見出し画像

誰もが"あの頃"を思い出す『mid90s ミッドナインティーズ』

【基本情報】

 原題:Mid90s
製作年:2018年
製作国:アメリカ
 配給:トランスフォーマー

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:30/120
 ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★★☆
    音楽:★★★★☆

【あらすじ】

1990年代半ばのロサンゼルス。13歳のスティーヴィー(サニー・スリッチ)は兄のイアン(ルーカス・ヘッジズ)、母のダブニー(キャサリン・ウォーターストン)と暮らしている。

小柄なスティーヴィーは力の強い兄にいじめられても全く歯が立たず、いつかは見返してやりたいと願っていた。

そんなある日、スティーヴィーは街のスケートボード・ショップに出入りする少年たちに興味を持つ。彼らは驚くほど自由でかっこよく、憧れのような気持ちでそのグループに近づく。

次第に彼らとも打ち解けるようになり、これまで体験したことのなかった世界へ足を踏み入れるスティーヴィー。彼の大人への階段を上る日々が始まる。

【感想】

俳優のジョナ・ヒルが初監督・脚本を手掛けた映画です。彼が少年時代を過ごした1990年代半ばのロサンゼルスが舞台になっていて、彼の半自伝的な要素も入っているようで。

1990年代半ばで13歳という時点で、この主人公の少年は僕とほぼ同じ年だということがわかります(現に監督は1983年生まれと1歳違いでした)。

さすがはA24というべきだろうか、この映画、僕と年齢が近い人や90年代にノスタルジーを感じる人なら楽しめるかもしれません。なぜなら、僕とは生まれた国も違うし育っている環境も全然違うのに、とてつもなく懐かしい気持ちにさせてくれるからです。共通項は年齢ぐらいしかないのに、どうしてこうも懐かしく感じるんでしょうか。90年代という時代がそう思わせるのか、それとも13歳という多感な年齢がそう思わせるのかはわかりません。でも、男なら共感できるポイントは大いにありました。

小・中学生の頃って、ちょっと年上のお兄さんお姉さんに憧れたり構って欲しいときってありませんでしたか?僕は第一子かつ長男だったので家庭ではそれはかないませんでしたし、学校が遠かったので地元にそういう人もいませんでした。

でも、学校の上級生だったり、教育実習生だったり、親戚のお兄さんだったり、親ほど歳が離れていない年上の人といっしょに遊びたい欲があったのは覚えています。

作中のスティーヴィーは、地元のちょっとヤンチャなスケボーグループに入るのですが、そこで大人の階段を上り始めるんですよね。初めてのお酒、初めてのタバコ、初めてのクスリ、初めての女性。まだあどけなさの残るスティーヴィーが少しずつ大人の味を占めていく過程は、褒められたものではないにせよ微笑ましく感じます。

僕のまわりにはそういうグループに該当するものはなかったし、悪そうなヤツらも大体友達にはなれなかったので、日本に同様の環境があるかはわかりませんが、多分当時だと渋谷とか池袋にたむろしていた人たちが近しい存在なんじゃないかなーって思ってます(笑)

そして、この映画は設定が90年代半ばということもあって、当時の雰囲気と感覚を再現するため全編16mmフィルムで撮影されたというこだわりも見どころろです。映像のアスペクト比や色調などもレトロに仕上がっているのが
さらに懐かしさを後押ししてくれるんですよ!これがまたいい味出してて。逆に「90年代ってこんなに昔のことだっけ?」って思ったりもしますが(笑)

また、この映画では使用されている音楽もいいんですよねー。ニルヴァーナ、ピクシーズ、モリッシーなど当時のヒット曲が目白押し!僕は洋楽を聴かないので、正直どれも聴いたことがなかったのですが、そんな僕でも映画の世界観とマッチしているというのは感覚でわかりました。

まあ、僕の年代で13歳ぐらいで洋楽を聴きまくっていた人なんてそうはいないかもしれませんが、当時大人だった人とかはけっこう知っている曲も多いかもしれません。

あと、今作はメインの俳優さんの演技が素晴らしくて。主人公のスティーヴィーを演じたサニー・スリッチは15歳にしてプロのスケートボーダーかつ俳優。彼の整いすぎた顔立ちとピーター・オトゥールを思わせる目の青さはまさに美少年と呼ぶにふさわしいビジュアルでしたし、子供の表情とちょっとずつ大人になっていく表情を演じ切るのには圧倒されます。

兄役を演じたルーカス・ヘッジズもこういう青春系の映画ではよく見かけますが、毎回いい演技を見せてくれますね(今回は弟をいじめる嫌な兄でしたけど)。ティモシー・シャラメと並んで、悩めるティーンを演じさせたら右に出るものはいないんじゃないかってぐらい、いつも印象に残る役と演技で観客を魅了してくれます。

本作は大きな目的とかドラマチックな展開とか、そういうのがあるわけではないんですが、90年代半ばを生きた多感な年頃の少年の青春物語は妙に心地よかったです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?