児童書「ずっと、そこにいるよ。」

不思議な力を持つ主人公季里(きり)と、その友達の図書委員たちの、生と死に触れる短編連作集。

表紙画がわたしの大好きな酒井駒子さんの絵だったので、手に取りました。
そしたら、青森出身の作家さんでした。さらに図書館が舞台の内容で、縁を感じました。

登場人物それぞれがかなり個性的なキャラクターに思えました。いかにも文化部というか本好きというか、カチカチの論理的思考の男の子が出てくるのですが、その子の喋り口調とか、ああ~こういう子居そう…って感じです。

ただその子が際立って個性的というのではなく、主人公も含めた登場人物みんなが、それぞれに繊細な描写で描かれていて、それぞれ別の視点・観点を持っているのです。個性豊かな登場人物の輪の中心に主人公が居て、みんなに見守ってもらっている感じ。

たまたま主人公の季里が特殊な能力を発揮しているように見えますが、このお話のもっと根の部分には、誰もが特殊な能力を持っている、という前提があるように思えます。
ここでの特殊というのは、ただ単に見えないものが見える、聞こえるというだけではなく、素直とか優しさとか、誰もが持ちうるものです。
特殊だから特別扱いするのではなく、仲間だから理解しようとする、守ろうとする、という気持ちが伝わってきます。

未読の方に分かりづらい感想になってしまいましたが、主人公を通して、読了後なんというか不思議な感覚に陥ります。

わたしにはなにも見えませんが、わたしたちの周りには「なにか」いるのだろうな、と思わせてくれるお話です。

ずっと、そこにいるよ。
早見 裕司 著

2014/9/8 読了

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