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体験版とSNSから着火した異例のゲーム「Fit Boxing」40万本ヒットの5つの要因。SNSでダイエットがソーシャル化した話。

Nintendo Switch「Fit Boxing」開発のイマジニアさんにお話を伺いました。

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※イマジニア株式会社 萱沼 恒三さん、河野淳一さん、曽田圭さん

「Fit Boxing」について教えてください。

萱沼:
「Fit Boxing」はNintendo Switch用のエクササイズゲームです。全世界での累計出荷販売本数は40万本を突破しています。

ただ実はこのゲーム、2018年12月の発売直後の販売はそれほどでもなくて、
国内の初週でいうと「2,500本くらい」しか売れていませんでした。

ソフト内容に違いはありますが、例えばイマジニアで「メダロット」のゲームを出すと、初週で3万本くらい売れます。その数字から考えると、遅い立ち上がりであることがわかると思います。

そこから、SNSやネットの反響から「じわじわ売れていく」ことになるのですが、こうした売れ方をするケースは社内的にも異例でした。

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※Nintendo Switch(以下、Switch)のJoy-Conを握って、音楽に合わせてエクササイズするゲーム。

◎ヒットの要因1:「体験版からツイートが生まれた」

萱沼:
まず、ツイッターで広がるきっかけとなったのは「体験版」でした。無料の体験版によって「感想ツイート」がたくさん生まれたんですね。

とくに「Fit Boxing」は、10分くらい遊んでもらえると、すぐ汗だくになってきたりして、短期間で手応えを得られやすいゲームです。

だからこそ、「こんなの効果あるの?」というところから、実際に「やったらスゴかった!」という、感動の落差まで体験してもらえた。

そういう人たちが、「きつすぎる」「めっちゃしんどい」「筋肉痛」といったツイートをしてくれて、体験版が話題になっていきました。

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◎ヒットの要因2:「声優起点での盛り上がり」

萱沼:
ツイッターでの、もう一つの起点は「声優さん」でした。このゲームではインストラクター役として、有名な6名の声優さんを起用しています。

ゲームとしては、声優さんの起用を極端に押し出すことはなかったのですが、想像以上にみなさんが話題にしてくれました。

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曽田:
はじめに話題になったのも、声優の中村悠一さんの声で「キャプテン・アメリカ」に訓練してもらってる気分になる、というツイートでした。

声優さんに演じてもらえたことで、メーカーである私たちが想像した以上に、みんながキャラクターを愛してくれていることを実感しました。

有名な声優さんたちなので、ファンの方が話題にしてくれるのは納得ですが、ここまでキャラに愛着を持ってもらえると思いませんでした。

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◎ヒットの要因3:「SNSでダイエットがソーシャル化」

萱沼:
「Fit Boxing」って、基本的には「一人でやるゲーム」なのですけど、SNSを通じて「みんなでやってる人」も多くいることに気づきました。

アプリやスマートデバイスによって、周りの人が「どれくらいやったか」という情報が、記録や共有もされやすくなっています。

たとえば、タイムラインで「Fit Boxingで痩せた!」という投稿をみて、自分がサボっていたことを後悔して、ゲームを再開する人がいたり。

SNSが普及したことで、エクササイズやダイエットの楽しみ方が、すごく変わってきているなと感じました。

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曽田:
ゲーム内で測定される「カラダ年齢」を、診断コンテンツのような感じで、SNSに共有している人も多かったですね。

この「カラダ年齢」って、実年齢より若くても言いたくなりますし、その逆でも言いたくなりますし、SNSとの相性がよかったのかなと。

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◎ヒットの要因4:「拡散から販売へのサイクル」

萱沼:
ツイッターで話題になっていることから、ねとらぼさんのニュース記事に載せていただき、Yahoo!トップに掲載されたこともあるのですが、そのときは反響がすごかったです。

ネットで大きく話題になると、売上にもはっきりと影響が出ました。一時的に店頭から「在庫がなくなった瞬間」もありましたね。

大きく話題になると、まず体験版のダウンロード数が伸びて、そこから販売本数にもつながる、という一連のサイクルもできていました。

いまでも、「Fit Boxing」は口コミなどで地道に広がっていて、売り上げ本数が安定的に伸びている、という状況ですね。

※公式ツイッターで「レビュー用のタグ」をつくって、感想や体験談を投稿してもらえるように促してもいる。

◎ヒットの要因5:「継続してあそんでもらえる工夫」

萱沼:
ゲームの開発時は、まずは何も考えずに「起動したらすぐできること」を意識していました。

プレイヤーの目的に合わせたエクササイズが提案される『デイリー』というメニューを用意することで、「とりあえず『デイリー』やっておくか」と、1日1回のプレイに繋がりやすい設計になっています。

あとは、ダイエットって「厳しさ」よりも、褒めてモチベーションを高めたほうがいいと思うので、プレイヤーに対して優しいつくりにしました。

基本、インストラクターは「褒めること」しかしません。失敗しても期間が空いてしまっても、プレイヤーを責めないようにしました。

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前作のWiiの「シェイプボクシング」を出したのは2008年頃ですよね? その時と比べると、ネットの環境ってかなり大きく変わっていますよね。

河野:
そうですね。いまやSNSは当たり前ですけど、10年前はユーザーが「ゲームで痩せた」となっても、メーカーにお葉書が届くくらいでした。笑

なにかスゴイことが起きても、ユーザーが発信する場所がなかったし、それが世の中に伝わることもほとんどなかったと思うんです。

萱沼:
以前は「お店にゲームが並ぶこと」がある種のユーザーとの接点だったんですよね。店頭で露出をとることにメーカーも力を入れていた。もちろん今もそうなんですけど。

それ以外に「お客さんに取れるアクション」って、王道であるテレビCMとかくらいで、そこまで引き出しがありませんでした。

でも今はそれだけじゃない。メーカーの発信すること以外にも、自分のタイムラインにいる人から聞いた、みたいなことも増えているなと。

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パッケージ版とダウンロード版の比率はどうでしょうか。

萱沼:
「Fit Boxing」は比較的ダウンロード版の比率が高いタイトルだと感じます。また、流通の方にも「中古への戻り」が少ないタイトルだとも言われたこともあります。

ダウンロード版が伸びる理由は、「毎日(短時間でも)継続してプレイする」というゲームなので、ソフトの差し替え作業が発生しない、というのがひとつ。

あとは、ダイエットを決意して「退路を断つため」にダウンロード版を買うという(中古で売れないように)、ユーザーの声も見かけました。

なにか「ゲームの販売本数を増やす」という意味で、うまくいった施策があれば教えてください。

河野:
あすけん」という食事管理アプリと連動して、30日間「Fit Boxing」を続けた人がどれくらい痩せたのか、統計を調べたことがありました。

結果としては「平均2キロ痩せている」という数字が出て、それをプレスリリースで発信したところ、反響があり売上にもつながりました。

ダイエット系の広告とかだと「3日で10キロ痩せた」って当たり前じゃないですか。だから「2キロ痩せた」じゃインパクトがないかなと思ったら、意外と盛り上がりましたね。

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ユーザーの声で「印象的だったもの」はありますか。

河野:
Fit Boxingを「ジムの代わり」として考える人が多かったこと。子育て中でジムにいけない人もいますし、日焼けせずに運動したい人もいます。

朝やる人も意外と多いみたいで。寝巻きでやってそのまま洗濯機に入れる、ズボラに運動できるのがいい、といった意見もありました。

ユーザー層としては、座りっぱなしのクリエイターさんの間で、運動不足の解消手段として、「Fit Boxing」がつかわれている話も聞きました。

曽田:
女性からは「ジムに行くのも大変」という意見も聞きます。化粧してジムにいって化粧を直して帰ったり。家の中でやるゲームならノーメイクで出来ます。

着替えやメイク道具を持って行くとなると、荷物が大きくなってしまって、会社帰りに行きにくかったりもするようです。

体形を気にしている方が「細くなってからジムに行きたい」と、ジムに行く前段階として「Fit Boxing」をやる、という意見も聞きました。

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取材協力:イマジニア株式会社
Fit Boxing(公式サイト
イマジニアのツイッター:@Imagineer_info

-----おしまい-----

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