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組織に投資する その3

組織に投資するという考え方をすると、
組織開発は上手く進んでいく。
なぜならば、
MITのダニエル・キム教授が言うところの
「成功循環」が回り始めるからだ。
というところまで綴ってきました。

なぜ対話が深まると上手く行くのか?

対話ごときで、
そんな上手くいくのか?と思われる人の方が多いと思います。
だけど、
シンプルに考えてみてませんか?

・共に働く人が、実際のところはどんな人なのか?
・何が嬉しくて、何が悲しくて、何に怒りを感じるのか?

それらを知らずに、共に働くのって難しくないですか?
仕事をするのに、そんな情報はいらない、って言い切れますか?

表面上の仕事でのやり取りでは、その人の本質を見誤ると思うのです。

私自身もそうですが、
仕事だから、と割り切って取り組むことはあります。
仕事なんだから、という義務感で
本来のパーソナリティと異なる自分を演出していること多くないですか?
少なくとも、私はそういう演出をしてきましたし、
そういう人を多く見てきました。

交渉、駆け引き、戦略、
仕事を成功させる上では結構えげつないこともあります。
経営者の立場であれば、なおさらかもしれません。
ありのままの素の自分で仕事するのって、
かえって難しいと思います。

仕事という意識は、
人に鎧を纏わせざるを得なくしてしまう。

だからこそ、と思うのです。

だからこそ、
同じチームで、同じゴールを目指すために、共に仕事する人が、その仕事で発する言動については、それらの背景をある程度でも理解しておきたいと思うのです。

仕事上の差し障りのない範囲でもいいのです。
その人の好き嫌い、嬉しい悲しいを
その背景も含めて知ることができれば、
「なるほど、そうだったのか」と理解できることが増えると思うのです。
妬ましかったことも、リスペクトできるようになるかもしれません。

人の考え方や振る舞いには、基本的に背景があるものです。
たとえ考え方に賛成できなくても、
その背景を知ることで、一定の理解は進むものです。
学生時代の失敗、幼少期のトラウマ、誰かの影響とかを知ることで、
そうなるのも仕方ないか、と思えるようになるだけでも大きいのです。

この変化が巻き起こす組織の変化の力はかなりのパワーとなります。

対話にかかるコストは?

対話にかかるコストは何か?
まずは、時間です。
上層部、社員が、目先の売上に繋がらない「対話」の時間に割くことになります。
社長含む幹部陣4~5人が月に1度2~3時間向き合う時間がある意味でコストになります。

次にファシリテーターです。
慣れない人同士で対話を進めるのは、実は簡単ではありません。
「お偉方」の集まりだと、ともすると我のぶつかり合いにもなります。
このテーマに詳しい外部のコンサルタントに依頼して、
ファシリテーターを務めてもらう方が、
場の運営は上手く行くことは間違いありません。
このファシリテーターの費用は必要になります。

基本的にはこの2点だけです。
言い方を変えれば、キャッシュとして支出されるのは、ファシリテーターの経費位です。

その予算感については、
人によって受け止め方は様々かとは思いますが、
私の経験では、メチャクチャコスパのいい投資だと認識しています。

対話をすることで業績は向上する?

嬉しい悲しい、好き嫌いのツボを共有すると
次は例えばこんな話が幹部から出てきました。

主体性とは何か、とか
積極的とはどんな行動か、とか。

当たり前に使われる言葉ですが、
実はそれぞれが感じているニュアンスや受け止め方は異なることに気づきます。

ひとりの幹部が自分の部下の行動を例に上げて
この言動や姿勢は主体的だと感じます?
なんて疑問を投げかけてきました。

面白いことに
主体的だと思う、という幹部もいれば、
ちょっと違うな、報連相が足りない、なんて感じる幹部もいるのです。

積極的についてであれば、
能動的に仕事していると感心する人もいれば、
出しゃばりと否定的に感じる人もいたりしました。

これが例えば、
「チャレンジ精神の重要性」「リスクマネジメントの重要性」という
一見対立しがちなテーマについて、どのように認識するか、肯定的なのか否定的なのかが分かれてきます。
それぞれの価値感がぶつかるので、対話がさらに難しくなるのは容易に想像できるかと思います。

こうした幹部間のニュアンスの違いが
部署の優先順位や行動規範、ひいては部署の文化となっています。
それを知らない部署同士が、ある業務の進め方をめぐって、
互いの部署の批判を始める。
場合によっては、部長が他部署を批判し始める。
部長が批判する他部署に対する考え方は、
当然部下にも伝播します。
しかも、これらの対立は感情的になっていきやすいので、尚のこと要注意です。

仕事とその成果そのものよりも、
こうした文化の衝突で感情的なこじれが生じ、対立が起こり、
成果も全く上がらなくなる、なんてことは実は簡単に起こるわけです。

これは会社としては大きな損害ですし、
業績にも悪影響を及ぼします。

しかし、
逆に考えれば、この違いを相互理解することで少しでも解消すれば、
部署ごと、管理職ごとの意識のすり合わせに進めます。
また、違いをポジティブに認め合えば、
連携がスムーズになり、情報の伝達も業務の効率も向上します。
「チャレンジ精神」と「リスクマネジメント」のいずれもが
両立する組織へ自然に進化しちゃったりします。

関係性の質の向上が、意識の質を向上させ、さらに行動の質を高めるという、
まさに成功循環の回り始めるのです。
まさしく生産性の向上であり、
結果の質、すなわち業績が向上に繋がっていくと私は思います。

幹部間の対話がないと不満は社長に集中する

幹部間の対立、部署間の対立は
最初はちょっとしたボタンのかけ違いであっても、
不調和が続くと感情的な対立にまで及ぶことがあります。
そして、その不満は結局は社長に向けられてきます。

「社長はどっちなんですか?」

社長の立場で「私はこう考える」と言い切れるものありますが、
ケースバイケースで、どちらとも言えない場合もあります。
そこに至る背景や根本的な考え方が分からないと判断を誤りますし、
訴える幹部も、すべてを正直に報告せずに
都合のよい切り取りをして上げてくるケースもありそうです。

そうなると、
社長は正しい判断はできないです。
結果的に何らかの決断をしても、
その決断に至る社長自身のことを知らない幹部からすれば、
納得のいく決断とは思えません。
そして、社長と幹部の間に疑心暗鬼が生まれるなんてこともあります。

人はビジネスシーンでは冷静かつ客観的な判断ができると思いますが、
そう単純でもありません。
人としての感情や好き嫌いは根深いのです。

それらをきちんと切り分けて、的確な決断を下せる人も
当然いらっしゃいます。
中には、「社長の出番!」とばかりにやりがいを持って張り切れる人もいるでしょう。

しかし、現実はそうでもないことを実感できる人も多いのではないでしょうか?

とすると
主体的とか積極的とか、
チャレンジとリスクとか、
いわゆるコンピテンシーの項目によく出てくるような言語について、
それぞれの考え方や判断基準をすり合わせておくということを、
社長は普段から考え、幹部と話し合って共有しておくことが
私は非常に大切だと思うのです。

共有した結果違っていてもいいんです。
違っていることを、その背景も含めてお互いに知っている。
多様性です。

多様性は組織の底力だ

ただ知らずに批判ばかりするのと、
知った上で違いを尊重した上で考えることができるは大きく違うと思います。
違いを認識した上で、今起こる問題について話し合うことが
冷静で客観的な選択をすることに繋がる、
少なくとも禍根は少なくなるはずです。
批判するなら、せめてお互いに理解し合えたり許容し合える良い批判をしたいです。

自分への批判は、足を引っ張ることが目的なのではなく、
自分の穴、足りないところを、
得意な誰かが埋めてくれていると思える、そんな関係性です。
その意図は、会社全体を成長させるため、
というよりも、巡り巡って自分の成果も上がると考えられる、そんな関係性。

個々の違いを不満ではなく、多様性の強みを生かすことと考えられる組織を作ること。
こうした環境を作ること。
それが社長の仕事では?と思うようになりました。

多様性を生かすことは、
関係性の質が、思考の質を変えて、行動の質を変容させるという循環に繋がる。

これが私の成功循環の解釈であり、
それを実現するためのステップだと思っています。

次回に続きます。

もう少しお付き合いくださいませ。

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