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ソーシャルメディアのデータから考える社会全体で分断が起きる理由とは?

第二回は情報マネジメントの観点から公共でのデータ利活用で重要なポイントを考えていきたいと思います。

コロナを一つのきっかけに社会全体が大きく変わろうとしています。その中で、私たちの声を代弁するデータはより重要な役割を担っていくと考えられます。

今回もブリティッシュコロンビア大学で教鞭をとっているビクトリア准教授に公共のデータプライバシーと透明性の話から、民主的なデータ管理の仕組みまでお伺いしました。

ブリティッシュコロンビア大学准教授 Blockchain@UBS 代表     Victoria Lemieux氏                          ブリティッシュコロンビア大学の情報学部に加え、ピーター・ウォール先端研究所などでの研究も行う。専門は文書館学。国連や世界銀行などの国際機関を含め数多くのコンサルティングに携わる。現在はブロックチェーン研究所を大学内で立ち上げ複数のプロジェクト運営を行う。

Kohei: そういった動きがあるんですね。プライバシーに対する懸念は日本でも問題視されていて、600万ダウンロード(インタビュー時点)まで増えていますが、アクティブに利用してもらうという懸念点は残っています。

感染した際の政府への申告は個人に委ねられているので、前提として国民と信頼関係を築くのは非常に重要ですね。今後、国を越えて移動が解禁される事になればよりプライバシーに配慮した設計で利用が広がっている状態が其々の国に対する信頼を可視化するポイントになると思います。

では次の質問に移りたいと思います。日本でもシビックテックと呼ばれるボランタリーで活動する人たちがコロナ期にテクノロジーを活用して問題を解決するような取り組みが生まれてきています。

こういった活動はカナダでも誕生してきているのでしょうか?もし気になったケースなどあれば教えて頂けると嬉しいです。

Vicki: 私が知っているプロジェクトではマギル大学トロント大学が取り組んでいるものが参考になるかと思います。トロント大学の取り組みは個人が主体になるような設計で取り組まれているものです。

ブリティッシュコロンビア大学ではソーシャルグッドとブロックチェーンをテーマにしたハッカソンを毎年開催しています。

社会的に有望なテーマでの技術活用を目的としていて、今年はコロナ対策をテーマに取り組みを実施しています。参加した学生の方のアイデアでは防具のサプライチェーン管理や仕事を失った人向けの支払いサービスや仕事探しの仕組みなどステイホームでも利用できる仕組みが題材になることが多かったですね。

多くの学生がコロナの影響を受けていて自分達の困りごとから支払いサービスのアイデアなどは生まれました。接触感染に関するアイデアはなかったのですが、職場復帰の証明書やそのデザインなどはCCI(COVID Credential Initiative)を中心にいくつか立ち上がっていると思います。

CCI(COVID Credential Initiative)の取り組みは参加者での新しいネットワーク作りなどでも重要だと思うので、個人が中心となって自分のデータを扱うことができる環境づくりなどは若い世代を中心に広がっていくのではないかと思ってます。

大学としてもそういった場への参加はサポートしていけるといいと思っています。大学では他にも様々な取り組みを実施していて、私が教えている生徒の中からはPersonal Health Walletの開発がスタートしています。

COVID-19対策として始めたプロジェクトアイデアではないのですが、、結果的に利用につながっていくのではないかと考えています。

前回の記事でもお伝えしたように、ブリティッシュコロンビア地域ではまだ接触感染のアプリが始まっていないので、政府が取り組み始める段階で活用できる可能性があります。

これからの情報マネジメントに求められるものとは?

Kohei: それはすごく良いですね。では、最後の質問に移りたいと思います。これから情報のマネジメントや管理はより重要になっていくと考えられます。

トロントでアルファベット傘下のSidewalk Labsのスマートシティプロジェクトが途中で停止したケースも出てきており、公共サービスでのデータ利活用を考える際にデータの透明性やアカウンタビリティの問題はより深刻になっていくと考えられます。

これまでのご経験から情報の透明性に関して、特に公のサービスを考える上でどういった事が求められていくのでしょうか?

Vicki: 面白いテーマですね。企業視点でのプライバシーと透明性の問題は非常に重要ですね。先日開催したCovid-19のセミナーでも出てきましたが、利用者との信頼関係を築いていく上に置いては透明性の問題は非常に重要な要素になると思っています。アプリで言えば設計の話やアプリを通じたデータの流れ、データの保存や利用など様々な視点でクリアにしていく必要があります。

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データを取り扱う際はより透明性が求められる流れになっていくと思っています。それは、データ利活用が進むかどうかはデータ利用者とデータ提供性の間での信頼関係に大きく依存していくようになるからです。

情報に関して積極的に開示していく姿勢はユーザーが安心して利用するために欠かせないポイントになります。

一方でユーザーサイドはプライバシーを自身で守るために個人のデータ記録を持っておくことは重要になっていくと思います。

民主主義の下で個人が自分のデータを自由に扱えるということは、アカウンタビリティの観点からも重要になると考えられます。

もし私たちが知らないところで、私たちにとって脅威となるような情報の取り扱いが行われていたとすれば、それは自由の観点から非常に恐ろしいことです。データ利用者と提供者の信頼関係を前提とした社会への変化から、アプリの透明性を確保することは利用を促進する上でも重要になっていくと思います。

民主化した社会を適切分析するにはどうすれば良いのか?

カナダでは私たち住民は幸運なことに自由が認められていて、自由に意見を持ったり話したりする事ができます。こういった環境は突然壊れてしまうこともあるので、人間の権利として常に考えて理解する事が必要だと考えています。答えになっていれば幸いです。

私が取り組んでいるプロジェクト研究でもこういった考えをもとに取り組んでいて、これまでにTwitterのデータを分析して取り組んだ事もあります。ビジュアル分析と呼ばれる方法を活用して取り組んだもので、ブロックチェーン技術に取り組む前にデータを分析して人の認知を見える化しようという試みです。人の行動パターンはデータを活用する事で急激に見える化するようになりました。

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データを目に見える形のビジュアルに落とし込む事で、わかりやすいデザイン化する事ができるようになる分析方法です。私たちが関わったのは2014年のブラジルワールドカップの際に数多くのプロテストが街中で活動していた背景に関する調査です。当時ブラジルではワールドカップに多額の予算が費やされた事に対して国民の間で大きな不満が募っていました。.

政府に対しても疑問の声が上がり、街中ではワールドカップに対する抗議の活動が発生するようになりました。興味深い点としては単なる政治家への批判だけでなく、それぞれの国民が置かれている生活状況に対しての不満などが背景に隠れていたという点です。私たちはこのプロジェクトを“We Feel Fine.” というプロジェクト名で取り組んでいました。

プロジェクトの調査手法は「ブラジルの人たちが政府に対してどのくらい信頼しているのかを定量的に調査していく」というもので、調査を進めていくといくつか興味深い結果が見えてきました。

反対する人たちの声を追っていくとワールドカップや移動に関するものが数多く寄せられていました。加えて、お金の流れが当時のジルマ・ルセフ大統領によって意図的に利用されているという点が不満として上がっていました。

調査の中では ”公正” というテーマを重要視する声が多く、「国やワールドカップを開催するためにお金を使う事に反対しているのではなく、どのような便益を持ってお金を投資しているのかが全く説明されていない点」に不満があるという事が見えてきました。これは平等の観点から医療などの公的なサービスではなく、特定の人たちやグループに対して公金が利用されることへの懸念だと考えられます。

特定の少数の事業者にだけ便益がある事で、「国民全体での平等の概念」から逸脱しているのではないかという事を非常に懸念していて、この国民に対する平等性から問題が発生しているのだと調査を通じて明確になってきました。

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この調査を現在の私たちカナダの状況に照らし合わせてみると、コロナの影響下の中で前線で仕事に従事している方、ご高齢のケアに当たっている方などは移民が多く低収入の方が比較的多くを占めます。

民族的にマイノリティの人たちもそうですが、経済的な影響は平等ではなく全体に波及していくためブラジルで起きたワールドカップへの反対運動はTwitterのデータから現在の状況では世界どの地域でも起きうる運動ではないかと考えています。

国民の間では平等に一定の犠牲を覚悟はしていても、それによって得られる利益が一部の人たちに向けたものであるとすれば、それは受け入れられたものではありません。そういった環境下で人々は利益を得る事ができる(特権)人たちに対して反発するようになります。

次第に"こういった環境は受け入れられない” と人々は反発するようになります。社会全体で公の利益を前提に受け入れる考え方が必要で、特定の人たちではなく、社会全体の利益になるような考え方に取り組んでいく事がこれからより重要になっていくと思います。

Kohei: まさにそうだと思います。実際に起きている事実から判断して、国民の声をもとに意思決定していく必要がありますね。ソーシャルメディアは国民の声を反映する一つの手段だと思うので、政治の方向性を考える上でも重要視する必要があると思います。

実際にカナダでは国民との対話において、ソーシャルメディアなどのデータを通じて意見交換などをする機会はあるのでしょうか?政治の意思決定や考え方に疑問を持っている声もあるのではないかと思います。

Vicki: そうですね。カナダでは公共のコンサルティングという形で国民から声を集めて、どのようなことを求めているのか発信できる機会を設けています。最近、そういった取り組みに関しての発表もあり、特に普段の活動に戻る際に求められることですね。

私が取り組んでいたプロジェクトはブラジルだったので少し状況は異なります。現在はブロックチェーン分野に取り組んでいるので少し離れてしまっていますが、今では徐々に当たり前の環境作りへと変化してきていると思います。

実際に政府内でどのような取り組みが行われているかは現時点ではわかりませんが。新しい技術を活用した取り組みは色々と始まってきていると思います。

街角の調査を反映する事もデータを計測する際には必要だと思いますし、Twitterなどのオンライン上のデータを活用して多面的に理解していく事も必要だと思います。その際に気をつけることは、前提としてTwitter上では敵対的なやり取りなども含まれるため定期的に情報の交換を行う必要はあると思います。その際にセンチメント分析と呼ばれるやり方を選択しますが、その場合は一時的な感情などを汲み取るには上手く向いていませんね。

センチメント分析を行う際は抽出した結果をそのまま受け取り誤って理解してしまう事があります。(声が大きい人が反映されやすいなど) iSchool同僚がセンチメント分析と計算言語学分野の研究をしていますが、最近ではセンチメント分析を更に拡張した方法もあるみたいですね。

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この分野は様々な視点を下にした分析も必要だと思っています。政府が実際に利用する場合にも国民との対話を前提として活用する事が大切だと思います。

Kohei: 興味深い研究ですね。ありがとうございます。では最後に、皆さんに向けてメッセージを頂いても宜しいでしょうか?

最後に皆さんへのメッセージ

Vicki: これが正しいと言う事ではないのですが、カナダのような民主国家含めて世界的に起きている現在のコロナの問題に対して、世界全体で民主的な解決策を掲示していくことは大切ではないかと思っています。これは世界中どこに住んでいても起きていることで、地政学的にも連携しながら進めていく事が大事だと思っています。

CCIのような新しいコラボレーションが生まれたり、ウェビナーを通じて世界中の人たちがつながって解決策に取り組むような動きが始まっているのは、新しい動きだと思います。パンデミックの状況を通じて、人と人とのつながりが新たに再構築されると言うのは非常に大切な事ですね。

より良い未来のためにメンタルの課題や様々な事も浮き彫りになってきたと思います。そういった意味で、個人の自由に関する権利や持続可能性のある社会に対する意識はより高まっていくと考えています。環境破壊の問題は人々のこれまでの活動から来ていますし、コロナの状況を通じてデジタルと世界をつなぐ一つのきっかけにもなっている気がします。

危機的状況な状況ではありつつも、一人一人が自分で選択して未来を切り開いていける環境づくりを現在の状況から少しづつ進めていければいいと考えています。

Kohei: 素晴らしいメッセージをありがとうございました。是非、色々と連携して行きながら新しい未来を作って行けたらと思っています。Vickiさんありがとうございました。.

Vicki: 貴重な機会をありがとうございました。

※一部法的な解釈を紹介していますが、個人の意見として書いているため法的なアドバイス、助言ではありません。

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