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「高卒ニートがフランス女性をナンパしてみた」 第1話 :これから同棲するんだ

こちらの作品は、私たちの実話です。

原作:マリーヌ&稜 https://twitter.com/marine_and_cie
作画:我糖めいむ https://twitter.com/gatomame

今から2年前、フランス人の彼女を連れて実家に帰ったときのこと。
 母が神妙な面持ちで告白した。
「アスペルガー症候群って知ってる?
 …実は母さんな、あんたはそうちゃうかなーと思っててん」
 なるほどまったくその通りだと思う。だから母は、アスペルガー症候群で他人とうまくコミュニケーションをとれない息子に彼女など出来るハズもないと思っていたのだろう、そこへ金髪で緑の目をしたフランス人女性を連れて来たかと思えば、
「これから同棲する」
と言い出したのであるから、あまりにもびっくりして思わず胸中を告白してしまったに違いない。
そのあとの父親は更にひどかった。
当時コウモリは無職であったので、父親は彼女に向かって
「こいつは無職やけど、いいのか? ちゃんと分かってる?
 だまされてないよね? 本当にいいの?」そうしつこく聞いていた。
彼女が一通りの質問に「はい、好きですから」と返事をした後も、
「本当にいいんかい」と独り言をくりかえし、高卒・無職・コミュ障の息子の隣に座る、日本人離れした容姿の女性―フランス人なので当然だ―を見ては、おかしいなと首を傾げて、また彼女を見ては首を傾げ、そうやって何度も目を細めながら、こんなことが起こるなんていったい世界はどうなっているのだとでも言いたげにしていた。
 そしてようやく落ち着いたのか、「名前は何て言うの?」と彼女に聞いた。彼女はきれいな発音で「プーター・マリーヌと申します」と告げたが、父は耳慣れない名前を理解できなかった様子である。そこでコウモリが再度、「名前はマリーヌ。苗字はプーター」と紹介した。すると父は、それまでのマジメな顔から打って変わって、
「ええ!? プーターってw プータローの彼女がプーターってwww」
と、またも大きな独り言を言いながら、ヘヘっ、と一人で笑い声を上げた。
 あんなにもはっきりと、耳で聞いた言葉の後ろに「w」の文字が見えたのは、コウモリには初めてのことである。たしかに想像もつかなかった苗字だろうけれども、我が息子の無職プー太郎ぶりをバカにするのと他人様の苗字をバカにするのとはわけが違うのだし、それより何より、その他人様とは息子が初めて実家に連れてきた女性であるという状況だ。
 ああ、なんとデリカシーのない失礼な人だろうと思ったのだが、この父親の元に生まれ育っては自分がコミュニケーションで迷子になるのもうなずけると思った次第である。
 その後、父は自らの非礼に気付くこともなく無邪気にマリーヌに質問を続けていたのだが、そのときには「マドレーヌはいつから日本にいるの?」などと洋菓子と混同した名で彼女を呼んでいた。マリーヌは初対面で間違いを指摘するのも恥ずかしいと思ったらしく、その日いちにちは洋菓子然として過ごしていた。彼女の広い心に感謝してやまない。

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