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日本語を操るミャンマーボーイ

旅のくだらない噺手帖「ミャンマー・ラオス旅編」
前回『ウワサの八曜日占い』も是非お読みください。

ミャンマーはヤンゴン2日目。
夜は夜行バスで移動するため、日中は市場で買い物とローカル電車に乗ることを計画していた。

雨季のため朝から雨がしとしと降っており、歩くのは億劫だったが、まだ旅は始まったばかり。テンションは高めだった。市場を目指して歩くも一向に見つけられない。歩いていると駅を発見したので、先に電車(ミャンマー環状線)に乗ることにした。

駅でとりあえずの撮影タイム。電車は来る気配が一向になく、線路に降りたり、構内でポーズを取りまくったり、やりたい放題。構内(出入り自由)では電車を待つ乗客だけでなく、パイナップル売りの少女やドラゴンフルーツ売りのおじさんが座っている。

しばらくして、私たちが降り立った側と反対側にチケット窓口があると気付き行ってみると、どうやら電車は30分以上後にしか来ないと分かる。待つかどうか迷っていた私たちの前を、二人の少年が通り過ぎようとしていた。ややポッチャリで陽気なオーラを漂わせたどうみてもミャンマー人なふたり。しかし彼らは日本語で会話していた。

思わず私は「日本語!!」と叫んだ。

すると彼らは振り返り、「そうです。お姉さんたち、日本人ですか?」と流暢な日本語で話し始めた。日本語に飢えていた(まだ2日目なのに)私たちは嬉しくなって、彼らの質問ーどこから来たのか、とか、これから何をするのかーにノリノリで答えた。もちろん彼らに質問も投げかけた。二人は兄弟で高校生、スイミングに行く途中だったと。そして最大の疑問、「どうして日本語を話せるか」についての回答は『YouTubeで学んだ』と教えてくれた。信じられなかった。YouTubeでここまでのレベルの日本語を習得できるなんて。しかも彼らは、「なごり雪(イルカ)」「桜(川口恭吾)」などの日本歌謡曲までも歌ってみせた、しかも上手に!

すっかり仲良くなった私たち。電車に乗りたいことと、市場に行きたいことを告げると、電車までは時間があるから市場に行こうと案内してくれた。どうやら彼らの兄と姉が市場でお店をしているらしい。私たちはミャンマーの民族衣装ロンジーが欲しかった。ミャンマーでは男性も女性もロンジーと呼ばれる巻きスカートを履いている。寺院では足の露出NGなのでこれがあれば参拝などに使えるわけだ。彼らに連れられ市場に着くと、そこは真っ暗で不気味な様相を呈していた。雨季の間は電力が不安定で、停電がよく起こるそうで、まさにそのタイミングで市場に足を踏み入れたのだった。

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薄暗くて何が売られているかもよく見えない中、彼らの後をついて市場を右に行ったり左に行ったり。「ここだよ!」と彼らが立ち止まった店で、やや暗闇に慣れた目を凝らして見てみると、ロンジーがたくさん並んでいた。すぐさま彼らはスマホで明かりを照らし、携帯用の蛍光灯を付け、見やすくしてくれた。いくつか試着をして、私たちは色違いのロンジーを購入した。彼らの交渉もあって値引きもしてくれた。が、正直、そんなに安くはなかった。だけど、私たちが買うことできっと彼らに何か恩恵があるのだろうと、にこやかにお会計をした。

それから彼らの兄姉の店にも連れて行かれた。ミャンマーでは当たり前のように使われている日焼け止め「タナカ」。

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タナカという木をすりつぶして作れらているもので、他にも石鹸や美容液など製品は多く、彼らの兄の店でも売られていた。彼らは私たちの頬や鼻頭にタナカを優しく塗ってくれた。念願のタナカデビューを果たしたのである。彼らの強い勧めもあって、お土産用にタナカ石鹸を購入。とにかく彼らは商売上手だった。

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顔全体にではなく、ペイントのように頬や鼻にまあるく塗るのがミャンマー流。

電車までの残りの時間、私たちは彼らとカフェでひと休みすることに。本当に陽気な彼ら。日本語での替え歌にはアッパレ、拍手を送った。

(「桜」川口恭吾)
♪僕が案内するよ 市場につれてくから

ほとんど忘れてしまったけど、市場案内の歌を「桜」に乗せ、字余り気味で歌う姿は関心以外の何物でもなかった。しかも彼らは英語はもちろん、簡単な日常会話ならヨーロッパ圏の言語も話せると言う。さすが商売人の息子たち。逞しい。偉い。本気でやればYouTubeでも語学は習得できるのだ。自分の気持ちの弱さに呆れてしまった。

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彼らは当然日本に来たことはない。いつか彼らが日本を訪れたときは、全力で案内してあげたいと、そう思った。彼らの日本語能力なら、案内など必要ないかもしれないが・・・。彼らとLINE交換して、連絡を取ろうねと約束して、お別れした。去り際も陽気で、だけどスマートだった。

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