見出し画像

イスラエルで進む新しいプライバシー技術開発トレンドとは?

分散型の技術は次のコンピューターサイエンス分野で注目されている領域の一つです。

今回はセキュリティ、暗号分野で数多くの書物を発行されてきたDolev教授に分散型コンピューティングの新しい取り組みに関して聞いていきたいと思います。

全二回で、第一回はコンピューターサイエンス学部の創設と分散コンピューティングの新しい取り組みに関して紹介したいと思います。

ネゲヴ・ベン=グリオン大学コンピューターサイエンス学部主任教授   Shlomi Dolev氏                            ネゲヴ・ベン=グリオン大学ではコンピューターサイエンス学部の立ち上げから教授として教壇に立つ。主にセキュリティや暗号、分散コンピューティング分野で研究結果を発表し、MITプレスなどにも寄稿。イスラエル教育省のコンピューターサイエンス委員長、過去にはイスラエル大学間計算センター代表も務めたセキュリティ専門家。

Kohei: プライバシートークにお越し頂きありがとうございます。今回お話しできて光栄ですShlomiさん。

では早速プロフィールをご紹介したいと思います。ネゲヴ・ベン=グリオン大学で自然科学部門のコンピューターサイエンス学部の主任教授、学部の創設者として活動されていて、それ以外にイスラエル大学間計算センターの代表も過去に勤められています。現在はイスラエル教育省のコンピューター科学委員会の代表も勤められています。

コンピューターサイエンス、分散コンピューティング、ネットワーク、暗号、セキュリティ、光コンピューティング、脳科学、量子コンピューティング、ナノテクノロジー、機外学習分野で300以上の書物をこれまで発表しています。MITプレスから出版した、自己安定化(Self-stabilization)に関する書籍が有名です。Shlomiさん本日は宜しくお願い致します。

コンピューターサイエンス学部の創設の背景

早速本題に移っていきたいと思うのですが、まずは大学でのキャリアに関してお伺いできればと思います。現在ネゲヴ・ベン=グリオン大学のコンピューターサイエンス学部で教鞭を取られていると思うのですが、プロフィールを拝見すると2000年の設立時から関わられていると拝見しました。

新しい学部の創設やその背景がすごく気になるのですが、コンピューターサイエンス学部を設立した理由をお伺いしても宜しいでしょうか?

Shlomi: わかりました。当時イスラエルではコンピューターサイエンス自体が全く新しいものだったので、学ぶ機会というものが非常に少なかったということが大きな理由です。コンピューターサイエンス自体は、電子エンジニアリング、もしくは数学から入ってきた新しい概念という位置付けでした。私が大学に入った当時は数学とコンピューターサイエンスが一つ部門で運営されていました。

コンピューターサイエンスで教鞭をとるようになってから、数学とコンピューターサイエンスを分けて学ぶ事が大学にとって重要だと考えてそれぞれ独立した部門として運営することにしました。その際に私は初代のコンピューターサイエンスの代表として承認されたというのが設立の背景になります。

スクリーンショット 0002-10-17 14.56.37

これは非常に大きなステップで初期は13人ほどしかメンバーがいなかったのですが、今では40人以上が参加して、大学全体の10%の生徒がコンピューターサイエンスを学び最先端の研究に触れています。イスラエルで開発する新技術の中でもコンピューターサイエンスは非常に重要な分野になるので学術的にも重要な役割を担っています。

そんな役割を私が担う事ができたのは非常にありがたい事ですし、非常に幸運でした。私自身はテクニオン - イスラエル工科大学出身でTexas A&Mでの博士を通してネゲヴ・ベン=グリオン大学に移りこういった機会に恵まれたことは非常にありがたいことです。

実際の選考過程などはいろいろあるのですが、話すと少し長くなるので別のインタビューテーマの話をできればと思います。

Kohei: なるほど。それは非常に興味深いお話しですね。コンピューターサイエンス部門で世界的にも評価されていると拝見しています。2015年のランキングでは世界でみても評価が高かったと思うのですが?

Shlomi: そうですね。世界のトップ150にコンピューターサイエンス部門では表彰され、2000年に始まった若い学部ですが世界で評価されている点は非常に喜ばしいことですね。

Kohei: ありがとうございます。大学の授業ではブロックチェーンやセキュリティに関する講義を行なっていると伺っていて、授業だけでなく新しいプロジェクトにも取り組まれているそうなのですが、それはどういった内容のプロジェクトなのですか?

大学でのブロックチェーン教育とプログラム

Shlomi: コンピューターサイエンス自体がまだまだ新しい分野なので、新しい考え方が次々生まれてきています。機械学習だけ見ても様々な取り組みが開発されたり、センサーネットワークやビッグデータなど今までになかったものも誕生してきています。

そういった背景もありコンピューターサイエンスは非常にエキサイティングな分野なのですが、現在は分散コンピューティングの研究に力を入れていて、セキュリティの観点からもビザンチン将軍問題などに対応できる手法として期待しています。

(動画:ビザンチン将軍問題とは)

実際、完璧な暗号化を行う際には暗号学の理論上、例えばビザンチン合意の問題を解決する必要があります。これはドイツテレコムやIBM、EMCなどの企業と大学が連携して取り組む中でセキュリティを考える上での重要な要素としてわかってきたことですね。

この問題に取り組むことは新しい知識が必要ですし、最先端の考え方も必要になります。もちろん、ブロックチェーンはその中でも次の未来を作っていく分野だと思います。インターネットからウェブが生まれたように、ブロックチェーンを中心にしたウェブ3.0の考え方が次の主流になっていくと思っています。

耐量子のネットワークを広げる取り組み

ブロックチェーンは分散ネットワークを実現する上でコアに必要な技術要素を持っているので、耐量子と実利用を検討していく必要があると思います。そのため昨年はこういった分野にずっと取り組んでいました。

私たちのアプローチ方法としては耐量子ブロックチェーンバイデザインと呼ばれるシステムを考案し取り組んでいます。これは、ブロックチェーンや耐量子技術自体を開発するのではなく、初期の開発段階からシステムのデザインを行い、実装されたシステムが耐量子性を担保できているような設計を実現するというものです。

スクリーンショット 0002-10-17 15.16.42

このアイデアを思いついた理由としては、LANで毎秒17万トランザクション、WANで2万トランザクションを実現するブロックチェーンを提供する事ができるようになったからです。VISAの6万〜6万5000の毎秒トランザクションと比較してもかなり処理ができるようになっています。

この技術に関しては既に準備が出てきる状態で、量子コンピューターの開発が進み鍵交換アルゴリズムのDH法RSA方式(暗号)が突破されたとしても全ての署名は分離したログで生成されたトランザクションは全員に共有されるようになります。

スクリーンショット 0002-10-17 15.24.57

医療データや金融データなどは機密情報も含まれるためプライベートで管理する必要があり、これまでは7年間は開発にかかると想定されていましたが現在準備できるよう取り組んでいます。

NIST(アメリカ国立標準技術研究所)でも耐量子要素をブロックチェーン技術に組み込むよう研究を行っています。

私たちが開発しているシステムはSodsBCと呼ばれ、金融や医療、IoTを始めとした様々な分野への応用を考えています。新しい分野への投資は今後も行っていきたいと思います。

Kohei: なるほど。秒間当たりのトランザクションはこれまでの課題の一つではあったので、新たな技術としての応用が進むことに期待したいですね。効果的な取引が技術革新によって実現できる点は非常に素晴らしいと思います。

IoTデバイスを通じて決済ができる仕組みを検討しているような会社も、決済量が増えてきた際に対応できるポイントになりそうですね。特に少額決済(マイクロペイメント)などは取引量と速度が利便性から比例していくかと思うので非常に有用な分野ではないかと思います。

Shlomi: あとはガス代が発生しない点も私たちが注力しているポイントになります。ビザンチン・フォールトトレラント性を担保した設計といくつかマルチパーティ計算要素を組み合わせているので、費用負担なく運用できる設計になっています。

次回に続きます!

※一部法的な解釈を紹介していますが、個人の意見として書いているため法的なアドバイス、助言ではありません。

データプライバシーに関するトレンドや今後の動きが気になる方は、Facebookに気軽にメッセージ頂ければお答えさせて頂きます!

プライバシーに関して語るコミュニティを運営しています!是非ご興味ある方はご参加ください!

「Privacy by Design Labコミュニティ」↓


ブロックチェーン技術は世界中の人たちが注目している新しいビジネスのタネの一つです!気になったら気軽にメッセージください!