森保監督を批判する前に知っておきたい「リーダーシップ」の話。
りょー(@YFMsupo)です。
今回、元々はJ1の監督について書こうと思っていました。
ただ、森保監督のU-23代表続投が決まったこともあり、森保監督に関して書きました。
・「リーダーシップ」には6タイプある
・森保監督の「リーダーシップ」タイプ
・森保監督が広島で成功した理由
・森保監督がA代表、五輪代表で苦戦する理由
・東京五輪上位進出にすべき2つのこと
・オーバーエイジに呼ぶべきは"あの選手"
・批判すべきは森保監督ではなくJFA
現状、森保監督についての記事は「戦術面」から書かれたものがほとんど。
そこで今回は、監督の手法を紐解く鍵となる「リーダーシップ」を軸に、森保監督の「狙い」「チーム作り」を見ていきます。
画像も沢山使い読みやすく工夫してみました。
全文無料です。ぜひ最後までご覧下さい。
◯「リーダーシップ」の6タイプ
・6種類のリーダーシップタイプ
EQ(こころの知能指数)で有名な、心理学者ダニエル・ゴールマンが提唱した6種類のリーダーシップ。
・6タイプの分類
「トップダウンかボトムアップか」「結果が長期か短期か」で分類するとこんな感じです。
リーダーの能力、メンバーの能力や意欲により多少変わりますが、各タイプの違いはイメージしやすいかと思います。
・6タイプの特徴
タイプによって、「求められる事柄」「最適な状況」などが異なります。
必ずしも1タイプに分類される訳ではなく、複数タイプを併せ持つ場合もあります。
・ポステコグルー監督は「ビジョン型」
例えば、J1王者・横浜のポステコグルー監督は「ビジョン型」。
監督の掲げる信念をチーム全員が主体的に表現し、J1優勝を達成しました。
◯「リーダーシップ」にみる広島・森保監督
・森保監督は「コーチ型」+「調整型」+「親和型」
森保監督はまさに"ボトムアップ型のハイブリッド"。
選手と密に関わりチームの一体感を高め、選手からは絶大な信頼が寄せられます。
・森保監督の手法と広島の状況が噛み合って成功
森保監督にとって好都合だった当時の広島
①佐藤や青山、森崎らチームをまとめる優秀な選手がいた
「調整型」「親和型」に最適
②「コーチ上がり」の就任で選手と良好な関係
「コーチ型」に最適
③「ペトロヴィッチ監督の遺産」を活用
就任初年度で優勝と短期で結果を残す
広島では、2012年、13年、15年と計3度のリーグ制覇。
森保監督の手腕も凄いですが、当時の広島と森保監督の手法が噛み合ったことが大きいです。
「広島での成功」は、他チームでの成功を約束する「再現性ある成功」ではありません。
・変革に失敗して2017年に広島を退任
クラブは、3度のJ1優勝に貢献したFW佐藤寿人(名古屋グランパス)が移籍で退団し、MF森﨑浩司が現役を引退するなど、世代交代を敢行した。彼らに代わってMF青山敏弘やDF千葉和彦、さらにDF塩谷司(6月にアル・アインへ移籍)らがチームを牽引していく覚悟を持って臨んだが、結果、内容ともに伴わず、次第にそのパフォーマンスにも影響を及ぼすようになった。
「佐藤・高萩・石原」など特定のユニットに依存してきたチームを変えるべく、世代交代を試みるも失敗。
「調整型」「親和型」の森保監督では劇的なチーム改革は難しく、2017年途中に退任しました。
◯「リーダーシップ」にみるA代表・森保監督
・選手の固定化が目立つ
「堂安・南野・中島・大迫」など特定のユニットに依存する傾向が強く、彼らを欠くと何も出来ない試合も。
呼んだ選手を全く起用しないことも多く、批判が集中しています。
・アジア杯では「自身の手法」に合う選手を招集して準優勝
「森保監督の手法」に合う選手構成
①吉田、長友、柴崎ら経験豊富な選手
「調整型」「親和型」に最適
②ロシアW杯経験者
「コーチ型」に最適
(W杯から「コーチ上がり」で信頼関係確立済)
③教え子(槙野、佐々木、青山、浅野)
「コーチ型」に最適
(浅野、青山は離脱。追加招集の塩谷も教え子)
メンバー固定や戦術への批判は集中しましたが、結果は準優勝。
選手の年齢構成、戦術含めて広島を率いた時と似たようなチームになった印象です。
豪州や韓国がベスト8で姿を消す中、最低限の結果は残しました。
・国内組中心の親善試合は「ビジョンなき」大敗
親善試合のベネズエラ戦は、代表経験の浅い選手を中心に起用して大敗。
大敗の真の原因は、相手の強さや選手の能力ではなく組織として「ビジョン」が無いことです。
「組織として『どうしなきゃいけなかった』『こうしたほうが目の前の試合ではいい』というのを早い時間で理解して、それをチームとして成り立たせないといけなかった。(選手同士で)合わせる時間が短い代表では特に重要で、その差だったと思います」
DF佐々木のコメントからも、森保監督から「組織の方向性」が提示されていないことを感じます。
選手同士で合わせる時間が短いからこそ、監督からの「ビジョンの提示」が必要でした。
◯「リーダーシップ」にみる五輪代表・森保監督
・五輪代表で森保監督の手法を実現する為に足りないのは「対話」と「結束力」
森保監督の手法には、メンバーの自立、主体性が不可欠。
選手全員でチームを作り上げることが必要です。
親善試合のU-22コロンビア代表戦で敗れた後、選手に発した言葉が印象的でした。
試合後には選手に「我々が持っている目標(金メダル)が私だけのものなのか、チームで共有しているのか」と厳しい言葉を投げかけた。
「自身は戦術的に無策でありながら選手達に精神論を強要している」ように見え、滑稽に思った方も多いはず。
ただ、森保監督の手法には選手の主体性を高めることが必要で、発言自体は理解できます。
しかし、この年齢で所属クラブの中心を担っている選手は少なく、自身の意見を発信することに抵抗の無い選手は少ないかもしれません。
また、「選手との対話」を基にしたチーム作りが出来ず、歯痒い思いでしょう。
・森保監督を「最大限に生かす」ことが必要
森保監督は森保監督。
出来ないことは出来ません。
森保監督は、「選手を固定して戦い方を決める」メリットを享受してチームを成功に導いた監督。
戦術は元々無いし、メンバーを固定せず戦う方法も持ち合わせていません。
続投が決まった今考えるべきは、ひとえに「森保監督の能力を最大限生かす」ことです。
そして、批判の矛先は森保監督ではなく、広島での成功のみを頼りに森保監督に全てを丸投げしているJFAに向けるべきではないでしょうか。
・結果を残している"森保型アプローチ"
森保型アプローチ
①選手の特徴を把握する(対話を通して)
②最適なユニットを見つけて練度を高める
③チームとして戦う姿勢を強調する
④選手との対話を繰り返して精神面ケア
広島やアジア杯で結果を出した"森保型アプローチ"の根幹は、上記4点です。
①②を通じて戦い方を固めていきます。
選手によって戦い方が決まるので、メンバー固定の傾向が強くなります。
③④を通じて出れない選手の精神面もケア。
自身は選手との対話を繰り返し、チームとしても一体感を保ちます。
・"森保型アプローチ"を実行する上での課題
課題
①選手と対話する時間が不足
②選手の主体性、チームのまとまりが不足
A代表との兼任で、五輪代表の選手とじっくり対話して特徴を把握する時間が不足。
また、「チームで」目標に向かう意識の不足。
ピッチ内外で主体的にチームを引っ張る中心的な選手はいない気がします。
・東京五輪の鍵は「U-23専念」「OA」の2つ
解決策と具体案
①選手と監督含めた対話時間の確保
→森保監督は五輪までU-23代表に専念
②既に信頼関係がある主体的な選手を招集
→OA(オーバーエイジ)で主軸選手を招集
まず、森保監督がU-23に専念し、対話で特徴を掴んで「最適なユニット」を見つけることが必要。
専念は出来ないとしても、より多くの時間をU-23メンバーと過ごすことが必須です。
そして、海外やA代表でのプレー経験が豊富な選手をOA枠で招集すること。
OAの選手が主体的に意見を発信することで、各選手がチーム内で意見を出して話し合い、「チームとして」目標を共有することが大事です。
久保や堂安、冨安らにその役割を期待することも可能ですが、彼らは最年長の1997年世代ではなく、難しさもあるでしょう。
名実共にチームを引っ張る年長者が必要です。
・OA枠で参考にすべきは吉田麻也の成功
OA枠の運用で参考にしたいのは、ロンドン五輪の吉田麻也でしょう。
ロンドン五輪の吉田麻也
・前回大会の北京五輪に出場
・A代表経験あり、海外3年目
・年齢は24歳
吉田は北京五輪やA代表の経験を伝え、キャプテンとしてチームを見事にまとめました。
他選手と年齢がほぼ変わらなかったことも、チームに馴染む上で大きかったと言われています。
吉田麻也の成功にみるOAの条件
・五輪出場経験あり
・A代表、海外経験が豊富
・年齢が離れすぎていない
・OAの適任は南野
その成功例にならうなら、OAの適任は南野です。
南野拓実
・前回大会のリオ五輪に出場
・A代表の主力、リバプールでプレー
・年齢は25歳
リオ五輪やA代表をはじめ、CLやリバプールでのプレー経験を持つ南野に、他の選手達は自然と耳を傾けるでしょう。
また、年齢が近く、A代表で堂安、冨安らとプレーしておりチームに馴染む上で問題も無いです。
南野を中心に、久保や堂安、冨安らが追随して積極的に話し合う。
こんな形が理想ですが、リバプールに移籍してOAでの招集が難しくなった、との報道もあります。
JFAの活躍を期待しましょう。
◯最後に
・批判の矛先は森保監督ではなくJFAに
決して、森保監督擁護のために書いた訳ではありません。
私が個人的に応援しているのはマリノスであり、広島や森保監督への思いは全くありません。
ただ、批判の矛先は森保監督ではなく、「広島での成功」が「再現性ある成功」だと安易に考えていたJFAに向けるべきでしょう。
監督選考や続投に至るプロセスが不透明すぎる点も合わせて、サッカーファンが声をあげていく必要があります。
・楽しんで頂けたらサポートをお願いします
前回書いたように「良いものには対価を」という考え方を醸成することを目指しています。
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