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私の好きだった曲③:『見つめていたい』

私が10代の時に好きだった曲の思い出<第3回>は、ポリス『見つめていたい Every Breath You Take』です。

80年代ヒット曲の最高峰候補

1980年代を代表する一曲です。1980年代からTop10を選べと言われた時、この曲を外すことは、私には考えられません。

ポリス(The Police)が1983年に発売した5枚目のアルバム『シンクロニシティ Synchronicity 』からの第1弾シングルとしてリリースされ、全英チャートで4週連続、全米チャート(ビルボード)で8週連続で1位を記録しました。

当時のラジオでは朝から晩までこの曲が流れていて、幅広い層から支持されていました。ゴドレイ&クレーム(Godley & Creme)のてがけたミュージックビデオも素晴らしい出来です。

名バンド、ポリスの破綻

ポリスは、イギリスのニューカッスルで1977年に結成されています。ドラマーのスチュワート・コープランド(Stewart Copeland、1952/7/16-) が、ベーシスト兼ボーカリストのスティング(Sting CBE、1951/10/2- )の才能に惹かれ、ギタリストのヘンリー・パドゥバーニを加えた3人で活動を開始します。

その後、10歳年長のベテラン実力派ギタリストのアンディ・サマーズ(Andy Summers、1942/12/31- )が加入し、バンドは一時期4人編成になりますが、ほどなくパドゥバーニが脱退して、再びトリオでの活動にシフトします。

1978年に『アウトランドス・ダムール Outlandos d'Amour 』でデビューすると、年1枚のペースでコンスタントにアルバムを発表していきます。ヒットチャートをそれ程強く意識していたようには見えなかったポリスが、これ程までの大ヒット曲を放ったことは意外でした。

ポリスは微妙な人間関係のバランスの上に成り立っていたバンドでした。才能に恵まれ、個性と主張がきつくて対立しがちなコープランドとスティングを、年長で温厚なサマーズが潤滑油役になって支えていたと言われます。この曲の大ヒットによってミュージシャンとしての自信を深めたスティングは、より個人的な音楽嗜好を強く打ち出してソロ活動を優先し始め、1984年1月にポリスは活動休止に陥ります。

その時点ではまさか、『シンクロニシティ』が、彼らの実質的なラストアルバムになるとは想像もしていませんでした。それぞれのソロ活動を経て、1986年にポリスとしての再始動を計ることが発表されたものの、本格稼働には至りませんでした。現在までも単発的な再集結はあるものの、ポリスとしてのバンド活動は見られないままとなっており、非常に残念です。

屈折した歌詞の世界と色褪せないメロディ

スティングの書く歌詞には、インテリらしく、独特の雰囲気があります。この曲の歌詞は、『見つめていたい』という邦題タイトルから感じられる「大切な人を見守るラブソング」的な内容ではなく、悪意を持って監視する、支配するというダークな視点が込められている、とスティング自身が語っています。

1980年代は、ロック音楽の急速な大衆化、商業化が進んだ時代です。ロックはエンタメ産業となり、作品は製品となって、日々の生活の中で認知・許容され、簡単にアクセスできて、消費されていくものになりました。大人たちも世間もロックに寛容になっていきました。私には、ロックを聴くことで、疎外されたり、厳しく叱責されたりした経験がありません。

この風潮に、1960年代、1970年代にロック音楽を熱心に聴いてきた人の中には一気に幻滅した人も多いと言われます。そんなポップな時代へと移り変わっていく時期に、1970年代の思索的な香りやメッセージ性も放っていたポリスはインテリっぽい雰囲気に弱い私にはとても格好良く見えていました。

この曲のメロディーには古さを全く感じさせず、万人を惹き付ける不思議な魅力が今もあるように感じます。誇大宣伝という批判を恐れず、私はこの曲を『時代を超えた名曲』と認定致します。

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