見出し画像

仮想現実世界の広がりとデータプライバシーの未来とは?

XR技術に関する話題はゲームなどのエンターテインメントだけでなく、医療や買い物など私たちのリアルの生活環境にまで徐々に入ってきつつあります。

今回はSNS、ゲーム業界の第一線でセキュリティ、プライバシー分野で関わってこられたKavyaさんをお招きして、新しく誕生しているXR技術分野での取り組みを紹介します。

記事は第一回と第二回に分けられていて、第一回では彼女が取り組むXR Initiativeの話とその背景を、第二回ではXR技術に関するこれからの課題と解決策に関する話を伺っていきます。

XR Safety Initiative 代表                      Kavya Pearlman                           サイバーセキュリティ、XRテクノロジーの専門家。XR技術に関する非営利組織を立ち上げ、業界フレームワークやコミュニティ育成を行う。過去にはFacebook、リンデン・ラボ等の企業でセキュリティ部門を担当し、サイバーセキュリティ関連では数多くの賞を受賞している。

Kohei: Privacy Talkをお聴きの皆様。いつもありがとうございます。今回はKavya Pearlmanさんにお越し頂き、データプライバシーと新領域の技術に関してお話ししてければと思います。Kavyaさん今回は非常に新しい分野のテーマでお話しでき非常にワクワクしています。始めに、自己紹介をお願いしても宜しいでしょうか?

XR Initiativeを立ち上げるまで

Kavya: もちろんです。Privacy Talkにご招待頂きありがとうございます。現在はプライバシーを中心に、特に新領域の技術分野での取り組みでリサーチや活動を行っています。

私の名前はKavya Perlmanと言います。XR safety initiative (XRSI)のファウンダーで、XRSI は501(c)団体と呼ばれる非営利組織で運営しています。以前のインタビューでIAPPのOmerさんともお話しされていたと思うのですが、彼ら同様に我々も非営利の組織として活動を行っています。

XRSIでは没入型環境と新領域技術分野での活動を行っていて、個人や企業、大学や政府機関等と連携してナレッジの共有やリスク管理などの取り組みを行っています。ドキュメンテーションを通じた標準化などの取り組みも実施しています。

拡張現実の世界においては様々なリスクが考えられると考えていて、特にデータプライバシー領域に関しては新しく対策が必要な領域であると考えています。テクノロジーの進化がものすごく早く進んでいるので、技術横断領域というのは非常に興味深い分野で、日々新しい取り組みが生まれていることに非常に関心を持っています。

ここからは私がなぜこの領域に関わることになったかお伝えしたいと思います。

2019年4月にXRSIを立ち上げる前にはLinden Labというゲーム会社でセキュリティ分野のトップとして仕事をしていました。Linden Labは複数ユーザが同時に参加可能な仮想空間を実現するソフトウェアSecond Lifeを運営していて、最も古い仮想現実世界を実現しているサービスの一つです。 私が勤めている間にSansarと呼ばれる仮想現実のプラットフォームアプリの立ち上げなども行っています。

その経験を通して一般的なXR技術で発生する新しいリスク関して関心を持ち、今後対策が必要になると思い立ち上げたというのが経緯です。ゲーム業界に携わる前には、Facebookの第三者セキュリティグループとして携わり、その時の経験も様々な技術を組み合わせる中での異なる点を組み合わせて理解することにつながりました。

こういった経験から特に新領域の技術に関してリスクを正確に予測することが自然とできるようになりました。私の原点は2012年にネットワークセキュリティ分野で修士号を納めて、企業の移民向けの法対応を行う法律事務所で働いた経験から始まっています。始めに経験したセキュリティの仕事は、オペレーションセンターの最前線でサイバーアタックと向き合う事でした。

これまでの特殊な経験からLinden Labを離れた後に、新しいテクノロジーの変化とともに産業全体を良い方向へと変えていく取り組みを立ち上げる必要があるなと思い始めました。特にデジタル化や、新技術領域など新しい分野での取り組みを場として増やしていきたいと思っています。

Kohei: ありがとうございます。非常に素晴らしいこれまでの経験ですね。私もいくつかインタビュービデオを拝見させて頂いて、背景を伺い非常に感銘を受けました。新しい技術は色々誕生してきていますが、XRなど新領域に特化した取り組みはまだまだ少ないのではないかと思います。

Facebookが発表した製品やゲーム企業も追随することで、新領域でのデータにまつわるプライバシー問題は大きなテーマになっていきそうですね。ここからはXR safety initiativeを含めた活動に関してお伺いしていきたいと思います。これまでにも様々な取り組みを行っていると思うのですが、XR safety initiativeの最終目的と現在フォーカスしている取り組みはどういったものになるのでしょうか?

XR Initiativeが掲げる重要な原則

Kavya: 主に3つの原則で活動しています。一つがバイアスがかからないということ。そして倫理と真実をミッションに掲げています。そしてミッションを通じてXRエコシステムにより安全性を提供していければと考えています。これがコアな考え方です。公平で、倫理的、そしてバイアスがかからない形でのテクノロジーの発展と周知を行っていきたいと考え取り組んでいます。

実際に4つのメインプログラムが現在は活動として始まっています。

1つ目が多様性とインクルージョン(包含)をテーマにしたCyber XR coalitionです。サイバーセキュリティやXRに関して様々な多様性を重要視している組織が関わっているもので、12の異なる組織が一緒になって活動しています。XR領域でインクルージョン(包含)とは一体何かであったり、多様性に関する活動であったりに注力して標準的な理解を進めています。
2つ目が子供の安全性です。XR分野でのテクノロジーを考える際に子供の利用者のことも考える必要があります。これは新しいドメインの話だと思います。実際にコロナの際1億5000万人の子供たちがオンラインでのコンテンツに触れるようになり、仮想現実や拡張現実上でのリスク懸念は徐々に高まってきています。ただ、現時点で子供にとって心理学的にどのような影響があるかどうか明確になっていないので、私たちは取り組みを始めています。

新しい取り組みを来月にスタートする予定です。

3つ目は医療分野でのXR評議会です。8月には新しくパートナー連携を発表する予定です。医療分野でのサイバーセキュリティ専門家などと連携して、医療サービスをXR技術を駆使して提供する際の標準的な基準の作成を進めていく計画をしています。今時点では技術を活用する際にどのような個人データが取得されて、利用されているのか明確な基準がないため基本的なガイドラインを設計することで中心となるプロトコルを設計していきたいと考えています。
4つ目はReady Hacker One (RH1)という取り組みでXRに関する活動を周知してもらうための取り組みとして進めています。デープフェイクなど最近は問題視されていますが、実際に起きた場合には自分たちの脳に直接影響があったり、意図的に意識を操作したりするなど何が真実か判断が難しくなることもあるのではないでしょうか?XRに関して私たちが考えていることは、人々が信頼できるプラットフォームを開発する事が大切だと思っています。

(動画:Ready Hacker One (RH1)VR上でのインタビューメディア)

スクリーンショット 0002-10-03 15.15.26

(XR Initiativeの活動イメージ)

この活動がプラットフォームになってどんなテクノロジーが信頼できるのかを伝えていきたいと思っています。ノイズやバイアスがかからないようにフィルターのような機能として活動できればと思っていますし、ARアートなどの技術を利用する際に “安心して使える環境にあるか確認してください” と言う事を周知していければと思っています。

周知することに加えて、マインドが少しづつ変わっていくことも大切だと思っていて、クリティカルシンキングなどを通じて理解が深まっていく事が重要だと思っています。

Kohei: ありがとうございます。特に新しい技術領域に個人的にも関心があって、まだ社会ではお話しして頂いた視点での取り組みがあまり始まっていないのではないかと思います。実際に技術的な立場に立ってXRを見た際の重要な課題はどういった点になるのでしょうか?

現在のXRが抱える課題点

Kavya: そうですね。課題に関して話をする前にまずはXR自体がどういったものであるかを皆さんにご紹介できればと思っています。と言うのも、プライバシーの専門家が話を聞いても、XRが一体何かという事がイメージしづらく、間違った解釈になってしまうこともあるので、先にXRについて説明させて頂きます。

これまでの数年間どのように分類していくのがいいのか様々な議論が上がっていました。まさに “言葉の戦争” とも言える状況がXRの分野で行われていました。少なくとも定義として、現実の延長が大枠としてあり、その中で仮想現実や拡張現実、それ以外にも様々な技術を組み合わせた複合現実のようなものが生まれるようになりました。

基本的にはXRは仮想と現実を組み合わせた環境で、機械と人が相互に関係してくる点がポイントになると思います。私たちは次のステップとして、XRの定義や標準的な指標なども今後は具体的にしていきたいと考えています。

スクリーンショット 0002-10-03 15.37.07

本質的に仮想現実とは何かと聞かれたら、没入型の環境をデジタル環境で実現するものをが引き合いに出される事が多いと思います。例えば仮想空間で誰かを手助けしたり、エンジンを修理したり、お店の設計を行ったりなどの世界観も今後は実現していくと思います。

これまでは夢でしか実現できなかったものが新しい空間で実現できるようになるのです。拡張現実に関してもデジタルで新しい体験を実現したり、複合現実では仮想空間で現実世界ではこれまでにないものを実現する事ができるようになると思っています。

ここから質問に戻りたいと思うのですが、違いやプライバシーに対する考え、そして懸念されることに関して話していきたいと思います。ここ数年で新しく個人データに関する法律の施行が進みました。欧州のGDPRやカリフォルニアのCCPAなど、日本やアジアの国々でもこう言った動きは始まっていると思います。

XR分野でどう言った取り組みが進んでいるかというと、紹介した個人データ保護に関する新しい法律が施行されるに伴いプライバシー保護に関するガイドラインが必要になるため、どのように対応していく必要があるのかという視点で意見が交わされています。

「既存の技術で実現できる事と法律とのギャップや新規の利用者の権利をどのように守るのか、そしてどのようにコミュニケーションしていく必要があるのか」などです。

ヘッドセットを装着して体験が始まるというのが常ですが、個人データを取得する際の同意を取る際のボタンの設計などは重要になってくると思います。これは拡張現実の分野でも起こりうるポイントですね。

スクリーンショット 0002-10-03 15.40.28

ARグラスなどは最新の技術として引き合いに出されますが、グラスをかけたまま現実世界の動きをキャプチャーしていく事になります。こう言った現実と仮想空間を行き来する際にプライバシーに関する問題は発生します。

こう言った技術は多くのデータを取得するため、非常に懸念が高まっています。間違った方向に進んでいかないように、理解とソリューションの提供が必要になります。

Kohei: なるほど。コロナのタイミングでいくつかの会社がこれまで開発していた仮想とし空間のサービスを発表したりしていますね。ヘッドセットを装着するだけで、実際の建物が仮想空間で実現されていたりするので非常に面白いです。

家族や友人などとエンターテインメント空間をその場で共有する事ができるだけでなく、より仮想空間での体験も複雑になっていくと思いますね。実際にこう言った体験の定義は一体どのように変化していくのでしょうか?

次回のNoteに続きます!

Kavyaさんの連絡先はこちらまで!(政府や非営利組織など興味のある組織は是非連携していきましょう)

kavya@xrsi.org
Kavya’s twitter: @KavyaPearlman
Kavya’s Linkedin: https://www.linkedin.com/in/kavya-pearlman

※一部法的な解釈を紹介していますが、個人の意見として書いているため法的なアドバイス、助言ではありません。

データプライバシーに関するトレンドや今後の動きが気になる方は、Facebookに気軽にメッセージ頂ければお答えさせて頂きます!


ブロックチェーン技術は世界中の人たちが注目している新しいビジネスのタネの一つです!気になったら気軽にメッセージください!