外為法改正は日本株式市場に影響を与えるか

 もしかしたら日本の株式市場に影響を与えるかもしれない、2019年11月の外為法改正について書きます。やや専門的です。

 この改正法案が出た10月頃、私は、外国人投資家が日本株に投資しにくくなることを懸念し、興味を持ちはじました。外国人投資家がいなくなったら日本の株式市場は危機に瀕するからです。ところが、よく調べると安全保障等の難しい問題を内包していました。政府の意図も、外国人投資家のフラストレーションも、どちらもうまく伝わっていないように見受けられます。
 自分の頭の整理に調べたことですが、法改正の背景・経緯を株式市場関係者や企業の経営・IRに携わる人たちにも知ってほしい、と記事を書いています。政治的な意図はありませんが、理解が間違っている場合にはコメントいただけると助かります。

改正外為法って何?

 2019年11月22日、外国人が日本企業へ出資する際の規制を強化する改正外為法が国会で成立しました。それに先立ち5月に行われた改正告示と合わせてポイントは三つ。
 ①対象業種の拡大:対象となるのは安全保障上重要な業種の上場企業。従来の半導体・コンピュータ製造業や組込みソフトウエア企業などに加えて、新たに電力業、通信業やインターネット利用サポート業などが含まれます。(業種告示等の改正告示 2019年5月)
 ②出資基準の厳格化:外国企業が、上記上場会社の株式を1%以上取得する場合は、事前に届出を求め、政府が審査を行います。従来、届出・審査は10%以上の株式保有が対象であったのが1%以上となるため、大幅なしきい値引き下げとなります。
 ③事前届出免除制度:以下に記す経緯を経て、一定の基準を満たす外国投資家には、上記の事前届出を免除する制度を設けました。機関投資家の取引のほとんどが事前免除を受けることができると言われています。

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IR(インベスター・リレーションズ)の経験などに基づいたテーマで記事を書いています。幅広い層のビジネスパーソンにも読んでもらえたら嬉しく思います!