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毛布#13 『過去が変わるとき』

7月に入りました。ちょっとぼうぜんとしますが、7月は生まれ月なので気分が良いです。

みなさんいかがお過ごしですか?
みなさんどう暮らしているのだろう。

「繰り返すタイプの不安」

突然だけど、みなさんにはこんな不安ってあるだろうか?(さっきまで気分が良いという話をしていたのに)

例えば、犬が怖いとか、会社がいきなりなくなったんだけどどうしよう、とかそういう不安というよりは、
「人前に出るのがどうしても怖い」とか「人と仲良くなるのが不安」というような、いかにもなんとなく根っこがありそうで、そしてその根が深そうなもの。

私にはある。

6月の終わりくらいに、「ああ、あの人達とお仕事をしてみたいな……」とぼんやり思うことがあった。
実際にお会いしたこともあり、何かできたらいいですねと言ってもらったこともある。だけどその時の私は、笑いを浮かべるばかりで何も答えられなかった。

今回それを思い出しながら浮かんできたのは、「でもダメだ、きっとダメにしてしまい、私は追放される。ただのファンでいよう」というような考えだった。

追放って、どこを? 村? という感じなのだけど、その時とても自然に、ウンウン、やめとこう、と思っている自分がいたのだ。

単純に傷つくことが怖いだけでは? と言ってしまえば、そこでこの毛布は終了です……という感じなのだけど、考えてみると結構この根っこは、いろんなところに影響を及ぼしていることに気がついた。

例えば、何か嬉しいメッセージやリプライをもらったとする。
だけどそれになかなか返信できない時がある(いつもというわけではない)。

その時自分が感じてるのは、「この人もいつか私を離れていく、今これだけ好きだと言ってくれているのに悲しいな」という悲しみだった。

そういう時、何か暗く重く冷んやりしたものが、自分の足元の地面の奥底に埋まっているような気がする。そして、その足元から上ってくる冷たさで、体がかたまって動けなくなる。

なんか埋まってますわ〜と、暗く重くひんやりとした物体Xを地中にほうっておけるなら別に良いのだけど、どうにもそうではない。その土の上に生えている植物は、健康そうに見えても、確実に何かを吸い上げている。

その辺りまで気づいて思った。
もういい加減、そういうのはやめたい。
植物の生育に良くない。私の精神衛生にも、お仕事にも。

「人はいずれ去ってしまう」

そんな時に、VOGUE GIRLの、人気の星占いである「しいたけ占い」のインスタライブを見た。私はしいたけ占いの上半期/下半期の先行配信を見たいがために、VOGUE GIRLのLINEに登録している。(そのおかげで美容やファッションの情報を得られて、恩恵を受けている。)
7月生まれの私は蟹座なのだけど(誕生日はネルソン・マンデラと同じ7月18日です)、インスタライブの中でしいたけ占いのしいたけさんが、

「蟹座の人はどこか、人はいずれ去るという感覚が強い、頑張らないと全てを失うという恐怖心がある」と話し始めて、聞いた瞬間「それやん」と文字通りひっくり返ってしまった。

蟹座の人みんなにそれが当てはまるかどうかという議論には全く興味はない。ただ、しいたけさんが話したその言葉は、自分が抱えていた「不安」にまさに響いたのだった。

冒頭で書いた、「追放される」という感覚とつながっていると思い、幸い時間があるので、暇さえあればノートを広げて、出てくるままに言葉をインクに乗せて書きつけるというのをやってみた。

時間を取って思うがままに書き出してみて、どうやら根深いのは、「みんな離れていく」「なぜならきっと私はまたダメにしてしまうから」という恐怖。それが互いに補強しあいながら、がんじがらめになってもはや根深いセルフ呪いのようになっているようだった。

で、なんでそう思うようになったのか? と、次に、調書を取るように淡々と書き出してみた。

これまで自分がやってきた(やらかしてきた)数々の体験や、どうしてもうまくいかなかったこと、そしてそのことで誰かが去っていった経験を、地獄の芋掘り大会のように芋づる式に色々と思い出した。

機密が厳しい仕事をしていた時に、「何かで情報漏洩して、明日起きたら私は新聞の一面で糾弾されているかもしれない。そうすればみんないなくなってしまうだろう」と真剣に恐れていたことまで思い出した。(今思うと結構精神状態が心配。)

中には書くのも辛くなってしまった経験もあった。
やったこと自体は後悔はしていないけれど、自分の中であまりにも向き合うことができないまま、ある意味で傷のようになってしまっていることがあった。

そのことについて今回思いを巡らせている時に、ふと、その経験の中で出会った人に言ってもらった言葉を思い出した。

その人は、私の言葉がすごく好きだと何度も言ってくれていた。私の言葉は自分の中に光があったことを思い出させてくれる、と言ってくれた。他にも、たくさん。
私はそれを思い出した。あの時私は、あんなに素晴らしい言葉をもらっていたんだなと感じた。感謝の気持ちがじわっと溢れて、そして気づけば思わず泣いていた。

その言葉を言ってもらった時のことや、その時、自分が確かに希望をもってやっていたこと。忘れていたわけではなくて、向き合えなかった過去の中にあったことを、本当に久しぶりに思い出すことができたのだ。

当時のことを思っては、もっとちゃんとできたらよかった…という罪悪感があったけど、あの日々はそれでもやっぱり私に与えられた宝物の日々だったのだな、と思えたことで、ひとつの経験の意味が変わったと思った。

「過去は変えられる?」

過去にあったことは変えられないかもしれないけれど、少なくとも、「過去」と「現在の自分」の関係性は変わりうるのかもしれない、と今回涙が出たことで思った。あるいは、その「過去」の意味合いが変わるというか。

自分にとって「罪悪感」のラベルが貼られていた「過去」が、そのラベルを取った時に「宝物」であったと気づくような。

そうすると、足元に埋まっていた物体Xを構成していた過去の「罪悪感」がひとつ解放される。

過去の意味合いが変わるということは、ある意味で、「癒える」というプロセスに似ているんじゃないかと思う。

治癒は起こる。

自分を悩ませていたものが、実は恩寵だったと知ることで。

「小さな変化、長い時間」

じゃあそれで、根深い恐怖が全部消えたかというと、何せ根深いのでそうではないと思う。
だけど、少し軽くなった。少し軽くなったけど、長い時間がそれにはかかったので、体感としてその意味は大きい。

そんなわけで、この毛布を書いている時は妙にスッキリした気分になっている。そうやってひとつひとつ、解放するようにして、治癒が起こるのを経験していくしかないのだと思う。

***

毛布の今後

最初に「みなさんいかがお過ごしですか?」と書いたけど、私の予想だと、この毛布をわざわざ読んでくれている人は、なんとなく同じように似たり寄ったりで、似ているからこそ、寄って集まるように読んでくれているんじゃないかと感じている。

今回、自分の経験をできる限りそのまま書いてみたけど、同じような状況にいる人に届けば良いなと思っている。 “me, too”の共振のように。

震えの力はすごくて、自分の中で硬くこわばっていたものが震えて緩めば、足元深くに埋もれた物体Xも取り出しやすくなるかもしれない。何より、どこかで同じ震えを放っている人がいれば、遠くに離れていたってわかるような気がしている。(ちなみに「震え」はチワワのプルプルというよりは蜜蜂の振動のイメージだ)

そう思って、自分の日々の逡巡や震えを書いてみた。

マイペースに続けてきた毛布も今回で13回目。キリがいいのか悪いのかわからないけれど、書いている人間は、変化の時を感じている(毎回言ってるかも?)。毎回一応描き下ろしているタイトルイラストは、今回は夏越の大祓の茅の輪のイメージだ。新しい世界へ入る感がある7月の始まりにちょうど良いかなと思って描いた。

私はやっぱり変わっていきたい。それは、その瞬間瞬間に忠実にであるという思いの反映だ。毛布もまたそういうふうに書いていきたい。

とはいえテーマとしては引き続き「毛布」なので大きくは変わらないのだけど、13回目からの毛布は、当面の間、週1回更新にしてみたいと思う。月2回というペースを大胆に乱してきた自分からすると大丈夫かなと思うけれど(そしてミッシング・ピースも止まっている…更新を復活させる計画です)、読んでくれている人にとって、更新がちょっとでも楽しみになるような毛布であればもっと新しい世界が見れると思うし、週1ペースにすることで、みたことのない地層も掘り起こされてしまうかもしれない。それをちょっと楽しみに、当面の間週1更新にしてみたいと思います。

次は7/6 月曜日に更新したいと思います。月曜日。なんとなく、一番憂鬱な人が多い一方で、それでもフレッシュな日だろうから。


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