、証拠まで捏造したものの、あることがきっかけで思いもよらぬ展開になっていくというもの。特に、エヴァンの名スピーチの拡散と共に、メインテーマが流れる演出は多くの人にとっては感動的に映るかもしれませんね。

が、しかし。

結局は嘘ですよ。なので、「よくもまあこんなペラペラとそれっぽいこと言えるな」と、僕はやや白々しい目で見てしまいました(笑)エヴァン自身も社交不安障害で、人とうまくコミュニケーションが取れない人なので、そこで感じる孤独などを通して、自殺したコナーに対する深い同情があったかもしれません。そして、「人はひとりじゃない」ということも、女手ひとつで育ててくれた母親や、密かに想いを寄せるゾーイ(ケイトリン・デバー)の存在から感じていたのかもしれません。ですが、結局すべてのベースは嘘ですからね、エヴァンのコナーに関する言動はほぼ共感できませんでした。これが本当に親友とかだったら泣いてたと思いますけど、、、人によって意見が分かれそうですね。。。

<後半からの展開の方が面白いかも>

この映画、エヴァンの嘘もそうですが、そもそもコナーの両親にも問題はあります。エヴァンの話をろくに聞かずに、自分たちの都合のいいように捉えて、話をどんどん進めてしまいますから。コナー自身もまた嫌なところがある人物でね。そんな人と親友ですなんて嘘、僕はつきたくもないですけど(笑)

そんなこんなで、エヴァンのスピーチが拡散されたことで、時の人となった彼ですが、思わぬ悲劇が彼を襲います。その悲劇をどうやって挽回していくのかってのが後半の見どころなんですけど、個人的にはこちらの方が興味深く観れました。前半はどんなに感動的でも、ベースが嘘なのでピンときませんでしたが、後半はその嘘ときちんと向き合う話なので、こっちの方が面白いかなって思います。

<その他>

この映画、元は舞台がオリジナルなんですけど、そこでエヴァン役を演じたのが、今回の映画でも同役を務めているベン・プラットです。舞台と映画で同じ人が主人公をやるっていうのも、なかなかめずらしいですよね。


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