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金曜日の随筆:決断の裏側 蛍原徹さんに憑依して想像してみる

また運命を動かしていく金曜日がやってきました。2021年のWK34、葉月の参です。本日は、「雨上がり決死隊解散」という時事ネタから、蛍原さんの立場に憑依して心情を綴ってみます。


今週の格言・名言《2021/8/16-22》

Your lifework can be discovered near what makes you feel happy.
ライフワークは「幸せ感」の近くにある

You can measure your own strength by how far you're willing to go for others.
- Henrik Ibsen, Playwright/Norway
他人に尽くすことで、自分の力を測ることができる
ー ヘンリク・イプセン 劇作家/ノルウェー

大切な仲間と別れる時

2021年8月17日、お笑いコンビ、雨上がり決死隊の解散が発表されました。自分と同年代で、一線級で長く活躍してきたお笑いコンビだっただけに、その解散に至った原因に興味を持ちました。

宮迫博之さんと蛍原徹さんは、厳しい芸能界の中で32年間生き抜いてきた戦友同士です。相互にリスペクトし合っている関係だったことは、完全な部外者である私にもわかります。二人で何度も話し合いを重ねた末の大人の別れなのだと思います。

雨上がり決死隊の活動の方向性や芸風を定めていたのは、宮迫さんでした。ソロでも幅広い分野で活躍し、華やかなスポットを浴びる機会が多かったのも宮迫さんの方でした。相方の蛍原さんは、年齢的には宮迫さんよりも上ながら、「雨上がり決死隊の今があるのは宮迫のおかげ」と公言し、その人柄や人間性を評価する芸人仲間や業界関係者に多い、と言われています。

コンビの解散は、蛍原さんにしかできない決断だったでしょう。達観して合理的に考えれば、今このタイミングで解散する必然性はありません。宮迫さんが2019年に闇営業問題の不祥事を発端に吉本興業からの契約を解除される事態になった後、ここまでコンビを存続させようと踏ん張ってきたのは、蛍原さんが、「もう一度チャンスを貰い、コンビでお笑いをやりたい」という宮迫さんのことばを信じていたからでしょう。

最後の最後に、宮迫さんが復帰を切望していた「アメトーーク!」の場が用意されて花道を飾れたこと、多くの人が解散に驚き、惜しむ声が挙がるのは、これまでに雨上がり決死隊が積み上げてきた功績と蛍原さんの人徳あってのことだろうと思いました。

蛍原さんに憑依して考える

この決断をした蛍原さんに憑依して「自分だったら……」という気持ちで検証してみます。

蛍原さんが番組の中で行った解散に至る説明は、大変クリアでした。引き金となったのは、宮迫さんのYouTubeでの活動開始だったと言います。突然の活動再開は、宮迫さんの謹慎処分への同情的な空気感を一変させ、一気に硬化させました。本人の意向を汲んで、復帰する場所を必死に守ろうと苦心してきた蛍原さんとしては、いきなり梯子を外された思い出、複雑な心境だったでしょう。

宮迫さんのチャンネルが大成功を収めたのも、事態を悪化させました。成功は、宮迫さん自身の突出した才能と努力、過去に培った人脈からの支援、サポートについた新たな人脈や周囲を固める強固なサポート体制が呼び寄せたものです。芸人として、エンターテイナーとしての宮迫さんの実力です。

ただ、宮迫さんのYouTubeが成功すればするほど、メディア関係者ムラ(吉本興業・テレビ・テレビ芸人)に属する人々の気持ちを逆撫でされたかもしれません。反宮迫包囲網は強固となり、不祥事前の状態への復帰は一層困難となりました。相方の能力や立場や気持ちも理解できる一方、メディアの現場の空気感にも晒されている蛍原さんは、板挟みとなって相当に苦しかったと想像します。

蛍原さんには、宮迫さんのYouTubeの成功を恨んだり、羨んだりする気持ちはないでしょう。とはいえ、YouTubeで楽しそうに振る舞っているさまや次々と応援団が集まってくるさま、を見聞きするのは、複雑な気分で、辛かった可能性はあります。騒動で迷惑をかけた人々、テレビ界への復帰に向けて尽力してくれている人々の気持ちを、軽々しく踏みにじっているように見えたでしょうし、「もう一度俺とやりたいというのは本心か?」と疑念も沸いたかもしれません。

宮迫さんは新たな利害関係者を抱え込み、もう引き返せない道へ突き進んでいて、もう元の場所へ戻ってこれる可能性も余地もない、ここらがもう潮時と引導を渡す以外になかったのだと思います。

雨上がり決死隊の看板を掲げたまま、開店休業状態を保って、時間が解決するのを待つ手もあった(宮迫さんはそれを望んでいた?)と思います。私ならばそう考えたかもしれません。しかし、蛍原さんにはそれは不誠実な態度と映り、甘んじて是とはできなかったのでしょう。

才能ゆえに望まない結末を招いた宮迫さん

宮迫さんには、男気溢れる誠実さ、芸人をやるんだという真摯さと同時に、悪気の全くない天然の無邪気さ・軽さ、義理人情的なものを軽視し、怨嗟を増長してしまう無責任さ・無防備さ、が同居しているのかもしれません。

謹慎・契約解除を言い渡され、活動の場を奪われた絶望があった筈です。もう一度這い上がるために決断し、挑戦したYouTuberの大成功によって、皮肉にも大切な相方と二人で磨き上げてきた雨上がり決死隊を失うことになってしまいました。長い間話し合いを続けたということなので、気持ちの整理はできているかもしれません。

宮迫さんが取った一連の決断や行動は、糾弾されることでも、非難されることでもありません。自分が活躍できる場を閉ざされ続けるのに抗い、必死でもがく行為は立派な勇気ある行為だと思うのです。結果、ネットメディアという”新大陸”でも受け入れられ、地位を得た訳です。

宮迫さんに批判的な意見をしているのは、既存のテレビを中心に活躍する”旧大陸”系の人たちです。宮迫さんの思い描いていたような結末 ーYouTuberとして成功し、禊を受けてテレビタレントとしても復活できるー を、”旧大陸”の人々は、それは問屋が卸さない、二股でポジションを取ることは許さない、ということだったのでしょう。

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