
カウンセリングと友人との対話、何が違うの?(第一部)
日本の精神科医・公認心理士で、現在はオーストラリアで心理カウンセラーをしているMarikoです。
今回のテーマは「カウンセリングと友人との対話の違い」。二部構成でお届けします。第一部は「友人との対話の良さと限界」や「カウンセリングが有料である理由」に焦点を当てます。そして、第二部では、カウンセリングが実際にどのようなサポートを提供するのか、具体例を交えながらお伝えする予定です。
誰かに悩みを聞いてもらいたいとき、まず身近な友人や家族を頼るのはとても自然なことです。カウンセリングについて「受ける必要があるのか?」「話を聞いてもらうだけでお金が発生するってどういうこと?」と疑問を持つ方も少なくありません。
そこでまず、第一部では友人や家族との対話と、カウンセリングの違いについて整理し、その役割や目的を考えてみたいと思います。
友人との対話の良さと限界
友人や家族に話を聞いてもらうのは、悩みを抱えたときの自然な行動です。その良さは、何と言っても「安心感」や「親しみやすさ」にあるでしょう。
【友人との会話の良さ】
気軽に話せる
日常の中で自然な形で相談ができる
感情的な共感や慰めを得られる
一方で、友人や家族との会話には限界もあります。
【友人との会話の限界:起こりうる欠点】
話題が相手の体験や意見に移ってしまう
問題の根本的な解決につながらない
聞き手の価値観に基づいたジャッジ(評価)や、感情的な反応をされる
相手に負担をかけることへの遠慮からじっくり話せない
友人との会話は、心を軽くするために重要な役割を果たしてくれますが、それだけでは解決できなかったり、しっくりこなかった経験をしたことがあるのではないでしょうか。
カウンセリングが有料である理由
カウンセリングが有料であることについて疑問を感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、それにはきちんとした理由があり、「ただ話を聞いてもらうだけ」ではないプロフェッショナルなサービスであるからです。
真剣に向き合うためのコミットメント
「お金を支払い、決まった時刻に決まった時間のセッションを受ける」
一定の枠組みと有料であるということは、利用者(以下クライアント)自身が自分の問題に真剣に向き合う姿勢につながります。「せっかく費用をかけたのだから」という意識は、問題解決や自己変革へのモチベーションを高めていくのです。
それはカウンセラーにも同じことが言えます。「お金をお支払いいただいている」という意識は、より専門的で質の良いサービスの提供につながります。専門的なスキルと時間の提供
カウンセラーは専門的なトレーニングを受け、クライアントそれぞれに合わせたサポートを提供します。これは「単なる会話」ではなく、「計画的かつ目標を持って進められるプロセス」です。
カウンセリング中、カウンセラーはクライアントの様子を観察し、情報を整理し、どういうアプローチが適切なのか・・と頭の中はめまぐるしく動き続けています。私は通常50分のカウンセリングを提供していますが、1回のカウンセリングでの消耗感はかなりのものです。信頼できる空間の維持
守秘義務や中立的な立場など、安心して話せる空間を提供します。
以上のように、「カウンセリング」とはプロフェッショナルな仕事であるために、適正な対価が発生することになります。
まとめ
カウンセリングと友人との会話について、最後に表で比較してまとめます。

友人との対話も大切
ここまで、友人との会話とカウンセリングの違いについて、主に専門性についての視点から説明してきましたが、誤解しないでいただきたいのは、友人との会話が劣っているというわけではないということです。むしろ、信頼できる友人や家族と話すことは、心の健康を保つ上でとても大切です。
ポイントは、状況や必要に応じて「使い分ける」ことです。友人には日常の悩みを気軽に相談し、心の負担を軽くする役割を担ってもらい、専門的なサポートが必要なときにはカウンセリングを利用する、というように、それぞれの強みを利用して上手に組み合わせていくのが理想です。
次回予告
この記事では、友人との会話とカウンセリングの違いを整理し、それぞれの役割や目的についてお伝えしました。
第2部では、実際にカウンセリングが何を提供しているのか、具体的なエピソードを交えながらご紹介します。「カウンセリングって何をする場所?」と思っている方に、より具体的なイメージをお届けできると思います。どうぞお楽しみに!
For a Better Tomorrow
より良い明日のために